5 / 113
05.きっちり引導を渡して差し上げます
しおりを挟む
半年は早すぎる。そう抵抗したアレクシス様ですが、仰る内容は正しいのです。一般論として王族の結婚は一年、公爵令嬢となれば準じて十ヶ月は必要でした。
でも短くする方法がありますのよ? 長い婚約期間が必要な理由は、結婚式の準備です。花嫁のドレスだけで、割増料金を支払っても三ヶ月以上です。つまり婚約の前に準備が先行していたら、この不文律は最短で突き切ることが可能でした。
すでに私は準備万端です。少なくとも、ドレスや装飾品は準備を終えていました。
「国王陛下、王妃殿下、お父様、お母様……私、これからアレクシス様と同居いたします」
「……っ、お前の決めた事だ。言っても覆らないのであろうな。好きにしなさい」
お父様の許可が出れば、陛下も反対出来ませんね。この場でお持ち帰りいただく事になりました。準備があると渋るアレクシス様に事情をご説明しますわ。
「私は常に狙われております。お願いですわ、アレクシス様。婚約者として私をお守りください」
半分は本当で半分は嘘。うるうると目を潤ませて懇願する。もちろん両手は彼の傷だらけの手を握りしめた。触れることを厭う令嬢も多い中、指を絡める私にアレクシス様はタジタジだった。押されすぎですわ。救国の英雄ですのに。
そのまま押し切られ、アレクシス様は屋敷への滞在を許可してくださいました。馬車を横付け出来るロータリーへ顔を出せば、複数の男性に囲まれます。顔も肩書きも財力も……何一つ不自由のない方々ばかり。
「本当に辺境伯を選ぶのか!」
「強さが必要なら、俺も鍛えるから!!」
「権力と財力なら負けません。どうか考え直してください」
縋る面子は豪勢でした。この国の公爵家嫡男、隣国の第二王子殿下、二つ向こうの国の若き大公閣下です。これで最後ですもの、きっちり引導を渡して差し上げましょう。
「私、すでにアレクシス様と婚約しておりますわ」
誇るように胸を張り、左手を見せる。先程スカートの隠しポケットから取り出し、指を絡めて歩いている間にアレクシス様に装着しました。私と同じデザインですわ。
「……同じデザイン?」
めざとく気づいたのは、隣国の第二王子でした。呆然とする彼らを無視し、私はアレクシス様を促します。早く馬車でこの場を離れようとしたのに、我に返った二つ向こうの大公閣下に呼び止められました。
「婚約ならば、組み直しが可能なはず」
「そ、そうだ」
愚かですわね。最後まで「妖精姫」の夢を見せてあげようと思いましたのに……自分勝手な権力者には天誅あるのみです。お覚悟を!
でも短くする方法がありますのよ? 長い婚約期間が必要な理由は、結婚式の準備です。花嫁のドレスだけで、割増料金を支払っても三ヶ月以上です。つまり婚約の前に準備が先行していたら、この不文律は最短で突き切ることが可能でした。
すでに私は準備万端です。少なくとも、ドレスや装飾品は準備を終えていました。
「国王陛下、王妃殿下、お父様、お母様……私、これからアレクシス様と同居いたします」
「……っ、お前の決めた事だ。言っても覆らないのであろうな。好きにしなさい」
お父様の許可が出れば、陛下も反対出来ませんね。この場でお持ち帰りいただく事になりました。準備があると渋るアレクシス様に事情をご説明しますわ。
「私は常に狙われております。お願いですわ、アレクシス様。婚約者として私をお守りください」
半分は本当で半分は嘘。うるうると目を潤ませて懇願する。もちろん両手は彼の傷だらけの手を握りしめた。触れることを厭う令嬢も多い中、指を絡める私にアレクシス様はタジタジだった。押されすぎですわ。救国の英雄ですのに。
そのまま押し切られ、アレクシス様は屋敷への滞在を許可してくださいました。馬車を横付け出来るロータリーへ顔を出せば、複数の男性に囲まれます。顔も肩書きも財力も……何一つ不自由のない方々ばかり。
「本当に辺境伯を選ぶのか!」
「強さが必要なら、俺も鍛えるから!!」
「権力と財力なら負けません。どうか考え直してください」
縋る面子は豪勢でした。この国の公爵家嫡男、隣国の第二王子殿下、二つ向こうの国の若き大公閣下です。これで最後ですもの、きっちり引導を渡して差し上げましょう。
「私、すでにアレクシス様と婚約しておりますわ」
誇るように胸を張り、左手を見せる。先程スカートの隠しポケットから取り出し、指を絡めて歩いている間にアレクシス様に装着しました。私と同じデザインですわ。
「……同じデザイン?」
めざとく気づいたのは、隣国の第二王子でした。呆然とする彼らを無視し、私はアレクシス様を促します。早く馬車でこの場を離れようとしたのに、我に返った二つ向こうの大公閣下に呼び止められました。
「婚約ならば、組み直しが可能なはず」
「そ、そうだ」
愚かですわね。最後まで「妖精姫」の夢を見せてあげようと思いましたのに……自分勝手な権力者には天誅あるのみです。お覚悟を!
25
お気に入りに追加
888
あなたにおすすめの小説
愛されていたのだと知りました。それは、あなたの愛をなくした時の事でした。
桗梛葉 (たなは)
恋愛
リリナシスと王太子ヴィルトスが婚約をしたのは、2人がまだ幼い頃だった。
それから、ずっと2人は一緒に過ごしていた。
一緒に駆け回って、悪戯をして、叱られる事もあったのに。
いつの間にか、そんな2人の関係は、ひどく冷たくなっていた。
変わってしまったのは、いつだろう。
分からないままリリナシスは、想いを反転させる禁忌薬に手を出してしまう。
******************************************
こちらは、全19話(修正したら予定より6話伸びました🙏)
7/22~7/25の4日間は、1日2話の投稿予定です。以降は、1日1話になります。
【完結】攻略対象×ヒロイン聖女=悪役令嬢
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
攻略対象である婚約者の王子と、ヒロインである聖女のハッピーエンドで終わったはず。冤罪で殺された悪役令嬢の悲劇は、思わぬ形で世界に影響を及ぼした。
それはさておき、私、元婚約者とヒロインの間に生まれちゃったんですけど?! どうなってるのよ!
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/03/25……完結
2023/01/16……エブリスタ、トレンド#ファンガジー 1位
2023/01/16……小説家になろう、ハイファンタジー日間 58位
2023/01/15……連載開始
【完結】身勝手な旦那様と離縁したら、異国で我が子と幸せになれました
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
恋愛
腹を痛めて産んだ子を蔑ろにする身勝手な旦那様、離縁してくださいませ!
完璧な人生だと思っていた。優しい夫、大切にしてくれる義父母……待望の跡取り息子を産んだ私は、彼らの仕打ちに打ちのめされた。腹を痛めて産んだ我が子を取り戻すため、バレンティナは離縁を選ぶ。復讐する気のなかった彼女だが、新しく出会った隣国貴族に一目惚れで口説かれる。身勝手な元婚家は、嘘がバレて自業自得で没落していった。
崩壊する幸せ⇒異国での出会い⇒ハッピーエンド
元婚家の自業自得ざまぁ有りです。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/10/07……アルファポリス、女性向けHOT4位
2022/10/05……カクヨム、恋愛週間13位
2022/10/04……小説家になろう、恋愛日間63位
2022/09/30……エブリスタ、トレンド恋愛19位
2022/09/28……連載開始
氷の貴婦人
羊
恋愛
ソフィは幸せな結婚を目の前に控えていた。弾んでいた心を打ち砕かれたのは、結婚相手のアトレーと姉がベッドに居る姿を見た時だった。
呆然としたまま結婚式の日を迎え、その日から彼女の心は壊れていく。
感情が麻痺してしまい、すべてがかすみ越しの出来事に思える。そして、あんなに好きだったアトレーを見ると吐き気をもよおすようになった。
毒の強めなお話で、大人向けテイストです。
【完結】私の初めての恋人は、とても最低な人でした。
Rohdea
恋愛
──私の初めての恋人は、私を騙してた。
あなただけは違うと……信じていたのに──
「ゆくゆくはこのまま彼女と結婚して、彼女にはお飾りの妻になってもらうつもりだ」
その日、私は交際して間もない恋人の本音を聞いてしまった。
彼、ウォレスには私じゃない好きな人が別にいて、
最初から彼は私を騙していて、その平民の彼女と結ばれる為に私を利用しようとしていただけだった……
──……両親と兄の影響で素敵な恋に憧れていた、
エリート養成校と呼ばれるシュテルン王立学校に通う伯爵令嬢のエマーソンは、
今年の首席卒業の座も、間違い無し! で、恋も勉強も順風満帆な学校生活を送っていた。
しかしある日、初めての恋人、ウォレスに騙されていた事を知ってしまう。
──悔しい! 痛い目を見せてやりたい! 彼を見返して復讐してやるわ!
そう心に誓って、復讐計画を練ろうとするエマーソン。
だけど、そんなエマーソンの前に現れたのは……
※『私の好きな人には、忘れられない人がいる。』 『私は、顔も名前も知らない人に恋をした。』
“私の好きな人~”のカップルの娘であり、“顔も名前も~”のヒーローの妹、エマーソンのお話です。
前回は断頭台で首を落とされましたが、今回はお父様と協力して貴方達を断頭台に招待します。
夢見 歩
ファンタジー
長年、義母と義弟に虐げられた末に無実の罪で断頭台に立たされたステラ。
陛下は父親に「同じ子を持つ親としての最後の温情だ」と断頭台の刃を落とす合図を出すように命令を下した。
「お父様!助けてください!
私は決してネヴィルの名に恥じるような事はしておりません!
お父様ッ!!!!!」
ステラが断頭台の上でいくら泣き叫び、手を必死で伸ばしながら助けを求めても父親がステラを見ることは無かった。
ステラは断頭台の窪みに首を押さえつけられ、ステラの父親の上げた手が勢いよく振り下ろされると同時に頭上から鋭い刃によって首がはねられた。
しかし死んだはずのステラが目を開けると十歳まで時間が巻き戻っていて…?
娘と父親による人生のやり直しという名の復讐劇が今ここに始まる。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
全力で執筆中です!お気に入り登録して頂けるとやる気に繋がりますのでぜひよろしくお願いします( * ॑꒳ ॑*)
始まりは最悪でも幸せとは出会えるものです
夢々(むむ)
ファンタジー
今世の家庭環境が最低最悪な前世の記憶持ちの少女ラフィリア。5歳になりこのままでは両親に売られ奴隷人生まっしぐらになってしまうっっ...との思いから必死で逃げた先で魔法使いのおじいさんに出会い、ほのぼのスローライフを手に入れる............予定☆(初投稿・ノープロット・気まぐれ更新です(*´ω`*))※思いつくままに書いているので途中書き直すこともあるかもしれません(;^ω^)
私をもう愛していないなら。
水垣するめ
恋愛
その衝撃的な場面を見たのは、何気ない日の夕方だった。
空は赤く染まって、街の建物を照らしていた。
私は実家の伯爵家からの呼び出しを受けて、その帰路についている時だった。
街中を、私の夫であるアイクが歩いていた。
見知った女性と一緒に。
私の友人である、男爵家ジェーン・バーカーと。
「え?」
思わず私は声をあげた。
なぜ二人が一緒に歩いているのだろう。
二人に接点は無いはずだ。
会ったのだって、私がジェーンをお茶会で家に呼んだ時に、一度顔を合わせただけだ。
それが、何故?
ジェーンと歩くアイクは、どこかいつもよりも楽しげな表情を浮かべてながら、ジェーンと言葉を交わしていた。
結婚してから一年経って、次第に見なくなった顔だ。
私の胸の内に不安が湧いてくる。
(駄目よ。簡単に夫を疑うなんて。きっと二人はいつの間にか友人になっただけ──)
その瞬間。
二人は手を繋いで。
キスをした。
「──」
言葉にならない声が漏れた。
胸の中の不安は確かな形となって、目の前に現れた。
──アイクは浮気していた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる