スキル『日常動作』は最強です ゴミスキルとバカにされましたが、実は超万能でした

８章 ダンジョンを守れ ～異種族間同盟～

頑張るしかない

｢じゃあ、僕とエレナ、ミア、それからレインはこっちの方を探すよ｣


｢私達は、あっちの方を探せばいいのね｣


　ミーシャはレクスの言葉に対して、そう頷く。レクス達は現在、ユビネス大森林帯にいた。朝早いこともあってか、鬱蒼としたユビネス大森林帯には光が差し込んでいる。朝食は勿論、もうとっくに済ませてある。


｢じゃあ、二時間後にまたここに集まろう。絶対にヴァンナさんを見つけ出すよ｣


　レクスは確固たる決意の元、そう言った。


｢お母様………………｣


　フィオナは、苦しそうな表情でそう呟く。


　あの王宮にいたのは、ヴァンナだけ。父の方は仕事の方に出向いていたので、無事である。


｢……………フィオナ、ヴァンナさんは絶対生きてるよ。だから、必ず見つけ出せる。見つけ出してみせるから｣


　言外に、気持ちをしっかり持って、と言うレクス。しかし、やはりヴァンナを連れ去られたショックが大きいのか、表情は暗いまま。ボーッとしていたら、魔物に襲われた時の対処が難しくなる。


｢……………フィオナ、いつまでも、そんな顔しない…………。お母さんを、見つけたいんでしょ……………？　………だったら、そんな顔してる暇は、ない………｣


　エレナは厳しい言葉をかける。だが、フィオナも厳しい言葉をかけられたことで、我に返った。自分がいつまでも引きずっていたら、母を、ヴァンナを見つけられないと。一刻も早く助け出さなければならないのだと。


｢…………うん｣


　フィオナは瞳に確かな意志を宿して、そう頷く。


｢…………じゃあ、改めて。手分けして探そう｣


　レクス達は頷き合うと、それぞれのグループで散って行く。


　──────しかし、いくら探しても、ヴァンナの姿は見当たらなかった。



◇◆◇◆◇


　とある場所の、粗末で古びた建物内にて─────


｢……………貴女達、いったい何が目的？｣


　ヴァンナは椅子に縛り付けられながらも、二人─────オルクリムとリミルを睨みつけてそう問う。


｢貴様には知る必要のないことだ｣


　オルクリムはすげなくその問い掛けを一蹴した。わざわざ目的を教えてやるほど、素直ではない。


｢……………トイレに行きたい時は、必ず私達に声をかけろ。妙な真似をしたら……………分かってるな？｣


　オルクリムは腰に提げてある剣をちらつかせる。ヴァンナは顔を青ざめさせながらも、小さく頷く。


｢分かればいい。そっちが余計なことをしなければ、こちらも危害を加えずに済む｣


　オルクリムはそんなことを言うと、ヴァンナを一人、部屋に残して退出。


｢………………………｣


　ヴァンナは自分の無力を悔しく思いながら、オルクリム達を睨みつけるのだった─────



◇◆◇◆◇


｢……………で、皇女を連れ去ったのはいいけど、ここからどうする？　正直、策と呼べるほどのものは、ないのだが｣


　オルクリムは小声でそう言った。いつまでも皇女を捕まえておけない。今だって、皇女の捜索が行われているはずだ。このままずっと捕まえておいたら……………いずれ見つかるだろう。


｢大丈夫だよ～、策なら既に考えてあるから～｣


　緩い口調でそう言うリミル。リミルがそう言うのなら、きっと大丈夫なのだろう。オルクリムはリミルを全面的に信用しているのだ。リミルの考えた策なら、きっと大丈夫だ。


｢───────その策というのは？｣


｢それはね～、────────だよ～｣


　リミルの言った言葉に、オルクリムは、なるほど……………と感心したように頷いた。