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ゴブリン
ゴブリン(4)
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「どうなってる?」
アメノは、目の前に広がる光景に猛禽類のような目を顰める。
リンツは、思わず長衣の袖で口元を覆い、ヘーゼルは目を背け、ロシェは口元を両手で覆う。
ロシェ達の目の前に広がるもの、それは無惨に刻まれ、砕かれ、全身を赤黒い血溜まりに沈め、森の木々の中に散らばった大量のゴブリンの死体だった。
しかも大分、時間が経っているようでほとんど腐りかけていた。
「これって・・一体なんすか⁉︎」
生唾を何度も飲み込みながらリンツは言う。
「さあな?」
アメノは、唾と一緒に言葉を吐き捨てる。
ロシェの鼻を頼りに森の中を歩いている最中、アメノ達にも分かるような生臭い臭いが漂い、紐を辿るように向かうとこの光景に出会した。
アメノは、刀を鞘ごと抜くと、その先端で腹這いになって死んでいるゴブリンの一体をひっくり返し、鼻の頭に皺を寄せる。
ゴブリンの死体は胸の部分は胸骨が引き剥がされ、ぽっかりと穴が開いていた。
その中は・・・。
「心臓がない」
アメノは、猛禽類のような目をきつく細める。
その言葉にロシェとヘーゼルの顔が青ざめる。
「抜き取られたっすか?」
リンツは、口元を押さえて覗き込む。
「村の人間たちのように切れ味の刃物で切り取られたと言った感じではない。食いちぎられたというか、引きちぎられたと言う感じだな」
正体の知れない何者かがゴブリンの心臓を抜き取る姿を想像し、ロシェは治ったはずの嘔吐感が蘇り、顔を背ける。
アメノは、顔を上げて、ゴブリンたちの死体の奥にある草を踏み潰して出来たような道を見る。
「ロシェ」
アメノの声にロシェは口元を押さえたまま振り返る。
「何か臭うか?」
正直、嘔吐感に苛まれて臭いを嗅ぐどころではなかった。
しかし、それでは自分がここにいる意味なんてほとんどない。ロシェは生唾を飲み込み、嘔吐感を抑えこむと鼻を奥の道に向けて鼻腔を動かす。
ほとんどが目の前のゴブリンの死体から漂う血と腐臭の臭い。しかし、その中に紛れ込むように・・。
「精製された石油の臭い・・凄く近いです」
ロシェの言葉にアメノは、ゴブリンの血で汚れるのも構わず、鞘を腰に差し直し、刀を抜く。
リンツは、袖から短い樫の木の杖を取り出していつでも魔法が唱えられる体制を取り、ヘーゼルもいつの間にかデリンジャーを手にしている。
あまりにも自然な動きを目にし、ロシェは慌てて棘付き鉄球を握り直す。
「行くぞ」
アメノは、ゴブリン達の死体を避けて前に進む。
その後ろをロシェ達は最大限に警戒しながら付いていった。
森が途切れると小さな崖が現れる。
土を削り取ったような小さな崖で覗き込むと石と土が剥き出しの底と反対側の粘土質な土壁を見ることが出来た。
そしてその土壁に鼠が開けたような丸い穴とその前を溜むろすように徘徊するゴブリン達の姿も。
アメノ達は崖の端に膝を付いてしゃがみ込み、ゴブリン達にバレないように覗き込む。
「ここが新しい巣のようっすね」
リンツが緑色のきつく細めてゴブリン達を睨む。
「何で・・こんな所に?」
ヘーゼルは、眉を顰める。
「確かに巣としては外敵にバレないかもしれませんが狩猟や略奪をするにはあまりに不向きです」
まず、この崖から出るだけでも一苦労だし、略奪品を運ぶのにも適さない。自分たちのように上から見つけて弓矢や岩でも落とされたら一網打尽だ。
「バレないことしか考えてないんだろう」
アメノは、猛禽類のような目を細める。
「ここは奴らの巣穴じゃない。隠れ家だ。そして・・」
アメノは、ゴブリン達が守っている丸い穴を見る。
「奴らの守っている何かがあの中にいる」
アメノは、ロシェを見る。
ロシェは、崖を覗き込んでからずっと青い顔をしていた。
「臭いか?」
アメノの問いにロシェは目を震わせながら頷く。
「腐臭と・・精製された石油、そして微かに竜の臭いが・・」
ロシェは、爪を立てて土を握る。
アメノは、猛禽類のような目を細める。
「どうするっす旦那?」
リンツは、緑色の目をアメノに向ける。
「侵入するっすか?それなら睡眠で見張りの奴を眠らせて・・・」
「論外だ」
アメノは首を横に振って否定する。
「何が潜んでいるかも分からないような穴に無策で侵入するほど馬鹿なことはない」
馬鹿っと言われてリンツはムッと頬を膨らませる。
ヘーゼルは、落ち着かせるようにリンツの肩に手を置く。
「では、どのようにされますか?ゴブリン達が動き出すのを待ちますか?」
「いえ、暗くなってからでは我々が不利です。明るい内にやってしまいましょう」
「じゃあ、どうするっすか?」
リンツは、苛立ち、眉を顰める。
怒っても綺麗だな、とロシェは不謹慎と思いながらもリンツの顔を見る。
「ヘーゼル」
「はいっ」
「銃の弾は何発ありますか?」
「装填されているのは6発です。予備の弾薬はありますが一度使い切ると再装填するのに多少の時間はかかります」
「腕前は?」
「この下にいるゴブリンを当てる程度なら問題ありません」
「分かりました」
アメノは、次にリンツを見る。
「旋風は使えるか?」
「ここなら媒体無しでもいけるっす」
リンツは、眉を顰める。
「でも、何で?」
しかし、アメノはリンツの質問に答えずロシェを見る。
「前言撤回だ」
アメノの言葉の意味が分からず、ロシェは首を傾げる。
「思い切り吹け」
アメノは、目の前に広がる光景に猛禽類のような目を顰める。
リンツは、思わず長衣の袖で口元を覆い、ヘーゼルは目を背け、ロシェは口元を両手で覆う。
ロシェ達の目の前に広がるもの、それは無惨に刻まれ、砕かれ、全身を赤黒い血溜まりに沈め、森の木々の中に散らばった大量のゴブリンの死体だった。
しかも大分、時間が経っているようでほとんど腐りかけていた。
「これって・・一体なんすか⁉︎」
生唾を何度も飲み込みながらリンツは言う。
「さあな?」
アメノは、唾と一緒に言葉を吐き捨てる。
ロシェの鼻を頼りに森の中を歩いている最中、アメノ達にも分かるような生臭い臭いが漂い、紐を辿るように向かうとこの光景に出会した。
アメノは、刀を鞘ごと抜くと、その先端で腹這いになって死んでいるゴブリンの一体をひっくり返し、鼻の頭に皺を寄せる。
ゴブリンの死体は胸の部分は胸骨が引き剥がされ、ぽっかりと穴が開いていた。
その中は・・・。
「心臓がない」
アメノは、猛禽類のような目をきつく細める。
その言葉にロシェとヘーゼルの顔が青ざめる。
「抜き取られたっすか?」
リンツは、口元を押さえて覗き込む。
「村の人間たちのように切れ味の刃物で切り取られたと言った感じではない。食いちぎられたというか、引きちぎられたと言う感じだな」
正体の知れない何者かがゴブリンの心臓を抜き取る姿を想像し、ロシェは治ったはずの嘔吐感が蘇り、顔を背ける。
アメノは、顔を上げて、ゴブリンたちの死体の奥にある草を踏み潰して出来たような道を見る。
「ロシェ」
アメノの声にロシェは口元を押さえたまま振り返る。
「何か臭うか?」
正直、嘔吐感に苛まれて臭いを嗅ぐどころではなかった。
しかし、それでは自分がここにいる意味なんてほとんどない。ロシェは生唾を飲み込み、嘔吐感を抑えこむと鼻を奥の道に向けて鼻腔を動かす。
ほとんどが目の前のゴブリンの死体から漂う血と腐臭の臭い。しかし、その中に紛れ込むように・・。
「精製された石油の臭い・・凄く近いです」
ロシェの言葉にアメノは、ゴブリンの血で汚れるのも構わず、鞘を腰に差し直し、刀を抜く。
リンツは、袖から短い樫の木の杖を取り出していつでも魔法が唱えられる体制を取り、ヘーゼルもいつの間にかデリンジャーを手にしている。
あまりにも自然な動きを目にし、ロシェは慌てて棘付き鉄球を握り直す。
「行くぞ」
アメノは、ゴブリン達の死体を避けて前に進む。
その後ろをロシェ達は最大限に警戒しながら付いていった。
森が途切れると小さな崖が現れる。
土を削り取ったような小さな崖で覗き込むと石と土が剥き出しの底と反対側の粘土質な土壁を見ることが出来た。
そしてその土壁に鼠が開けたような丸い穴とその前を溜むろすように徘徊するゴブリン達の姿も。
アメノ達は崖の端に膝を付いてしゃがみ込み、ゴブリン達にバレないように覗き込む。
「ここが新しい巣のようっすね」
リンツが緑色のきつく細めてゴブリン達を睨む。
「何で・・こんな所に?」
ヘーゼルは、眉を顰める。
「確かに巣としては外敵にバレないかもしれませんが狩猟や略奪をするにはあまりに不向きです」
まず、この崖から出るだけでも一苦労だし、略奪品を運ぶのにも適さない。自分たちのように上から見つけて弓矢や岩でも落とされたら一網打尽だ。
「バレないことしか考えてないんだろう」
アメノは、猛禽類のような目を細める。
「ここは奴らの巣穴じゃない。隠れ家だ。そして・・」
アメノは、ゴブリン達が守っている丸い穴を見る。
「奴らの守っている何かがあの中にいる」
アメノは、ロシェを見る。
ロシェは、崖を覗き込んでからずっと青い顔をしていた。
「臭いか?」
アメノの問いにロシェは目を震わせながら頷く。
「腐臭と・・精製された石油、そして微かに竜の臭いが・・」
ロシェは、爪を立てて土を握る。
アメノは、猛禽類のような目を細める。
「どうするっす旦那?」
リンツは、緑色の目をアメノに向ける。
「侵入するっすか?それなら睡眠で見張りの奴を眠らせて・・・」
「論外だ」
アメノは首を横に振って否定する。
「何が潜んでいるかも分からないような穴に無策で侵入するほど馬鹿なことはない」
馬鹿っと言われてリンツはムッと頬を膨らませる。
ヘーゼルは、落ち着かせるようにリンツの肩に手を置く。
「では、どのようにされますか?ゴブリン達が動き出すのを待ちますか?」
「いえ、暗くなってからでは我々が不利です。明るい内にやってしまいましょう」
「じゃあ、どうするっすか?」
リンツは、苛立ち、眉を顰める。
怒っても綺麗だな、とロシェは不謹慎と思いながらもリンツの顔を見る。
「ヘーゼル」
「はいっ」
「銃の弾は何発ありますか?」
「装填されているのは6発です。予備の弾薬はありますが一度使い切ると再装填するのに多少の時間はかかります」
「腕前は?」
「この下にいるゴブリンを当てる程度なら問題ありません」
「分かりました」
アメノは、次にリンツを見る。
「旋風は使えるか?」
「ここなら媒体無しでもいけるっす」
リンツは、眉を顰める。
「でも、何で?」
しかし、アメノはリンツの質問に答えずロシェを見る。
「前言撤回だ」
アメノの言葉の意味が分からず、ロシェは首を傾げる。
「思い切り吹け」
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