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45.何も持たない僕の宝物
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おじさんがナイフを取り出すけど、アスティの方が早かった。蹴飛ばされて、ナイフが飛んでいく。目を見開いてアスティを追う僕の首を、おじさんの腕がぐいっと絞めた。苦しい。でもアスティを見つめる。彼女の綺麗な顔が少し歪んだ。
大丈夫、このくらいなら平気。アスティが来てくれたから。我慢できるよ。そう知らせたくて、ぶらさがったまま、何度も瞬きで合図した。アスティが小さく頷く。伝わった?
「その子を離せば命は助けてやる」
「冗談! それくらいなら殺して俺も……っ」
両手と両足が縛られた僕は、おじさんの腕に首を絞めらてぶら下がる。足がつかないけど、そんなに高くない。だから腕が離れたら体を丸めて転がろうと思った。前に転がったら、アスティの方へ近づくよね。ぼうっとしてくる頭で必死に考える。
きっと僕が起きてないとダメなの。蹴られた時みたいに寝たら、アスティが泣いちゃう気がした。
「ぐぁあああ!」
おじさんの口から悲鳴が聞こえて、僕を掴む腕が緩む。蹴飛ばして転がった。それしか考えない。アスティが僕のためにケガをしたら嫌だ。それくらいなら動ける。転がってもう一回回って、何かにぶつかった。くてんと体の力が抜ける。
「カイ! ああ、なんて酷いことを……いま解くから」
しゃくっと軽い音がして、アスティが僕を抱っこした。腕も足も痺れてるけど、もう縛られてない。アスティに抱き着きたいけど、腕がちゃんと動かなかった。悔しくて頑張る。その指先をアスティが掴んで頬に当てた。
僕のおてて汚れてるから、洗う前は触ったらアスティも汚れちゃう。でも触って、温かさといつもの匂いに包まれたら涙が出た。
「あ、すてぃ」
「カイ。もう大丈夫。よく頑張ったわ、さすが私の番よ」
褒めてくれるの? 僕、何も出来なくて転がってたけど。きっとアスティは頑張って探したんだと思う。だからアスティも褒めなきゃいけないよね。
「ありがと……アスティ、好き」
褒めようと思ったのに、言葉が出て来なくてお礼と好きを伝えた。にっこり笑ったから、嫌じゃなかったみたい。安心したら暗くなる。まだお礼も言い足りてないし、たくさん顔も見たいんだけど。
ふっと意識が途絶えた。
目が覚めて、僕はアスティの腕の中にいる。いつもいたお部屋で、アスティに抱っこされて眠る。嬉しくて手を伸ばしたら、ずきんと痛かった。僕の手首のところに白い布が巻いてある。包帯? これはすごいケガをした時に使うやつで、高いのに。丁寧に巻かれた包帯の手なら綺麗だからいいかな。
アスティの銀髪に触れて、迷って頬に触れた。向かい合わせに抱っこされて眠るから、腕はあまり大きく動かせない。寝てるアスティを起こしたいんじゃないけど……目が開いた。透き通った紫色の瞳が瞬いて、僕を映し出す。
「カイ、愛してるわ。私の大切なひと」
ほわりと笑ったアスティに僕は感動してしまって、何を言ったらいいか分からない。ぎゅっと抱き着いた情けない僕を、アスティは優しく受け止めた。大好き、凄く大好きだよ。アスティは何も持たない僕の宝物なんだ。
大丈夫、このくらいなら平気。アスティが来てくれたから。我慢できるよ。そう知らせたくて、ぶらさがったまま、何度も瞬きで合図した。アスティが小さく頷く。伝わった?
「その子を離せば命は助けてやる」
「冗談! それくらいなら殺して俺も……っ」
両手と両足が縛られた僕は、おじさんの腕に首を絞めらてぶら下がる。足がつかないけど、そんなに高くない。だから腕が離れたら体を丸めて転がろうと思った。前に転がったら、アスティの方へ近づくよね。ぼうっとしてくる頭で必死に考える。
きっと僕が起きてないとダメなの。蹴られた時みたいに寝たら、アスティが泣いちゃう気がした。
「ぐぁあああ!」
おじさんの口から悲鳴が聞こえて、僕を掴む腕が緩む。蹴飛ばして転がった。それしか考えない。アスティが僕のためにケガをしたら嫌だ。それくらいなら動ける。転がってもう一回回って、何かにぶつかった。くてんと体の力が抜ける。
「カイ! ああ、なんて酷いことを……いま解くから」
しゃくっと軽い音がして、アスティが僕を抱っこした。腕も足も痺れてるけど、もう縛られてない。アスティに抱き着きたいけど、腕がちゃんと動かなかった。悔しくて頑張る。その指先をアスティが掴んで頬に当てた。
僕のおてて汚れてるから、洗う前は触ったらアスティも汚れちゃう。でも触って、温かさといつもの匂いに包まれたら涙が出た。
「あ、すてぃ」
「カイ。もう大丈夫。よく頑張ったわ、さすが私の番よ」
褒めてくれるの? 僕、何も出来なくて転がってたけど。きっとアスティは頑張って探したんだと思う。だからアスティも褒めなきゃいけないよね。
「ありがと……アスティ、好き」
褒めようと思ったのに、言葉が出て来なくてお礼と好きを伝えた。にっこり笑ったから、嫌じゃなかったみたい。安心したら暗くなる。まだお礼も言い足りてないし、たくさん顔も見たいんだけど。
ふっと意識が途絶えた。
目が覚めて、僕はアスティの腕の中にいる。いつもいたお部屋で、アスティに抱っこされて眠る。嬉しくて手を伸ばしたら、ずきんと痛かった。僕の手首のところに白い布が巻いてある。包帯? これはすごいケガをした時に使うやつで、高いのに。丁寧に巻かれた包帯の手なら綺麗だからいいかな。
アスティの銀髪に触れて、迷って頬に触れた。向かい合わせに抱っこされて眠るから、腕はあまり大きく動かせない。寝てるアスティを起こしたいんじゃないけど……目が開いた。透き通った紫色の瞳が瞬いて、僕を映し出す。
「カイ、愛してるわ。私の大切なひと」
ほわりと笑ったアスティに僕は感動してしまって、何を言ったらいいか分からない。ぎゅっと抱き着いた情けない僕を、アスティは優しく受け止めた。大好き、凄く大好きだよ。アスティは何も持たない僕の宝物なんだ。
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