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7章 旅行先で

黒い影

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「くそっ、アジト見つかったか!?」




「アジトは見つけましたが、既にもぬけの殻です! 恐らく、別のアジトに移ったのだと思われます!」





 若い男性のドワーフがそう口にした。






「一足遅かったかっ…………!」





 今回も、アジトを特定したかと思えば、既にそこはもぬけの殻。これで3回目だ。いくらなんでも対応が速すぎる。そこから導き出される1つの結論は─────。




「保安ギルドの中に、内通者がいる、ということか……………?」






 それだけは考えたくなかった中年のドワーフの男性であるが、その線が一番濃厚である。





「一体誰がっ………………」




 中年のドワーフの男性は、悔しそうに歯ぎしりしながらそう言うのだった。



◇◆◇◆◇


「くくく………………どうだ? 収穫はあったか? ロン」




「ええ、ざっとこんな感じです」




 ロンと呼ばれた若い男性は、他の人に引いて持ってこさせた檻にかけてある白い布を取った。そこには──────。







「お、お母さん…………! お父さん…………!どこ…………!?」




「おうちに帰らせてよ!!」




「ここから出せ!」






 捕らえられたドワーフ達が、叫び出した。ドワーフ達以外にも人間ヒューマン族や獣人族などがいた。年端もいかない子供から、若い大人の人までいた。







バンッ!!!






「───────おい、喚くんじゃねえぞ?」





 ロンは腰にある鞘から短剣を取り出して脅した。黙んなかったら刺すぞ、という事だろう。その脅しに対抗する術を持たない捕らえられた人々は、ひっ…………!? と怯えることしか出来ない。




「今回もいなかったか…………」




 椅子に座る傲慢そうな男性は、目的の者がいなかった事に、残念そうな顔をした。





「すいません、次こそは必ず見つけて見せます」





 ロンはひざまずいてそう言った。自分の失態だと思っているのか、その顔は悔しそうだ。





「まあいい。じっくり見つけていけばいい…………。それに…………今回のオークションも儲かりそうだしな。お前にはいつも助けられている」





「いえいえ。そんな、滅相もない」




 ロンは苦笑しながらそう言った。それと同時に、あの小娘を捕まえてやる…………!! そう決心したのだった。



◇◆◇◆◇


「はぁ、はぁ…………。ふぅー…………危ない、危ない。危うく遭遇するところだった」





 小路地に隠れていた少女が灰色のローブのフードを外しながら、そう呟いた。ブロンドのさらさらとした髪に、小さい身長の少女。頭には、猫耳がついている。しかも、普通の猫耳ではなく、赤色の耳。変異種のような感じといえば、分かりやすいだろう。




「くそっ、それにしても、ゲスな奴らめ…………!」




 思い出しただけでも腹が立ってきた!





 少女─────アリリルは、あのゲスな野郎共に一時期捕まっていたのだ。しかし、何とかあの檻を壊して逃げてきたのだ。アリリルは、特別だということで、檻に一人で入れられていたのだ。他の子達も助けたかったのだが…………いかんせん、『心力』が残ってなかったのだ。無理だった。



 『心力』というのは、魔力ではなく、体力────つまり、HPを消費することで生み出される力のこと。命にも関わるゆえに連発こそ出来ないものの、その威力は普通の魔法よりも数十倍上だ。





「赤い耳がなければ……………!」






 赤い耳は、迫害の対象になるからだ。赤い色は、血を連想させ、将来的に猫耳族の破滅を予期させるからだ。そう、いわゆる─────忌み子というやつだ。


 アリリルは、ある程度育った後に、自分の村を追い出された。それが大体、10歳の時。あれからもう2年が経っている。一体、何度この赤い耳を恨んだだろうか。



「………………うっ、くそっ…………。こんな時に………!」





 3日間も寝なかったせいか、身体にガタが来ていた。目眩がする。お腹も、全然食事を取らなかったせいでもうスカスカだ。




「もう、無理………………」





 アリリルは、そのまま意識を暗転させ、地面に倒れ伏してしまった。





 
 





 
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