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14.嘘はついてないわ
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「これは……何が」
呆然とする公爵家の騎士達の前で、私はにっこり笑った。公爵家の門へ向かった私達は、森へ入る手前で救助の騎士団と遭遇する。予想より山に近かったので、早く動いてよかったと胸を撫で下ろした。
「お迎えですか。ありがとうございます」
「っ! フラン、フランなの?」
興奮した様子で、後ろの馬車から飛び出したのは公爵夫人だ。足に力が入らず崩れそうな彼女を、夫である公爵が支えていた。駆け寄りたい二人に、私は自ら近づく。セサルの手を引いて。
「ただいま戻りました。お父様、お母様。ご心配をおかけして申し訳ございません。こちらの方々に助けていただきましたの」
総勢18人の元野盗は、品のいい服に身を包んでいた。もちろん髭を剃って髪を撫でつけ、石鹸の匂いを漂わせている。ここまで仕上げるのに時間がかかったのよ。遺跡に似た建物の奥は、様々な品物が無造作に積み上げられていた。
商人の馬車を襲ったと聞いたけれど、その際の戦利品らしい。彼らは食べ物やお酒を引っ張り出したが、残りの品はそのまま積み上げた。販売するルートがない上、食べて消費することもない。そもそも貴族用の商品が多く、何に使うか理解していない物もあった。
豪華すぎる衣類は袖を通さず放置、石鹸は利用方法を知らない。宝石類は売り捌くと足がつく。彼らは飲食物以外を、すべて役に立たない物として奥に仕舞い込んだ。今回はそれを利用した。
「これは……その、娘の救助にご協力いただき感謝する」
身なりを整えれば、元は人のいい農民ばかり。にこにこと笑顔を浮かべて挨拶を受ける姿は、野盗には見えなかった。何度も臭いを確認し、洗い直しを指示した私も同じ石鹸で手足を洗っている。
父であるソシアス公爵の言葉に、騎士達も敬礼して謝意を示した。彼らには褒美が与えられることになり、私は無事帰還する。今回の提案は大成功だと思うわ。
ああ、忘れないようにしなくちゃ。
「この方達、住んでいた地域で災害があったんですって。お気の毒だわ。なんとかならないかしら」
「災害? この近くで、大きな災害はなかったはずだが」
様々な報告書に目を通す公爵なら、気づくと思ったわ。怪訝そうな公爵に、セサルは予定通り説明を始めた。家や畑が土砂に襲われたこと、領主は何もしてくれず困ったこと。それから偶然親切な人に出会い、身なりを整えてもらえたこと。
多少ぼかしたけど、嘘はついていない。だからセサルもすらすらと話を進めた。当然、言い淀む不自然さもなかった。
その間に、感極まった公爵夫人に抱き締められた。私の髪を撫で、何度も頬に口づけ、神に感謝を伝える。涙が止まらない公爵夫人の様子に、農民の一部がもらい泣きし始めた。これは予定外だわ。でも救助の話の信憑性は高まるわね。
「帰りましょう、家でゆっくりして。今後は王宮から迎えを出してもらうわ。二度とこんな目に遭わせないから、安心してね」
「はい、お母様。助けてくれた彼らは親切でした。是非ともお礼をしてください」
「ええ、もちろんよ。可愛いフランを助けてくれた恩人ですもの」
公爵夫人から約束を取り付けたことで、私はほっとして表情が和らいだ。その僅かな変化を見逃さず、彼女は愛おしそうに目を細める。
「本当に無事でよかったわ」
「彼らにお礼をしなきゃならん。引き上げるぞ」
騎士を引き連れた公爵の声に、私と公爵夫人は馬車に乗り込んだ。振り返った私は、セサル達へにっこり笑う。どう? うまくいったでしょ!
呆然とする公爵家の騎士達の前で、私はにっこり笑った。公爵家の門へ向かった私達は、森へ入る手前で救助の騎士団と遭遇する。予想より山に近かったので、早く動いてよかったと胸を撫で下ろした。
「お迎えですか。ありがとうございます」
「っ! フラン、フランなの?」
興奮した様子で、後ろの馬車から飛び出したのは公爵夫人だ。足に力が入らず崩れそうな彼女を、夫である公爵が支えていた。駆け寄りたい二人に、私は自ら近づく。セサルの手を引いて。
「ただいま戻りました。お父様、お母様。ご心配をおかけして申し訳ございません。こちらの方々に助けていただきましたの」
総勢18人の元野盗は、品のいい服に身を包んでいた。もちろん髭を剃って髪を撫でつけ、石鹸の匂いを漂わせている。ここまで仕上げるのに時間がかかったのよ。遺跡に似た建物の奥は、様々な品物が無造作に積み上げられていた。
商人の馬車を襲ったと聞いたけれど、その際の戦利品らしい。彼らは食べ物やお酒を引っ張り出したが、残りの品はそのまま積み上げた。販売するルートがない上、食べて消費することもない。そもそも貴族用の商品が多く、何に使うか理解していない物もあった。
豪華すぎる衣類は袖を通さず放置、石鹸は利用方法を知らない。宝石類は売り捌くと足がつく。彼らは飲食物以外を、すべて役に立たない物として奥に仕舞い込んだ。今回はそれを利用した。
「これは……その、娘の救助にご協力いただき感謝する」
身なりを整えれば、元は人のいい農民ばかり。にこにこと笑顔を浮かべて挨拶を受ける姿は、野盗には見えなかった。何度も臭いを確認し、洗い直しを指示した私も同じ石鹸で手足を洗っている。
父であるソシアス公爵の言葉に、騎士達も敬礼して謝意を示した。彼らには褒美が与えられることになり、私は無事帰還する。今回の提案は大成功だと思うわ。
ああ、忘れないようにしなくちゃ。
「この方達、住んでいた地域で災害があったんですって。お気の毒だわ。なんとかならないかしら」
「災害? この近くで、大きな災害はなかったはずだが」
様々な報告書に目を通す公爵なら、気づくと思ったわ。怪訝そうな公爵に、セサルは予定通り説明を始めた。家や畑が土砂に襲われたこと、領主は何もしてくれず困ったこと。それから偶然親切な人に出会い、身なりを整えてもらえたこと。
多少ぼかしたけど、嘘はついていない。だからセサルもすらすらと話を進めた。当然、言い淀む不自然さもなかった。
その間に、感極まった公爵夫人に抱き締められた。私の髪を撫で、何度も頬に口づけ、神に感謝を伝える。涙が止まらない公爵夫人の様子に、農民の一部がもらい泣きし始めた。これは予定外だわ。でも救助の話の信憑性は高まるわね。
「帰りましょう、家でゆっくりして。今後は王宮から迎えを出してもらうわ。二度とこんな目に遭わせないから、安心してね」
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「ええ、もちろんよ。可愛いフランを助けてくれた恩人ですもの」
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「本当に無事でよかったわ」
「彼らにお礼をしなきゃならん。引き上げるぞ」
騎士を引き連れた公爵の声に、私と公爵夫人は馬車に乗り込んだ。振り返った私は、セサル達へにっこり笑う。どう? うまくいったでしょ!
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