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6章 突如、領地経営へ

蠢く欲望

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「あーあ。育成中だったのに…………ひどいことをしてくれますね………」


 異世界人の男ーーーーマサユキは、おどけたような調子でそう言った。その顔つきは至って真面目そうだが、裏表が激しい男である。


 マサユキは4年前にこの世界に召喚された。マサユキは異世界系の漫画やラノベ、アニメが好きでいつかこういう世界に行ってみたいとも思っていた。


 しかし、実際に転移してみると、現実はそう甘くはなかった。マサユキの職業は『従魔師テイマー』と『薬剤師』。全然チートな職業でも何でもなかった。クラスメイト達からは無能扱いされ、挙げ句には王宮を追い出された。今とは違う皇女の手によって。


 随分と前の話だが、マサユキは今でも思い出すと激しい怒りにかられる。



「ふふふ……………。次はどうしましょうか………」




 不気味な笑い声が洞窟内に響き渡った。



◇◆◇◆◇


 ネルフィと鉱石採取に行った、その翌日。



 結局昨日は魔剣は作れずじまいだった。ネルフィが冒険者ギルドに報告しに行ったからだ。



 そして、今日は領地の開拓に出向いている。レインは寝ており、起こしても起きなかったので置いてきた。


「ふぅ…………。取り敢えずはここまで拓ければ十分かな」



 レクスは広大な領地を見回してそう言った。初期の頃に比べると、その広さは約10倍にもなっていた。これなら、十分街としてもやっていけるだろう。



「後は『建築士』が居れば……………」


 確か、ヴァンナさんは『必要だったら何でも言ってくれて良いからね』と言ってた筈。『建築士』の派遣を頼もうかな。


 レクスはそんな事を考えた。




「…………あ、そうだ。街道も作らなきゃ」



 レクスは地図を取り出して、街の位置を調べる。そこに街道を繋げるからだ。




「エレナ! 開拓は十分だから、そのままその方向に道を作っちゃって! ミーシャも手伝いを頼むよ!」


「…………了解………!」



「分かったわ!」



 2人は快く頷いてくれた。あ、でも…………今日は結構領地を拡大したし、疲れてる筈だよね。やっぱりやめておこう。



「エレナ、ミーシャ! やっぱりいいや、戻ってきて! カレンとティーナとミアも!」



 道の開拓に取りかかろうとした2人だったが、レクスにそう言われて、レクスの元に戻る。



「………………どうしたの………?」


「いや、今日はここまででいいかなって。皆結構疲れが溜まってるでしょ? また明日進めようよ」


「全然平気だよ、このくらい!」



 ミアがそう言った。



「そうかもしれないけど、今日はこれで終わり。それに、そんなに一気にやんなくても大丈夫だよ。期限なんてないんだし。ゆっくりやっていこう」


 レクスはミアの頭をポンポンと撫でながらそう言った。ミアは頬を赤くした。照れているらしい。



「レクスー! お腹が減ったのだ! 何か食べたい!」


「そうだね…………じゃあ、帰りに『ツツカ亭』にでも寄ってこうか。みんなもお腹空いてるでしょ?」


 レクスの問いかけに一同は頷いた。因みに、『ツツカ亭』とは、食事を比較的安価で提供してくれる店のこと。冒険者限定の店である。オーグデンに紹介してもらって以来、レクスの行きつけとなっている。



 レクス達は、小腹を満たしに『ツツカ亭』へと向かうのだった。



◇◆◇◆◇


「いらっしゃいませなのにゃー!」


 出迎えてくれたのは、猫耳族のユミルミ。猫耳族は、変わった名前が多いのだ。



「レクスきゅん達だにゃ。一応だけど、ギルドカードを拝見するにゃ」


 レクス達はギルドカードを出して、ユミルミに手渡す。



「確認したにゃ。好きな席に座ってにゃ~!」



 ユミルミはそう言ってレクス達を通してくれた。適当な席に座るレクス達。




「どれにする?」


 メニューを開いてそう尋ねるレクス。



「そうね…………夕食も控えてるし、私はこれにするわ」


 ミーシャがそう言って指差したのは、肉や野菜をパンで挟んで味付けしたもの。



「………………私も……それにする………」


「私もそれにしようかな」



 エレナ、カレンを始めにみんながそれを選んだ。レクスもそれを選択した。



「すいませーん!」


「はい、なんでしょう?」


 近くにいた別の猫耳族の女性が対応する。



「オーク肉と野菜のサンドを6つ下さい」


「かしこまりましたにゃん」


 猫耳族の女性はそういうと、厨房にメニューを伝えにいった。暫くして、それが運ばれてきた。



「頂くのだ!」


 早速ティーナがかぶりついた。ムシャムシャ、ムシャムシャ…………。



「んーー! 美味しいのだ!」



 満足気な顔でそう叫ぶティーナ。それを見て、他のみんなも食べ始める。



「おいしいね、これ!」


「うん、おいしい!」


 ミア、カレンも満足気な表情だった。




 こうして、穏やかな日常が過ぎていくのだった。





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