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23.殿方にお任せすれば間違いありません

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 扉を押して、そっと入り込みました。本当に扉が開いていますわ。これでしたら、妖精王に頼んで扉を開けてもらっても……ああ、でもこの方法は両思いならではの方法でしたね。

 先日はまだ告白前でしたので、夜這いは窓からが正しかった気がします。足音を殺して、ゆっくりとベッドに近づきました。ふわりと膨らんだ上掛けを捲ると……。

「あら?」

 前回は飛びついて失敗しましたので、今回は隣に滑り込もうと思ったのに。寝ていたのはアレクシス様ではなく、丸めた毛布と枕でした。驚いて動きを止めた私を、後ろから逞しい腕が拘束します。

「君か……」

「アレクシス様ったら、待ちきれなかったんですの?」

 首を傾げた私は、すっぽりと彼の腕の中でした。太くて硬い腕、鍛え上げた厚い胸板、殿方の香り……すべてが刺激的です。少し緩んだ隙に、くるっと向きを入れ替えました。半回転して抱きつきます。

「っ! なんだ、その格好は!」

「夜這いの作法を指導してくださった師匠のお勧めです」

「……夜這いの、作法?」

 ぐっと胸を押し付けながら、私はアレクシス様のお顔を見上げました。不思議そうに問い返した彼の顔は真っ赤です。なんて可愛らしいのかしら。

「はい、社交界の華である王妃殿下とシベリウス侯爵夫人に御指導をいただきましたのよ。まず告白して愛を囁き合う。それからこうして触れ合って、窓から夜這いですわ」

「君はそれを信じたのか。いや、信じたからこの状況なのだろうが……指摘する点が多過ぎて」

 唸るような声でぼそぼそと言葉を紡ぐアレクシス様が、はっと気づいて私を引き離そうとしました。胸が接触しているのに気付いたご様子。ここはさらに密着の一手ですわ。

 ぐいぐいと胸を押し当て、頬も胸筋にぺたり。硬いのに気持ちいいですね。頬ですりすりと刺激したら、ぴくりと動きました。

「離れてくれないか?」

「嫌です」

 傷つけたくないと仰るので、無理やり引き剥がすのは諦めたようです。さらに張り付き、離れないと主張しました。今日こそ、夜這いを成功させます。

 こんなにお優しくて、強くて筋肉も地位も実力も兼ね備えた殿方、他にいらっしゃいません。他の令嬢方が魅力に気づいて戻ってくる前に、私が落としてしまわなくては!

「お願いです。私を妻にしてくださるのでしょう? 一緒に寝てください」

「……寝る、それでいいのか?」

「同じベッドで一夜を過ごす。あとは殿方にお任せすればいいと聞いておりますわ」

 にやりと悪いお顔で笑ったアレクシス様は「叶えてやろう」と傲慢な口調で仰いました。抱き上げられ、あっという間にベッドに横たえられ……隣にアレクシス様が滑り込みます。腕を枕に抱き寄せられ、そのまま二人で目を閉じました。

 なるほど。これで一夜を明かせば、夫婦なのですね。殿方はよく知っているから、体の力を抜いてお任せする……大丈夫です、出来ています。すぐに温かさに釣られ、うとうとと眠気が訪れました。

 明日の朝、皆に夫婦になったと宣言しなくては……女神様へのご報告が先かしら。緊張しながら夜這いに向かったこともあり、ほっとした私の意識は眠りに呑み込まれました。
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