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68.あの子は無事なの? ***SIDE母
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目が覚めて、凍りついた状況に驚く。いつこんな状態になったのか。何が起きたのか……記憶が混濁している。隣には夫がおり、同じように目覚めていた。頷きあって氷を砕く。
ぱりっと雷が走り、氷は大きく割れて落ちた。ここで、今いる場所が寝室なのだと気づく。すぐ近くのベッドに置いてある子供服が目に入った。
「っ! ルンは?」
「この部屋にはいないようだ。というか、どのくらい?」
同じように目覚めたばかりの夫は当てにならない。砕いた氷を一瞬で蒸発させた。と家の中に不審な気配を感じた。ドラゴン?
「お目覚めですか、現在ご子息がこちらに向かっております」
膝をついて敬意を示す竜族の若者は、服装からして兵士のようだ。隣で元竜王の夫も頷く。見覚えがあると示されたことと、言葉の内容に安心した。どうやら不測の事態に対応し、現竜王が息子を保護してくれたらしい。
「ルンの保護に感謝します。あの子は元気ですか」
「はい。健やかにお過ごしです」
こちらに向かっているなら、勝手に動かない方がいい。行き違いになる面倒を避けるため、夫婦は居間へ移動した。やたらと空腹なので、そこそこの時間が経過したのは間違いない。
駆けつけたのは、ルンより魔族の方が早かった。飛び込んだヴラドは半泣きだ。空腹を伝えると、大急ぎで食事の手配を始めた。竜族の若者も、同様に飛び出していく。
「お二人は動かないでください」
ヴラドに念を押され、大人しくソファに座った。家の中を確かめると、さほど汚れていない。客間は兵士の常駐用スペースに改装され、経過した時間を想像させた。思ったより長く封じられていたのでは?
夫の外見にさほど変化はない。強いて違いを挙げるなら、肌の色が濃くなった。それからツノが大きくなったかもしれない。
「逞しくなったわね」
「そうかい? 君はとても魅力が増したよ」
夫によれば、魔力が眩しいくらいに豊かになり、髪色が黄金に輝いているという。後ろで結った髪を解き、手元に引き寄せて確認した。その際に感じた違和感に、胸を撫でる。
「……大きく?」
胸が大きくなった! 喜びの声を上げる直前、飛び込んできた子供に目が釘付けになる。髪と肌、瞳の色はもちろん顔立ちも。間違いなく、息子のルンだった。まだ四歳であどけない幼子だったあの子が、倍の年齢にまで成長している。
「お母さん、お父さん」
呼んで立ち止まった息子に、私は駆け寄った。
「ルン、ごめんなさいね」
まだ混濁した記憶の整理は終わっていないが、こんなに大きくなるまで放置したことを詫びる。不可抗力であっても、怒っているだろうか。震える手で背中に回した手は拒まれることなく、ルンは素直に胸に顔を埋めた。
「悪かった、ルン。愛してるぞ」
自慢の息子だ、そう告げる夫が後ろから二人まとめて抱きしめた。背中に感じる温もりより、少し体温の高い息子。頬を伝う涙がルンの髪に落ちた。
狩りを終えて戻ったヴラドが声を掛けるまで、私達は抱き合ったまま動かない。生きていてくれてありがとう、一緒にいられなくてごめんね。言葉で伝えきれない想いを、すべて込めた抱擁はしばらく続いた。
愛してるわ、ルン。
ぱりっと雷が走り、氷は大きく割れて落ちた。ここで、今いる場所が寝室なのだと気づく。すぐ近くのベッドに置いてある子供服が目に入った。
「っ! ルンは?」
「この部屋にはいないようだ。というか、どのくらい?」
同じように目覚めたばかりの夫は当てにならない。砕いた氷を一瞬で蒸発させた。と家の中に不審な気配を感じた。ドラゴン?
「お目覚めですか、現在ご子息がこちらに向かっております」
膝をついて敬意を示す竜族の若者は、服装からして兵士のようだ。隣で元竜王の夫も頷く。見覚えがあると示されたことと、言葉の内容に安心した。どうやら不測の事態に対応し、現竜王が息子を保護してくれたらしい。
「ルンの保護に感謝します。あの子は元気ですか」
「はい。健やかにお過ごしです」
こちらに向かっているなら、勝手に動かない方がいい。行き違いになる面倒を避けるため、夫婦は居間へ移動した。やたらと空腹なので、そこそこの時間が経過したのは間違いない。
駆けつけたのは、ルンより魔族の方が早かった。飛び込んだヴラドは半泣きだ。空腹を伝えると、大急ぎで食事の手配を始めた。竜族の若者も、同様に飛び出していく。
「お二人は動かないでください」
ヴラドに念を押され、大人しくソファに座った。家の中を確かめると、さほど汚れていない。客間は兵士の常駐用スペースに改装され、経過した時間を想像させた。思ったより長く封じられていたのでは?
夫の外見にさほど変化はない。強いて違いを挙げるなら、肌の色が濃くなった。それからツノが大きくなったかもしれない。
「逞しくなったわね」
「そうかい? 君はとても魅力が増したよ」
夫によれば、魔力が眩しいくらいに豊かになり、髪色が黄金に輝いているという。後ろで結った髪を解き、手元に引き寄せて確認した。その際に感じた違和感に、胸を撫でる。
「……大きく?」
胸が大きくなった! 喜びの声を上げる直前、飛び込んできた子供に目が釘付けになる。髪と肌、瞳の色はもちろん顔立ちも。間違いなく、息子のルンだった。まだ四歳であどけない幼子だったあの子が、倍の年齢にまで成長している。
「お母さん、お父さん」
呼んで立ち止まった息子に、私は駆け寄った。
「ルン、ごめんなさいね」
まだ混濁した記憶の整理は終わっていないが、こんなに大きくなるまで放置したことを詫びる。不可抗力であっても、怒っているだろうか。震える手で背中に回した手は拒まれることなく、ルンは素直に胸に顔を埋めた。
「悪かった、ルン。愛してるぞ」
自慢の息子だ、そう告げる夫が後ろから二人まとめて抱きしめた。背中に感じる温もりより、少し体温の高い息子。頬を伝う涙がルンの髪に落ちた。
狩りを終えて戻ったヴラドが声を掛けるまで、私達は抱き合ったまま動かない。生きていてくれてありがとう、一緒にいられなくてごめんね。言葉で伝えきれない想いを、すべて込めた抱擁はしばらく続いた。
愛してるわ、ルン。
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