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8章 ダンジョンを守れ ~異種族間同盟~

花達の声

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「ここら辺でいいかな………」


 ルーパは、周りにある花を見てそう呟く。


「『聴音ヒアリング』…………」


 ルーパは花達の力を借りて、カレンに魔法のようなものをかける。本人曰く、これは厳密に言えば魔法ではないらしいが。すると─────


『ルーパ、いらっしゃい。今日も来てくれたのね』


『ルーパが来てくれて嬉しいよ』


『ルーパ、隣にいるのは誰だい?』



「おお…………!」


 大人の女性ぽい声や少年ぽい声、青年ぽい声など様々な声が聞こえてきた。カレンはそれらの声に思わず上を感嘆の息を漏らす。


「私の隣にいるのはカレンお姉ちゃんだよ。あなた達の声を聞きたいって言ってたから連れてきたの」


『そうなのね。その子にはもう声が聞こえるようになってるの?』


「うん、さっきしたよ……」


 ルーパは念話でそれらの声に答える。カレンにもその念話は聞こえており、話してみたいなぁ~…………なんてことを思った。


『初めまして、カレン。私達は歓迎するわ』

 
 ペコリ、と花達がお辞儀をしたような気がした。実際にはそんなことはあり得ないわけだが。カレンは花達に話しかけてもらって興奮していた。


「は、初めまして」


 そう言って花達の言葉に返すが、花達は特に反応しなかった。もしかして、言葉が通じていないのだろうか。


「ね、ねえ、ルーパ。私も花達と話してみたいっ」


 興奮冷めやらぬ様子でそう頼むカレン。しかし─────


「ごめんなさい、それはできないの…………」


 ルーパは申し訳なさそうにそう言った。出来ないのには何かしらの理由があるのだろう。まあ、出来ないのなら仕方ない。


「そうなんだ…………残念」


 苦笑しながら残念そうにそう言うカレン。


『ねえねえルーパ、ちょっと聞いてよ。この間、でっかいワームがこの森に出たのよ。それで私達の仲間が何本もやられちゃってね。一矢報いてやりたいけど、私達は弱いからそれも出来ないし。ルーパとカレンも気をつけてね? 二人が死ぬところなんて見たくないからね』


「ワームって…………レクスがこの前言ってたキングワームのことかな…………」


「うん、多分そうだと思う…………」


 二人はそんなことを小声で話した。レクスは、『ユビネス大森林帯にキングワームが出現したらしいから、あんまり奥まで行っちゃ駄目だよ?』と屋敷からカレン達が出かける前に言っていた。多分そうだろう。


「うん、気をつける…………」


「気をつけるよ」


 二人はそれぞれそう言った。─────と。



『待って…………この気配。まさか…………!』


『…………あのワームに似ているね。しかも、一体じゃない。な、何体いるんだい、これは』


「ワ、ワーム!?」


 カレンは花達の会話を聞いて、驚いたような声を出す。なぜなら、どこにもそれらしき魔力反応がないからだ。その原因は、ワームのスキルのせいである。


『ルーパ、カレン。早く逃げなさい、私達のことは気にしなくていいから』


「で、でも…………」


 花達を見捨てて逃げるのは、ルーパには耐え難いことだった。


『いいから! 早く逃げなさい! なに、ワームに引っこ抜かれたくらいじゃなんともないわよ!』


『早く逃げて!』


『そうだよ、こんなところで死んじゃ駄目だよ!』


 花達は必死にルーパとカレンを説得する。ルーパは最初は戸惑っていたが、やがて覚悟を決めたのか、歯を食い縛って。


「………………っ。約束……! 絶対に死なないでね…………!」


『勿論よ!』


『うん!』


『そのつもりだよ!』


 花達はそれぞれそう言った。ルーパは、花達に背を向け、カレンに行こ…………! とユビネス大森林帯から出るように促す。


「う、うん…………」


 カレンは花達との別れを惜しみながらもルーパと共に急いでその場を離れるのだった。
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