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97.僕をぎゅっとして。離さないで
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最近、変な夢を見る。殴られたお母さんが泣いていたり、誰かと戦っていたり。僕が経験したことがない出来事が夢に出てきた。でも眠れないことはなくて、疲れて勝手に寝てしまう。夢を見ると怖くて起きて、アスティやヒスイに抱き着いた。
「何が怖いの?」
「寝るの」
アスティの質問に短く答える。不思議そうな顔をされるけど、本当に眠るのが怖いの。寝たら変な夢を見るから。僕はしたことないのに、誰かを殴ったりするんだよ。それで笑ってたり……赤い血がいっぱい出るくらい乱暴にすることもあった。
僕じゃないのに、手に赤い血が触れると興奮した。僕の気持じゃなくて、誰かの中に入り込んだみたい。気持ち悪くて怖くて、泣き出したくなるのに笑ってた。自分と違う誰かが僕に入ったのかな? それとも夢の中で僕が誰かに入ったの? どっちももう嫌なのに。
泣きじゃくりながら説明し、アスティの抱き締める腕に頬を寄せる。冷たい鱗に安心した。アスティもヒスイも、僕に優しい人は鱗があるんだ。ボリス師匠やアベルもそうだった。ルビアやサフィーだって鱗がある。僕は鱗がないから壊れちゃったの?
「鱗がなくても、カイは私の番よ。誰より大切な私の同族であり、家族だわ」
「……うん」
怖い夢を見たくない。アスティとお出かけする夢が見られたらいいのに。そんなことを考えていたせいか、お昼寝の夢にアスティが出てきた。怖い顔で長い爪や剣を振りかざして、僕を追いかけてくる。逃げればいいのに、僕は銀色の金属の剣で応じた。
なぜだろう、いつもの興奮がない。怖くて震えて、でも逃げるのはダメだと自分に言い聞かせた。起きた時にアスティに説明するために、いっぱい覚えておかなくちゃ。
僕の口が勝手に知らない言葉を吐いて、空に雷が走った。操ってる感覚がある。それをアスティに向けて落とす。嫌だ! やめて、アスティが傷ついちゃう。
咄嗟にドラゴンの姿に戻ったアスティの背中を稲光が滑り、地面で爆発した。どんっと大きな音と振動がして、地面に穴が開く。アスティの銀の鱗は傷になってなくて、きらきら輝いていた。良かった。中にいる僕には止められないの。大切なアスティがケガをしなくて安心する。
「死ね! 魔王」
叫ぶアスティの目が紫より赤に近い色で輝いた。凄く綺麗な色、思わず動きを止めて見惚れた僕にアスティの爪が突き刺さる。片方の目が見えなくなり、すごい痛みが顔に走った。こんなに痛いのは初めてで、混乱した僕は膝を突く。
その上からアスティの影が懸かった。
「……償う意思はあるか?」
「後悔などせぬ。やれ」
勝手に僕の口がアスティに答えを返し、目を閉じた。首に痛みが走って……ばっと飛び起きる。何が起きたの? きょろきょろ周囲を見回せば、見慣れた僕のお部屋だった。
「カイ、よかったわ……目が覚めないから心配したのよ」
アスティの声にびくりと肩を震える。伸びた手を避けるように後ろに下がった。これは夢? それとも現実なの? 分からない、どうしよう。僕はアスティに嫌われて殺されちゃうんだ。混乱して涙が止まらない僕に、困った顔のアスティが近づく。
殺されてもいい、痛くても構わない。だから僕をぎゅっとして。離さないで――願いながら、震える手でアスティの指先を掴んだ。
「何が怖いの?」
「寝るの」
アスティの質問に短く答える。不思議そうな顔をされるけど、本当に眠るのが怖いの。寝たら変な夢を見るから。僕はしたことないのに、誰かを殴ったりするんだよ。それで笑ってたり……赤い血がいっぱい出るくらい乱暴にすることもあった。
僕じゃないのに、手に赤い血が触れると興奮した。僕の気持じゃなくて、誰かの中に入り込んだみたい。気持ち悪くて怖くて、泣き出したくなるのに笑ってた。自分と違う誰かが僕に入ったのかな? それとも夢の中で僕が誰かに入ったの? どっちももう嫌なのに。
泣きじゃくりながら説明し、アスティの抱き締める腕に頬を寄せる。冷たい鱗に安心した。アスティもヒスイも、僕に優しい人は鱗があるんだ。ボリス師匠やアベルもそうだった。ルビアやサフィーだって鱗がある。僕は鱗がないから壊れちゃったの?
「鱗がなくても、カイは私の番よ。誰より大切な私の同族であり、家族だわ」
「……うん」
怖い夢を見たくない。アスティとお出かけする夢が見られたらいいのに。そんなことを考えていたせいか、お昼寝の夢にアスティが出てきた。怖い顔で長い爪や剣を振りかざして、僕を追いかけてくる。逃げればいいのに、僕は銀色の金属の剣で応じた。
なぜだろう、いつもの興奮がない。怖くて震えて、でも逃げるのはダメだと自分に言い聞かせた。起きた時にアスティに説明するために、いっぱい覚えておかなくちゃ。
僕の口が勝手に知らない言葉を吐いて、空に雷が走った。操ってる感覚がある。それをアスティに向けて落とす。嫌だ! やめて、アスティが傷ついちゃう。
咄嗟にドラゴンの姿に戻ったアスティの背中を稲光が滑り、地面で爆発した。どんっと大きな音と振動がして、地面に穴が開く。アスティの銀の鱗は傷になってなくて、きらきら輝いていた。良かった。中にいる僕には止められないの。大切なアスティがケガをしなくて安心する。
「死ね! 魔王」
叫ぶアスティの目が紫より赤に近い色で輝いた。凄く綺麗な色、思わず動きを止めて見惚れた僕にアスティの爪が突き刺さる。片方の目が見えなくなり、すごい痛みが顔に走った。こんなに痛いのは初めてで、混乱した僕は膝を突く。
その上からアスティの影が懸かった。
「……償う意思はあるか?」
「後悔などせぬ。やれ」
勝手に僕の口がアスティに答えを返し、目を閉じた。首に痛みが走って……ばっと飛び起きる。何が起きたの? きょろきょろ周囲を見回せば、見慣れた僕のお部屋だった。
「カイ、よかったわ……目が覚めないから心配したのよ」
アスティの声にびくりと肩を震える。伸びた手を避けるように後ろに下がった。これは夢? それとも現実なの? 分からない、どうしよう。僕はアスティに嫌われて殺されちゃうんだ。混乱して涙が止まらない僕に、困った顔のアスティが近づく。
殺されてもいい、痛くても構わない。だから僕をぎゅっとして。離さないで――願いながら、震える手でアスティの指先を掴んだ。
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