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6章 突如、領地経営へ
商人との初交渉
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夕方、客室にて。
「これはこれは、レクス辺境伯。お初にお目にかかります。私は、『フォルニス商会』のトワール=フォルニスと申します」
トワールと名乗ったその男は、スリムな体型に眼鏡をかけており、その瞳はまるで修羅場をいくつも潜り抜けてきた者の目をしている。…………これは、慎重にいかないと。
レクスはごくり、と息を飲んだ。
「トワール殿ですか。あ、どうぞ、そちらにお掛けください」
「では遠慮なく」
トワールはそう言って向かい側のソファーに座った。
「して、トワール殿。今日はどのようなご用向きで?」
「今日は、こちらの領地で商売させていただきたく、参った次第でございます。早速ですが、こちらの資料をご覧ください」
トワールはそう言って、自分のバッグの中から資料を取り出して、レクスに渡す。
「ふむ、なるほど………………」
その資料には、各属性の魔石や日常生活に必要な道具がずらっと並んでいた。いわゆる生活必需品である。
レクスは最後まで目を通す。
「ん……………? これは…………?」
最後の項目に、『魔禁薬』というのがあった。これは、国でも禁薬指定されているもので、販売は勿論の事、密売も禁じられている。
「ほう…………。そこに気づかれるとは…………」
トワールは、感心したようにそう言った。
「トワールさん、これは禁薬指定されてる筈なんですが…………」
「いやはや、レクス殿。試すような真似をして済まない。貴方とは、上手くやっていけそうだ」
「──────もしかして、わざと、ですか?」
レクスは少し目を鋭くしながらそう問う。
「最近は、こういう資料をきちんと読まない方が多いもので。レクス殿がもしそうでしたら、この交渉は取り止めていたでしょう」
快活に笑いながら、そう言うトワール。そして、暫くの後、こちらが本来の資料です、と本物の資料を渡した。レクスは隙間なく目を通し、特に問題がないことを確認した。
「………………特に問題はありませんね。では、こちらから上乗せする額を指定しても宜しいでしょうか」
「ええ、構いません」
トワールは、快く返事した。
レクスは、全ての商品に1000セルク、800セルク、500セルクと上乗せしていった。日常的に大量に消費するものは、大きめの額、そうでないものはそれより小さめの額で決めていった。最後に、税として30セルク上乗せした。トワールから、特に反対意見はなかった。
「では、私はこれで失礼いたします。商会ができ次第、早速商売に取りかからせて頂きます」
交渉が終わり、そう言って、客室を退出するトワール。レクスは一礼して見送った。
「ふぅ………………。何はともあれ、取り敢えず交渉は成功か…………」
レクスはソファーにどかっと座りながら、一息ついた。一気に緊張が抜けたのだ。
「ふわああぁぁぁ………………なんだか眠くなってきた…………」
眠気が一気に押し寄せてきた。レクスはそれに身を任せ、眠りについたのだった。
◇◆◇◆◇
「─────クス。ねえ、────クスってば!!」
「ん………………?」
「やっと起きたのね。もう夕食の時間過ぎてるわよ」
ミーシャがレクスにそう言った。そこには、エレナやカレン、ミア達がいた。
「────え? 嘘!?」
レクスはふと窓の方を見る。確かに、日は沈んでおり、辺りは暗かった。どうやら本当らしい。
「最初は交渉が長引いてるのかと思ったけど、さすがに長引きすぎだと思って、様子を見に来たら寝てたからね。寝顔、ご馳走さま」
「………………宝珠に記録しといた………」
いたずらっぽい笑みを浮かべながら、そう言うカレン。エレナはホクホク顔だ。2人の言葉にレクスの顔は一気に真っ赤になった。
ぐうううぅぅぅぅぅ~~~~………………。
そこに更に追い討ちをかけるように、レクスの腹がなった。その可愛らしい音に、思わずみんなが笑ってしまった。更に羞恥に顔を真っ赤にするレクス。
「…………レクス………これ、食べて………」
エレナがそう言って魔法袋から、料理の乗った皿を複数取り出した。恐らく、今日の夕食だろう。
「…………ありがとう、エレナ」
レクスはありがたく頂くことにした。魔法袋に入れてあったからか、すごくホカホカだった。
「これはこれは、レクス辺境伯。お初にお目にかかります。私は、『フォルニス商会』のトワール=フォルニスと申します」
トワールと名乗ったその男は、スリムな体型に眼鏡をかけており、その瞳はまるで修羅場をいくつも潜り抜けてきた者の目をしている。…………これは、慎重にいかないと。
レクスはごくり、と息を飲んだ。
「トワール殿ですか。あ、どうぞ、そちらにお掛けください」
「では遠慮なく」
トワールはそう言って向かい側のソファーに座った。
「して、トワール殿。今日はどのようなご用向きで?」
「今日は、こちらの領地で商売させていただきたく、参った次第でございます。早速ですが、こちらの資料をご覧ください」
トワールはそう言って、自分のバッグの中から資料を取り出して、レクスに渡す。
「ふむ、なるほど………………」
その資料には、各属性の魔石や日常生活に必要な道具がずらっと並んでいた。いわゆる生活必需品である。
レクスは最後まで目を通す。
「ん……………? これは…………?」
最後の項目に、『魔禁薬』というのがあった。これは、国でも禁薬指定されているもので、販売は勿論の事、密売も禁じられている。
「ほう…………。そこに気づかれるとは…………」
トワールは、感心したようにそう言った。
「トワールさん、これは禁薬指定されてる筈なんですが…………」
「いやはや、レクス殿。試すような真似をして済まない。貴方とは、上手くやっていけそうだ」
「──────もしかして、わざと、ですか?」
レクスは少し目を鋭くしながらそう問う。
「最近は、こういう資料をきちんと読まない方が多いもので。レクス殿がもしそうでしたら、この交渉は取り止めていたでしょう」
快活に笑いながら、そう言うトワール。そして、暫くの後、こちらが本来の資料です、と本物の資料を渡した。レクスは隙間なく目を通し、特に問題がないことを確認した。
「………………特に問題はありませんね。では、こちらから上乗せする額を指定しても宜しいでしょうか」
「ええ、構いません」
トワールは、快く返事した。
レクスは、全ての商品に1000セルク、800セルク、500セルクと上乗せしていった。日常的に大量に消費するものは、大きめの額、そうでないものはそれより小さめの額で決めていった。最後に、税として30セルク上乗せした。トワールから、特に反対意見はなかった。
「では、私はこれで失礼いたします。商会ができ次第、早速商売に取りかからせて頂きます」
交渉が終わり、そう言って、客室を退出するトワール。レクスは一礼して見送った。
「ふぅ………………。何はともあれ、取り敢えず交渉は成功か…………」
レクスはソファーにどかっと座りながら、一息ついた。一気に緊張が抜けたのだ。
「ふわああぁぁぁ………………なんだか眠くなってきた…………」
眠気が一気に押し寄せてきた。レクスはそれに身を任せ、眠りについたのだった。
◇◆◇◆◇
「─────クス。ねえ、────クスってば!!」
「ん………………?」
「やっと起きたのね。もう夕食の時間過ぎてるわよ」
ミーシャがレクスにそう言った。そこには、エレナやカレン、ミア達がいた。
「────え? 嘘!?」
レクスはふと窓の方を見る。確かに、日は沈んでおり、辺りは暗かった。どうやら本当らしい。
「最初は交渉が長引いてるのかと思ったけど、さすがに長引きすぎだと思って、様子を見に来たら寝てたからね。寝顔、ご馳走さま」
「………………宝珠に記録しといた………」
いたずらっぽい笑みを浮かべながら、そう言うカレン。エレナはホクホク顔だ。2人の言葉にレクスの顔は一気に真っ赤になった。
ぐうううぅぅぅぅぅ~~~~………………。
そこに更に追い討ちをかけるように、レクスの腹がなった。その可愛らしい音に、思わずみんなが笑ってしまった。更に羞恥に顔を真っ赤にするレクス。
「…………レクス………これ、食べて………」
エレナがそう言って魔法袋から、料理の乗った皿を複数取り出した。恐らく、今日の夕食だろう。
「…………ありがとう、エレナ」
レクスはありがたく頂くことにした。魔法袋に入れてあったからか、すごくホカホカだった。
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