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38.優しいドラゴンと生きていきたい
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アスティと僕が呼ばれて入った部屋は広かった。大広間は宴会や謁見で使う場所みたい。謁見はよく分からないから、後でアスティに聞いてみよう。番のお披露目はどの貴族も盛大に行うと聞いた。アスティは女王陛下だから、いっぱいの人がお祝いに来た。
こないだも貴族の人からたくさんの贈り物をもらったのに、また積み重ねてあるよ。僕は何も出来ないのに、いいのかな。
「皆ご苦労である。竜女王アストリッドの番、カイだ。私以上に敬い従うように」
ははっ! 全員が頭を下げた。ツノが生えてたり、背中に翼がある人もいる。首や頬、手の甲に鱗がある人ばかりで綺麗だな。何もないつるんとした手を眺め、僕は残念に思った。僕も鱗があればいいのに。
「おいで、カイ」
手を繋いでいたアスティに呼ばれて、両手を伸ばす。抱っこする合図だ。ぎゅっと首に手を回して抱き着いた僕を、アスティは軽々と持ち上げた。玉座と呼ばれる椅子に座るアスティのお膝に、横向きに座るのが僕のお仕事。足をぶらぶらさせないで、アスティに寄り掛かってればいいの。
「重くない?」
「軽すぎて心配なくらいよ」
こそこそと小声で会話して、アスティが僕を引き寄せた。大きくて柔らかい胸に頭を押し付ける形になって、わたわたしちゃう。でもこのままがいいと囁くアスティの声が嬉しそうで、僕はじっとしていた。柔らかくて温かいから、眠くなりそう。
「今回は挨拶はないから、ゆったり過ごしましょうね」
貴族の人は以前にご挨拶が終わってるから、今日は来ない。贈り物も壁際に積んであった。手のひらに載る小さな箱から、僕が入れそうな大きな箱まで。綺麗なリボンや紙で飾られていた。
「皆にありがとう、言う?」
「そうね。カイが挨拶したいならいいわよ」
物をもらったらお礼を言うの。お母さんに教わったよ。だからアスティが皆に注目するよう声をかけて、僕に視線が集中しても怖くない。ぎゅっとアスティの腕を握って、真っすぐになるよう座り直した。
「たくさんの贈り物ありがとう」
わっと拍手が起きて、いろんな人が笑顔になった。嬉しい。僕より小さな子はいないけど、皆が子どもみたいに大喜びだった。嫌われて、汚いと怒られる僕はここにいない。僕が何か言っても蹴飛ばす人もいなかった。
振り返るとアスティのキスが額や頬に触れて、それも嬉しい。僕、ドラゴンの優しい人達と生きていきたい。アスティが女王様で偉いなら、お手伝いをして喜んでもらいたかった。
「僕ね、したいことできた」
「そう。素敵なことだわ、後で教えてね」
アスティは僕を抱っこしたまま、玉座を降りて歩き出した。会場に集まった皆に顔を覚えてもらうの。握手したり、お菓子を渡されたり。すごく幸せな気分だった。アスティの柄のお洋服も褒めてもらい、受け取ったコップのジュースをぐいっと飲む。
途中で少し苦い味がするジュースがあって、飲み終えたところから僕はよく覚えていない。真っ赤な顔でアスティの首に吸い付いたらしいけど、本当かな。
こないだも貴族の人からたくさんの贈り物をもらったのに、また積み重ねてあるよ。僕は何も出来ないのに、いいのかな。
「皆ご苦労である。竜女王アストリッドの番、カイだ。私以上に敬い従うように」
ははっ! 全員が頭を下げた。ツノが生えてたり、背中に翼がある人もいる。首や頬、手の甲に鱗がある人ばかりで綺麗だな。何もないつるんとした手を眺め、僕は残念に思った。僕も鱗があればいいのに。
「おいで、カイ」
手を繋いでいたアスティに呼ばれて、両手を伸ばす。抱っこする合図だ。ぎゅっと首に手を回して抱き着いた僕を、アスティは軽々と持ち上げた。玉座と呼ばれる椅子に座るアスティのお膝に、横向きに座るのが僕のお仕事。足をぶらぶらさせないで、アスティに寄り掛かってればいいの。
「重くない?」
「軽すぎて心配なくらいよ」
こそこそと小声で会話して、アスティが僕を引き寄せた。大きくて柔らかい胸に頭を押し付ける形になって、わたわたしちゃう。でもこのままがいいと囁くアスティの声が嬉しそうで、僕はじっとしていた。柔らかくて温かいから、眠くなりそう。
「今回は挨拶はないから、ゆったり過ごしましょうね」
貴族の人は以前にご挨拶が終わってるから、今日は来ない。贈り物も壁際に積んであった。手のひらに載る小さな箱から、僕が入れそうな大きな箱まで。綺麗なリボンや紙で飾られていた。
「皆にありがとう、言う?」
「そうね。カイが挨拶したいならいいわよ」
物をもらったらお礼を言うの。お母さんに教わったよ。だからアスティが皆に注目するよう声をかけて、僕に視線が集中しても怖くない。ぎゅっとアスティの腕を握って、真っすぐになるよう座り直した。
「たくさんの贈り物ありがとう」
わっと拍手が起きて、いろんな人が笑顔になった。嬉しい。僕より小さな子はいないけど、皆が子どもみたいに大喜びだった。嫌われて、汚いと怒られる僕はここにいない。僕が何か言っても蹴飛ばす人もいなかった。
振り返るとアスティのキスが額や頬に触れて、それも嬉しい。僕、ドラゴンの優しい人達と生きていきたい。アスティが女王様で偉いなら、お手伝いをして喜んでもらいたかった。
「僕ね、したいことできた」
「そう。素敵なことだわ、後で教えてね」
アスティは僕を抱っこしたまま、玉座を降りて歩き出した。会場に集まった皆に顔を覚えてもらうの。握手したり、お菓子を渡されたり。すごく幸せな気分だった。アスティの柄のお洋服も褒めてもらい、受け取ったコップのジュースをぐいっと飲む。
途中で少し苦い味がするジュースがあって、飲み終えたところから僕はよく覚えていない。真っ赤な顔でアスティの首に吸い付いたらしいけど、本当かな。
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