スキル『日常動作』は最強です ゴミスキルとバカにされましたが、実は超万能でした

８章 ダンジョンを守れ ～異種族間同盟～

商業ギルドの実態

｢おい、期日は今日までのはずだが？｣


　大柄な男は、鋭い目付きで男から貰った金を数えながらそう言った。


｢す、すいませんっ！あと少しで貯まるんです！｣


｢そろそろ返して貰わねえと、うちとしても困るわけよ。貸した分も返せねえようなとこの返済をずっと待ってるこっちの身にもなれや。そういうわけで、返済が伸びた分の利子、ここに書いてあるから。１週間待ってやるよ。それでも返せねえようなら…………お前んとこの商業ギルド、潰すぞ？｣


　ひぃ…………！？ と怯えながら、その紙を受け取る男。


｢なっ…………！？ こ、こんな膨大な額が１週間で集められる訳が──────っ｣


｢ああ？ 出来ねえ訳ねえよな？｣


　ドスをきかせる大柄な男。大柄な男が経営している商業ギルドは、ずっとこうしてきた。ここ一帯は、この大柄な男の商業ギルドが支配しているような状態で、この街にある小さな規模の商業ギルドは、ここの商業ギルドに毎月金を支払うように命じられたのだ。逆らえば、どんな事が待っているのか分からない恐怖から、皆最初は金を納めていたが、最終的には納められなくなり、潰されていくのである。


｢…………っ！ くっ………！｣


｢ああ？ 何だ？ その反抗的な目付きは？｣


　こめかみにシワを寄せる大柄な男。床に跪く男に拳を浴びせようと、手を握りしめる。駄目だ─────と思った、その時。



｢─────おっと、そこまでにしときな｣


　そう言って仲裁に入ったのは、全身黒い装束を着た男。手には武器を携えていない。これは、もしや──────。


｢お、お前ら…………噂の義賊か………。おい、護衛達！ こいつらを引っ捕らえろ！｣


　叫ぶ大柄な男。しかし─────。


｢おい、聞いてんのか！ こいつらを引っ捕らえろ！｣


｢─────あんた達の護衛なら、早々に片付けさせてもらったわ｣


　そう言って姿を現したのは、一人の女性だ。手にはダガーを持っていた。


｢くっ…………！｣


　悔しそうに歯ぎしりをする大柄な男。しかし、次の瞬間、心底おかしそうに笑い声を上げた。



｢くくく……………くははははは！！ 護衛を倒して終わりとでも思ったか！ こっちには、まだ奥の手があるんだよぉ！｣


　そう言った大柄な男は、出でよ、我が僕よ！ と言いながらポケットからスイッチを出して押す。すると─────後ろの赤い幕が開き、檻が出現した。檻が開いてその中から─────オークが出てきた。しかも、何らかの影響で変異したらしく、肌が赤い。


｢さあ、オークよ、やれ！ あいつらをぶっ殺せ！！｣


｢ガアアアァァァァ！！｣


　繋いでいた腕輪や足枷が外れると同時に唸るオーク。そのまま２人に向かって、勢いよく突進してくる。その手には、大剣が握られていた。しかし、２人は悲鳴をあげることはない。なぜなら、彼らには頼れる仲間がいるからだ。



ガキイイィィィィィ─────ン！！





｢危ないところだったね｣


　ラングがオークを魔法で障壁を張って防いだ。


｢サンキュー、ラング｣


｢…………ったく、いつもいいタイミングで来てくれるわね｣


　２人は苦笑しながらそう言った。


｢俺がやるから、２人は下がってて｣


　そう言われ、２人は素直に下がる。２人は戦闘においてはそこそこは戦えるが、強い相手には勝てない。足手まといになるだけだ。


｢くくく………………貴様一人で勝てるわけがなかろう｣


｢突っ込んでくるだけの脳筋オークに負けるほど、僕もやわじゃないんでね。勝たせてもらうよ｣


　そう言って、突っ込むラング。


｢ばかめ！！｣


　嘲笑う大柄な男。大剣を勢いよく振り下ろすオーク。




ガキイイイイィィィィィ──────ン！







｢くっ……………！｣


　障壁を展開して防ぎ切るもその顔は、苦しそうだ。


　
｢ラング…………！｣


　２人とも、そんなラングを心配そうに見つめていた。