スキル『日常動作』は最強です ゴミスキルとバカにされましたが、実は超万能でした

８章 ダンジョンを守れ ～異種族間同盟～

黒いアザ

｢レクス！　しっかりして！｣


｢レクス、しっかり！｣


｢レクス！｣


《ご主人！！》



　ミーシャ、シュエイル、フィオナ、レインがレクスに声をかける。しかし応答はない。どうやら気絶しているらしい。


｢…………彼の者に、癒しを…………『超回復ラージヒール』！｣


　エレナがそう唱えると、レクスの傷が癒えていく。血まみれだった箇所も血が引いている。苦しそうだったレクスの表情も回復したおかげで和らいだ。よかった…………とエレナがほっと息をついたが、レクスの身体に残っているあるものを見て、驚いたような顔に。


｢アザが、消えてない…………！？｣


　そう。黒いアザが消えることなく依然として残っているのだ。それも、くっきりと。


｢エレナ、ここが崩壊してるわ！　ひとまず脱出するわよ！｣


｢…………っ。うん…………｣


　エレナは歯噛みしながら頷いた。─────と。






ドゴオオオオォォォォ──────ン！！







　再び天井が崩れ、大きな音が洞窟中に響き渡る。このままでは、エレナ達まで死んでしまうだろう。


｢…………『浮遊フローティング』……｣


　エレナは残りの『妖力』を使ってレクスを浮遊させる。浮遊魔法は、比較的少ない『妖力』で発動できるのだ。


｢エレナ、大丈夫？｣


｢…………う、うん……それよりも、早くしないと……レクスが…………｣


　エレナは決して苦しい表情は見せなかった。それよりも、レクスを早く助ける方が先決なのだ。


｢…………そうね。じゃあ、極力魔物は無視していくわよ！｣


　ミーシャはフィオナを担ぎながらそう言った。フィオナも魔力切れで気絶していたのだ。


　エレナ達は、極力魔物を無視しつつ、治療のためにとりあえず洞窟の外を目指した。



◇◆◇◆◇


｢どうしたの！？　そんなに息を切らして！｣


　治療院に急いで駆け込むと、丁度受付があって、そこにいた二〇代くらいの女性がエレナ達の様子を見て驚いていた。


｢…………レクスが、黒いアザが………！　……早く、助けて………！！｣


　エレナはうまく言葉がまとまらないのか、慌てふためいていた。


　エレナ達は洞窟を出た後、急いでレクスの身体についた残りの傷を治すべく回復魔法を行使。傷は回復したものの、黒いアザは何回回復しても消えることはなかった。治療に特化した人達がいる治療院ならどうにかしてくれるかと思い、ここまでレクスを運んだのだ。


　エレナの様子を見て、大体察した『治癒士ヒーラー』の二〇代くらいの女性は、他の『治癒士ヒーラー』達を集めて浮いているレクスを運ぶ。レクスが浮いていることに、治癒士ヒーラー達は驚いた。二〇代くらいの女性も気づいていたが、今はレクスの治療が最優先なので、特に突っ込むことはなかった。


｢何ぼさっとしてんの！！　早く運ぶわよ！！｣


｢｢｢｢｢｢｢｢は、はい！！｣｣｣｣｣｣｣


　『治癒士ヒーラー』達は浮いているレクスの身体を落ちないように持った。それと同時に#
浮遊魔法もとけた。


｢集中治療室よ！　あと、ミリィナはいる！？｣


｢今日は非番なのでいません！｣


｢至急呼んできて！！｣


｢分かりました！｣


　二〇代くらいの女性の言葉に、水色の髪の女性が頷いた。水色の髪の女性は飛び出すように治療院をあとにし、急いでミリィナなる人物を呼びに行った。


｢急ぐわよ！｣


　二〇代くらいの女性の言葉に『治癒士ヒーラー』達は、はい！　と返事をすると、集中治療室へと急いで運んで行くのだった。