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8章 ダンジョンを守れ ~異種族間同盟~

錬金術師ギルド

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「あのー…………ここって、体験? みたいなことって……できるんですか?」


「いひひひ‥…………できるよ………」


 相変わらず不気味な声で笑いながらそう言う受付嬢。


「いひひ…………そこの、Dの部屋が空いているから、使ってくれて構わないよ………いひひひ……」


「わ、分かりました。みんな、行こ」


 ミーシャはそう言うと、足早にDの部屋に入っていった。他の面々も同様だ。ユキメウラ達だけが、不思議そうに首を傾げながら、ミーシャの後に続いて入っていった。



◇◆◇◆◇


「うわ…………凄いわね」


 ミーシャが目を見開いて驚いていた。そこには錬金術に必要な道具が一式揃っていたからだ。まあ、錬金術ギルドだから当たり前かもしれないが。それでもその道具の多さには目を見張るものがあった。


「へぇー、結構そろってるね」


「こんな感じなんだー」


「わぁ…………凄い」


「凄いな、ここ」


 カレン、ミアは感嘆の息を漏らす。マリューシュとイスメラは目を輝かせながらそう言った。エレナもやる気があるのか、その目は爛々というわけでもないが、輝いていた。ティーナは珍しく少し疲れ気味で元気がなかった。


「し、失礼します!」


 エレナ達がそんなことを話していると、少女の大きい声が響き渡った。一斉に少女の方を向くエレナ達。


「と、突然す、すいまちぇん!」


 噛んだ。噛んだことで顔を真っ赤にする少女と、笑いを堪えるエレナ達(主にミーシャだが)。暫くの間、沈黙が場を支配する。


「…………どうしたの………? ………私達に、用があって来たんでしょ………?」


 エレナがそれを破った。少女は慌てたように、はっ、はい、そうでした! と言いながら説明を続ける。


「えええ、えと、それでですね、ギルドマスターに、錬金術の道具の扱い方を教えて来なさい、ってた、頼まれて…………」


「ギルドマスターってまさか…………あ、あそこで受付やってた人? なーんて、そんなわけ…………」


「ああ、はい。そ、そうですよ。あの方こそ、この世に幾人といない、れ、『錬金王』の職業の持ち主なのです!」


 ミーシャが半笑いで言った冗談を遮り、そう言う少女。ミーシャは、思わず驚いてずっこけてしまった。げぇ…………あのオバサンが………? などと少女に聞こえぬようにそんな言葉を吐いた。他の面々も、あの人が…………!? と驚きを隠せない様子だ。


「……………それで、あなたの名前は?」



 ミアがそう尋ねた。



「あっ、す、すいません。申し遅れました。わ、わらし、エルツキラと申します」


 凄い勢いで噛み始めた。落ち着いて、落ち着いて。


「そ、それで、皆さんの興味のある道具は、あ、ありますか? も、持ってきてもらえれば、お教えします」


 詰まりながらもそう言う少女─────エルツキラ。すると、早速マリューシュが細長い容器を持ってくる。


「すいません。これは何に使うんですか?」


「ひぅ!?」


 エルツキラは驚いたように甲高い声を出した。さっき自分で何でも聞いてくれって言ってたような気が………………気のせい?


「あ、ごめんなさい…………。驚かせてしまって」


「いいいい、いえ、こちらこそ、自分で言っておきながら………す、すいません」


 エルツキラは慌てたように謝罪すると、説明を始める。


「んんっ。それはですね、錬金術において最もよく使う器具なんです。錬金術というのはどういうものかご存知ですか?」


 ………………急に饒舌になった。錬金術が関わるとこんなにも変わるのね………。


 ミーシャはそんなことを思いながら苦笑した。



「…………いえ、分からないです」


「錬金術っていうのは、ベースとなる素材を元に別の素材を混ぜ合わせるか、素材それ自体を強化する術のことなの。それで──────」


 その後もペラペラ話すエルツキラ。マリューシュが熱心に聞いているのが、また少し面白かった。
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