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8章 ダンジョンを守れ ~異種族間同盟~
偵察
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翌日───────。
「…………妖精族の祖先がダンジョンを創ったと言われている。私も何度か妖精族の国へ行った。その際にダンジョンコアの近くにある空間の歪みから行ったのだ」
あれがそうだ、とハールは上の方を指差してそう言った。上には見たところ、何も見えない。本当に僅かな歪みなのだろう。
「…………どこ?」
「………………全く見えんのだが……」
「そうですねぇ…………」
オウルドは目を凝らしてみるも、やはり何も見えない。
「私の後ろについて来ればいい」
そう言うと、ハールは魔法を使って飛び上がり、空間の歪みに向かって飛んでいった。すると、壁にぶつかることなくそのまま姿が消えていった。後には少し波紋が立っていた。なるほど、あれが空間の歪みね…………。
「ね、ねぇ…………僕、魔法使えないんだけど」
「そんなもん、身体能力でどうとでもなる」
ローガンはそう言ってニカッと笑うと、身を屈めて大きくジャンプ。見事に空間の歪みへと入っていった。
「………………うそー…………」
まさか本当に行けるとは思ってもいなかったので、唖然とするしかないオウルド。
「ねぇ、メアさん。悪いけど──────ってメアさん!?」
「…………? どうしたんですか?」
メアは既に魔法で飛んでおり、空間の歪みへ入ろうとしていた。
「メ、メアさん…………僕を置いていくつもりですか……………?」
「? 自分で飛べるんじゃないんですか?」
「い、いや…………先程も言いましたが、僕は魔法が使えないんです。かといって、超人的な身体能力が備わってる訳でもありません。─────要するに、僕は現状、メアさんの助けがないと行けないんです…………!」
お願いします、連れていって下さい、と懇願するオウルド。ここまで頼まれて無下に出来るほど、メアも鬼ではない。
「はぁ…………分かりましたよ。しっかりと歯を食い縛っといて下さいね?」
「…………へ? 一体何を?」
次の瞬間、メアはオウルドの身体を持ち上げた。メアでも持つのに苦労しないくらいに、オウルドの体重は軽かった。
「とりゃ!」
「うわっ、うわあああぁぁぁぁ!?」
メアがオウルドを歪む空間に向かって投げた。オウルドは悲鳴をあげながら、歪む空間へと吸い込まれていく。
「オウルド、ごめんなさい。私、人を抱えながらあまり高くは飛べないんです」
オウルドがいなくなってから言っても遅い。その実、その顔はいたずらに成功した子供のような顔だ。人を抱えながら飛べないのは本当である。
メアは、そんなことを思った後、自分も歪む空間へと入っていった。
◇◆◇◆◇
「ここが妖精族の国…………」
メアは、その幻想的な風景に思わず息を飲んだ。セレニア皇国にはない、独特で幻想的な雰囲気に圧倒されている。
「ひ、酷いですよ~、メアさん」
「ああ、ごめんなさい。投げるような真似をしてしまって」
メアは素直に謝っておいた。
「全くですよ。まあそのお陰でここに来られた訳ですし、もうこれ以上文句は言わないことにします」
オウルドは、それ以上の追及はやめた。今は他にやるべきことがあるからだ。
「…………早速王城へ向かおう」
ハールの先導で、王城へと急いで向かうメア達。これだけダンジョンの支配を画策しているにも関わらず、一向に尻尾が掴めないのはおかしい。王自身か、王に関わる誰かか、もしくは別人かが関わっている可能性も否めない。そういった状況であるため、取り敢えず王城付近で何か聞き込みでもしようという訳だ。可能であれば、少しだけ潜入する。なるべく目立たないように行動する。
「………………メア。一つだけ言っておこう。──────先走るな」
「………………? は、はい」
言葉の意味が解らず、不思議そうに頷くメア。
「では、いこう」
ハールはそう言って、再び走り始めた。しかし、このあと、彼らは聞き込みをするまでもないということを思い知らされることになる──────。
「…………妖精族の祖先がダンジョンを創ったと言われている。私も何度か妖精族の国へ行った。その際にダンジョンコアの近くにある空間の歪みから行ったのだ」
あれがそうだ、とハールは上の方を指差してそう言った。上には見たところ、何も見えない。本当に僅かな歪みなのだろう。
「…………どこ?」
「………………全く見えんのだが……」
「そうですねぇ…………」
オウルドは目を凝らしてみるも、やはり何も見えない。
「私の後ろについて来ればいい」
そう言うと、ハールは魔法を使って飛び上がり、空間の歪みに向かって飛んでいった。すると、壁にぶつかることなくそのまま姿が消えていった。後には少し波紋が立っていた。なるほど、あれが空間の歪みね…………。
「ね、ねぇ…………僕、魔法使えないんだけど」
「そんなもん、身体能力でどうとでもなる」
ローガンはそう言ってニカッと笑うと、身を屈めて大きくジャンプ。見事に空間の歪みへと入っていった。
「………………うそー…………」
まさか本当に行けるとは思ってもいなかったので、唖然とするしかないオウルド。
「ねぇ、メアさん。悪いけど──────ってメアさん!?」
「…………? どうしたんですか?」
メアは既に魔法で飛んでおり、空間の歪みへ入ろうとしていた。
「メ、メアさん…………僕を置いていくつもりですか……………?」
「? 自分で飛べるんじゃないんですか?」
「い、いや…………先程も言いましたが、僕は魔法が使えないんです。かといって、超人的な身体能力が備わってる訳でもありません。─────要するに、僕は現状、メアさんの助けがないと行けないんです…………!」
お願いします、連れていって下さい、と懇願するオウルド。ここまで頼まれて無下に出来るほど、メアも鬼ではない。
「はぁ…………分かりましたよ。しっかりと歯を食い縛っといて下さいね?」
「…………へ? 一体何を?」
次の瞬間、メアはオウルドの身体を持ち上げた。メアでも持つのに苦労しないくらいに、オウルドの体重は軽かった。
「とりゃ!」
「うわっ、うわあああぁぁぁぁ!?」
メアがオウルドを歪む空間に向かって投げた。オウルドは悲鳴をあげながら、歪む空間へと吸い込まれていく。
「オウルド、ごめんなさい。私、人を抱えながらあまり高くは飛べないんです」
オウルドがいなくなってから言っても遅い。その実、その顔はいたずらに成功した子供のような顔だ。人を抱えながら飛べないのは本当である。
メアは、そんなことを思った後、自分も歪む空間へと入っていった。
◇◆◇◆◇
「ここが妖精族の国…………」
メアは、その幻想的な風景に思わず息を飲んだ。セレニア皇国にはない、独特で幻想的な雰囲気に圧倒されている。
「ひ、酷いですよ~、メアさん」
「ああ、ごめんなさい。投げるような真似をしてしまって」
メアは素直に謝っておいた。
「全くですよ。まあそのお陰でここに来られた訳ですし、もうこれ以上文句は言わないことにします」
オウルドは、それ以上の追及はやめた。今は他にやるべきことがあるからだ。
「…………早速王城へ向かおう」
ハールの先導で、王城へと急いで向かうメア達。これだけダンジョンの支配を画策しているにも関わらず、一向に尻尾が掴めないのはおかしい。王自身か、王に関わる誰かか、もしくは別人かが関わっている可能性も否めない。そういった状況であるため、取り敢えず王城付近で何か聞き込みでもしようという訳だ。可能であれば、少しだけ潜入する。なるべく目立たないように行動する。
「………………メア。一つだけ言っておこう。──────先走るな」
「………………? は、はい」
言葉の意味が解らず、不思議そうに頷くメア。
「では、いこう」
ハールはそう言って、再び走り始めた。しかし、このあと、彼らは聞き込みをするまでもないということを思い知らされることになる──────。
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