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8章 ダンジョンを守れ ~異種族間同盟~

ダンジョンの危機について

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「ダンジョンの危機、ね…………」


「はい。このままだと、ダンジョンから魔物が溢れかえってしまい、国が支配されかねないと。妖精族の方に言われました」


 レクスは、皇女──────ヴァンナにそう報告した。事前に手紙で了承を得てから、王宮にやって来た。


「妖精族ね…………確か、その祖先がダンジョンを作ったとかいう…………」


 ヴァンナはそんな事を呟いた。妖精族の祖先がダンジョンを作ったというのは相当有名な話らしい。レクスは、妖精族の少年? に言われるまでその事を知らなかった。


「よし、レクス。この事をメアに伝えて。そして、、会議を開くことも」


「分かりました」


 レクスは、跪きながらそう言った。


 同盟国というのは、セレニア皇国と龍人ドラゴニュートの国『ジオルグ』とダークエルフの国『ザカライア』、ドワーフの国『コルドバ』、エルフの国『ミューエル』、猫耳族の国『ウェントラル』などを含めた9ヵ国のことである。『ジオルグ』と『ザカライア』は、あの戦いの後に同盟を結んだ。同盟を結んだ主な目的は、動向の監視だ。下手な真似ができないようにということだ。


 ここで、同盟を結んだ経緯について、少し語ろうと思う。



◇◆◇◆◇


 龍人ドラゴニュートとダークエルフの侵攻があった、その2週間後─────。


「─────今日はお集まり頂き、ありがとうございます」


 統括騎士団長─────ミハイルがそう言った。セレニア皇国の会議室で開かれているため、今回はミハイルが司会役となっている。いつも開かれる場所はバラバラだ。


「では、早速だが──────会議を始めたいと思う。今日の議題は─────ジオルグとザカライアについてだ」


「あいつらは今までに何回もいさかいを起こしてきたからな…………きつくお灸を据えねばならんな」


 そう口にしたのは、ドワーフの国『コルドバ』の代表─────ローガンだ。片目は怪我をしているのか、黒いアイマスクのようなもので覆い隠されており、身体つきを見ても相当鍛練を積んできたことがわかる。


「ウチ的には~、極刑が一番にゃんじゃないかと思うにゃ~。この騒動を起こした首謀者を処罰するとかかにゃ~」


 少しゆったりとした口調でそう言ったのは、猫耳族の国『ウェントラル』の代表─────キャネビーだ。黄土色に近い耳に愛嬌のある藍色の瞳が特徴的だ。しかし、その瞳には油断の色もない。


「………………いや、極刑では意味がなかろう。余計な反乱分子を生むだけだ」


 そう口にしたのは、エルフ族の国『ミューエル』の代表─────ハールだ。長いアゴヒゲを生やし、その目付きは鋭い。年は初老のように見えるが、その実200歳を越えている。


「確かに、その通りでなぁ。無駄な争いはこっちとしても避けたいとこどすえ」


 癖のある口調でそう言ったのは、セイレーン族の国『シーレン』代表、カルメラだ。彼女は今は人間の姿に擬態しているが、セイレーン族特有の耳に水色の髪が特徴的である。


「うむ…………そうだな。極刑は出来る限り避けたい」


 ミハイルも同意のようで、頷いて答えた。


「なら、いっそのこと、同盟国に入れてしまうのはどうでしょう!」


 そう口にしたのは、獣人の国『クロッキン』代表、オウルドだ。少年のような小柄な体躯に、猫耳族と形の似た耳が特徴的だ。丸いメガネをかけている。


「我々には何のメリットもないように思えるのだが?」


 ハールがそう言った。


「大丈夫です! メリットは作ればいいのですから!」


「作る? どういうことだ、それは?」


 ローガンが不思議そうな顔でそう尋ねてきた。


「─────相手側に同盟国に入ってもらうに当たって、こっちからいくつか条件を出せばいいのですよ」


 何か企んだような顔つきでオウルドはそう口にしたのだった。
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