スキル『日常動作』は最強です ゴミスキルとバカにされましたが、実は超万能でした

８章 ダンジョンを守れ ～異種族間同盟～

決着

｢ほあ！！｣


　一瞬で間合いを詰めてくるヴォルムンガ。伊達に英霊の一角を担っている訳ではない。






ガキイイイィィィィィ───────ン！！






｢くっ───────！｣


　重い──────。やっぱりこの人、相当強い。だけど──────。



｢やぁ！！｣


　負けじとレクスも剣を握る柄に力を入れて、槍を押し返そうとする。しかし─────。


｢うわっ！？｣


　ヴォルムンガがふっと槍を持つ手の力を緩め、レクスは前のめりにバランスを崩す。そこを、ヴォルムンガが見逃す筈もない。


｢はっ！｣


　凄まじいスピードで振るわれた槍は、レクスの胸元を目掛けて一直線に。


｢ふっ｣


　しかし、レクスは待っていたと言わんばかりに、剣で胸元を防ぐとそれをジャンプの勢いに変えて、高く跳ね上がり、一回転。すれ違い様にヴォルムンガの背中を狙い、振るう。





ガキイイイィィィィィ──────ン！！






｢くっ………………！！｣


　レクスは、攻撃を防がれた事に少し悔しそうにしながらも、後退して一旦距離をとる。



｢中々やるのう｣


｢いえいえ、そちらこそ｣


　まあ、儂は仮にも英霊じゃからのう…………。強くないとまずいんじゃけどな…………。それにしても…………儂の槍さばきについてくるとはな。久しぶりに少し熱くなったわい。


｢ほあぁぁぁぁ！！｣


｢うおおぉぉぉぉぉ！！｣




ガキィン！ キィィン！ ガッ！ キィィン！




　その後も激しい攻防が続く。ヴォルムンガが槍で攻撃しては、レクスが裁き、レクスが攻撃しては、ヴォルムンガが裁く。ついには、両者が魔法まで使用し始めた。



｢『身体強化』！｣


　ヴォルムンガは、無詠唱で『身体強化』を発動。身体の動きが格段に速くなる。


｢『王の威厳』、『脚力強化(中)』！｣


　レクスも、全ステータスが上昇する『王の威厳』と持続的に自分の脚力を上げてくれる『脚力強化(中)』で対抗する。


｢『地面操作グランドコントロール』！｣


　レクスは、魔力を地面に注ぎ込み、地面をでこぼこにした。


｢ぬお！？｣


　ヴォルムンガが僅かにバランスを崩す。これは一気に仕掛けに行くチャンスだ。レクスは一気にヴォルムンガまで迫る。



｢──────『豪守』｣





ガキイイイィィィィィ──────ン！





｢かっっっった！？｣



　レクスは涙目でそう言った。この『豪守』というスキルは、身体を鋼のように硬くするスキルだ。レクスはじーん…………と痛みが手に伝わる。─────と、レクスはここであることに気づいた。


｢───────槍は？｣


　そう。ヴォルムンガの手には、槍が握られていない。レクスは周囲を見回すが、一向にそれらしきものは見当たらない。下からも魔力反応はない。─────となれば。



｢上！｣


　レクスは上を見上げた。そこには、確かに槍があった。


｢──────余所見は禁物じゃ｣


　しかし、その隙を見逃すはずもなく、槍が落ちてくると同時に、ヴォルムンガがレクスに迫る。挟み撃ちだ。


｢くっ、しまっ──────｣


　レクスは急いで『守る』を展開。しかし、それはグングニルよって貫かれてしまう。この勝負、もらった─────！


｢──────慢心は大敵なり、ですよ｣


｢ぬおぉ！？｣


　ヴォルムンガは、つまづいて転んでしまった。レクスは槍を回避し、ヴォルムンガの首元に剣を突き出す。


｢…………………参ったのじゃ｣


　突っ伏したまま両手を挙げ、そう言うヴォルムンガ。レクスは、剣を鞘に収めた。


｢それにしても…………どうして儂は転んだんじゃ…………？ 何かに引っ掛かったような感覚があったのじゃが…………｣


　ヴォルムンガはそう言いながら、ふと足を見る。そこには、何やら光る細いものが。


｢こ、これは…………糸？｣


｢ええ、その通りです。僕のスキル、『操糸』です｣


　レクスはそう言いながら、糸を解除した。先ほどヴォルムンガがこけたのは、レクスが糸を操作してヴォルムンガの足にかかる力の方向をかえたのだ。


｢そんなスキルがあったとはのう…………。これはしてやられたわい｣


　ヴォルムンガはそう言いながら、苦笑したのだった。