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08.アレクシス様のお屋敷へ大量の荷馬車と

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 レードルンド家は古い家柄です。国防に尽力する辺境伯という肩書きも手伝い、王都の中でも中央に近い重要拠点に屋敷を構えました。重厚な門をくぐり、庭のアプローチを抜ければ、立派なお屋敷が見えてきます。

 ドラゴン退治に成功し、竜殺しの異名を持つアレクシス様は、その武功の褒美としてレードルンド家の養子となりました。レードルンドの先代は不幸が重なり、跡取りがいなかったのです。この辺の事情は、お父様にお聞きしました。

 馬車が停まり、先に降りたアレクシス様の手に支えられて、柔らかな絨毯に降り立ちました。馬車を寄せる玄関前のシャンデリアは見事ですね。屋外なのに、これほどの規模を誇るシャンデリアは滅多に見かけません。

「とても素敵なシャンデリアですわ。アウレリウス時代の物でしょうか」

「左様でございます。お嬢様の慧眼に感服いたしました。私、この屋敷の管理を行う執事アントンと申します。何かございましたら、遠慮なくお申し付けくださいませ」

 穏やかな口調のよく似合う灰色の髪の執事は、丁寧に一礼しました。彼へ会釈を返します。公爵令嬢で、レードルンド辺境伯の婚約者となった私が、使用人に向ける挨拶の中では最上級でした。

「レードルンド辺境伯アレクシス様の婚約者になりました。エールヴァール公爵家のロヴィーサですわ。これからよろしくお願いしますね」

 並んで出迎えた侍女や侍従は、頭を下げたまま「承知いたしました」と口にした。礼儀も問題なし。アレクシス様に対して、舐めた態度も見受けられません。安心しましたわ。もし元男爵家の三男と見下す者がいたら、私が成敗するつもりでしたの。

「エールヴァール公爵令嬢、これは……いったい」

「ヴィーとお呼びください。何かございました?」

 私達の馬車の後ろには、多くの荷馬車が続いていた。荷馬車と言っても、貴族が領地へ戻る際などに侍従や荷物を運ぶものですので、見た目はそれなりです。豪華ではないけれど、平民の馬車とは比べ物にならない高級品でした。それがずらりと6台ほど。

「申し訳ございません。国王陛下のお召しが急だったので、荷物の梱包が終わりませんでしたの。ひとまず必要な分だけ運ばせました」

 執事のアントンが采配し、侍従達が手分けして荷を運ぶ。屋敷の中へ運び込まれる荷物は、玄関ホールへ積まれた。

「いや、そうではなく……これもそうなのだが」

 混乱した様子のアレクシス様の手を握り、落ち着くよう荒れた甲を撫でました。

「口下手でいらっしゃるのね。ご安心ください。理解しましたわ」

 外交は全て私が担当し、あなた様を困らせたりいたしません。それに仰りたいことも分かりましてよ。

「この荷馬車は何だ? と、どうしてこの屋敷へ? ですわね」

 何度も頷くアレクシス様に、ふわりと最高の笑顔を向けます。この微笑み、どなたもイチコロですの。あなた様にも効果があるといいのですけれど。
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