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8章 ダンジョンを守れ ~異種族間同盟~

さあ

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「ふっ!!」


 リミルは魔力で自らの手を伸ばし、その先を刃の如く尖らせてレクスに攻撃する。レクスは、それを間一髪で避ける。ほとんど見えてはいなかったが、魔力を感じ取って避けたのだ。



「ふーっ、ふーっ」


 リミルは、理性を保ってはいるが、余裕までは垣間見えない。あの薬は相当理性を持っていくようだ。


「………………少し『魔物化』の作用が強くなっちゃたかぁ~……………うまく、中和したつもりだったんだけどっ………私も、まだまだってとこかなぁ~………………」


 もはや四足歩行にすらなりかけているリミル。ひょっとすると、理性もほとんど残っていないのかもしれない。だが、きちんと会話は出来ている。


「『魔力弾マナ・バレット』!!」


 レクスは高速で魔力弾を打ち出す。簡単な魔法なので、これくらいはスキルがなくとも無詠唱でいける。


 薬によって大分ステータスが底上げされたリミルはそれをなんなく避けきってみせる。やはり、通じない。だが─────これは想定内。


「『発散』、『発散』、『切る』!!」


 『発散』と『切る』のコンビネーション。魔力を排出して、動きを鈍らせてからの魔力を集束させた刃。しかし───────動きが鈍ることもなければ、刃も当たらなかった。魔力量的には、恐らくレクスよりも多い。無理してちょっとだけステータスあげたみたいな言い方をしていた気がするが、恐らく大分上がっている。


「『rantonv, goanibm, rascal我が敵を瞬時に貫け』!!」


 リミルがそう詠唱すると、瞬時に魔力が形を成して棒のように伸び──────レクスの腹を貫いた。


「死ねええええぇぇぇぇ───────!!」


 魔力を込めて、更にそれを巨大にするリミル。しかし───────



「───────偽物だよ」


「────────なっ!?」


 リミルが貫いていたのは、只の木の幹。レクスのスキル『偽視』でレクスに見せていただけ。『偽視』は、レクスが魔物の群れと戦っている際に保留していたスキル。何かの役に立つと思い、一応取っておいたのだ。それが功を奏した。


「───────『固形化ソリッド・スティフ』!!」


 レクスは自らの腕を固くし、剣を使わずに殴った。剣だと斬ってしまう恐れがあるスキルだからだ。これも、あの魔物の群れと戦っている時に保留していたスキルの一つ。


「がぁっ!?」


 ゴンッッッ!! と鈍い音が響く。背中を殴られたリミルは、物凄い勢いで吹っ飛んでいく。木が何本も折れていく。リミルが木に衝突しているからであるが。


「くそっ………………!!」


 全く思い通りにいかないことに苛立たしげな様子のリミル。腹がズキズキ痛むが、まだ堪えられる範囲内。薬を飲んだお陰で多少の耐性もついたのだ。


「………まだ薬はあるには、あるっ……………だけど」


 今手元にあるのは、先ほどのよりも更にやばいやつだ。そしてそれは、魔物を強化するためのもの。故に、筋肉組織や骨などへの負荷を一切考慮せず作った、いわば劇薬。ステータスの大幅上昇は見込めるが、自分が動けなくなるんじゃ意味がない。今のところは却下だ。


「────────『挟撃ダブル・ピッティング』!!」


「───────!?」


 リミルの両側を塞ぐように、突如板状になった固い金属のようなものが出現。そして、勢いよくリミルを挟みにきた。


「あっぶなっ……………!」


 リミルは間一髪で避けた。そして、いつの間にか目の前にはあの忌々しい少年が。


「────────もうこれ以上の悪事はやめて、大人しく捕まれ。これ以上、平穏を乱すな」


 実質上の降伏勧告。これにリミルは。


「ふふふふ…………………あはははははは!!」
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