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5章 『一神教』の野望と王都の危機
エレナ、覚醒
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「…………レナ、エレナ!!」
「……………………!?」
ミーシャの声にハッとするエレナ。周りを見ると、皆心配そうにこちらを見ていた。
「エレナ、大丈夫?」
ミーシャが心配そうに声をかけた。エレナは、う、うん……………と小さく頷き返した。
「…………『封印魔法』が解ければ…………」
エレナは確かに自分の中に、鎖みたいなものがあることを感じた。それを解けば、レクスを助けに行ける。ーーーーしかし、同時に皆にその姿を見られてしまうということだ。
…………迷ってる暇は………ない………!
エレナは静かに目を閉じると、『封印魔法』を解き始めた。『封印魔法』の術式と反対の術式をぶつけてやれば、解けるはず。しかし、術式が複雑で、何度も組み直しながら試行錯誤していく。そしてーーーー。
カッ!!
紫色のまばゆい光が周囲を包む。思わず目をつむってしまうみんな。暫くして、光が収まり目を開くと、そこにはーーーー。
「妖………狐?」
「しかも、尾が9………いや、10本…………?」
「さっきとはまるでオーラが違うな…………」
カレン、ミーシャ、リューが口々にそう言った。他のみんなも同様に、驚きを隠せない様子。
「で、でも、妖狐は数百年前に滅んだ筈じゃーーーー」
ニンファがそんなことを口にする。確か、妖狐は数百年前の魔物による大災害で滅びたのだ。書物にはそう載っている。
「…………私と、母さんだけ生き残ったの………」
エレナはそう言った。それからエレナはポツリポツリと昔の事を語りだした。母に尻尾を封印されたこと、魔物の大災害の後、暫くして母が死んだこと、母の墓を作って、お参りしていたこと。そして、数ヶ月経っていつも通りお墓参りしていたところを盗賊に捕まって売り飛ばされたことなど。
「そうなの…………。そんなことが……………」
「………………うん………」
エレナは小さく頷いた。
「ーーーーでも、そのお陰でレクスに会えた…………。……もう、何も失いたくない…………!」
それから、力強くそう言い切った。その瞳には、確かな決意が込められていた。レクスの力になりたい、レクスの助けになりたい。そしてーーーーレクスともっとずっと一緒にいたい。
「………………止めても無駄なんでしょ?」
「………………うん………」
「ーーーー行って来なさい、レクスを助けに。今の貴女なら、絶対にいける」
ミーシャの言葉に、エレナは力強く頷くとそのまま黒竜の方へと向かっていった。
◇◆◇◆◇
「『取る』!」
相手が魔物なら、魔石を取り除けば…………!
しかしーーーー。
「ーーーー!?」
いつまで経ってもレクスの手元に魔石は現れなかった。
「魔物じゃ、ない…………?」
「我を魔物ごときと一緒にするな。我は黒魔龍人、れっきとした種族だ」
黒竜は、忌々しそうにそう言いながらレクスに『竜爪』を飛ばす。レクスは『跳躍』を駆使して、何とかかわす。
「黒魔龍人…………確か聞いたことがある。数千年前に時の狭間に封印された種族…………」
「そうだ。あの低能な魔族のお陰で、我はこうして封印から解かれたのだ。クククッ…………感謝せねばなぁ!」
黒竜はそう言うと、口から無数の魔力弾を吐き出した。とんでもない速度と威力である。レクスは攻撃を避けながら、打開策を考える。
攻撃力を最大まで上げての『絶腕』。これしか手はない。問題は…………一発で削れるかどうか。削りきれなければ、激痛に身体が動かなくなるだろう。恐らく、一発で削りきれない。現状、切り札がないのだ。
レクスは、『走砲』を発動。同時に『攻撃力上昇』、『王の威厳』、『超重斬撃』を発動。黒竜の懐に潜り込み、腹を斬る。
ガッ!!
しかし、ほんの少し傷をつけられた程度。HPを見ても、3万くらいしか減っていない。これではこっちが先に尽きてしまう。
「戦闘中に、何をぼさっとしている?」
ふと見れば、すでに竜の爪が迫っていた。
「ぐっ…………! ぐああぁぁぁぁぁーーーー!!」
咄嗟に『守る』を発動するも、耐えきれずに割れてしまい、吹っ飛ばされるレクス。
「ーーーーこれで、終わりだ」
スキル『黒竜の息吹』が、既に目の前に迫っていた。回復する暇もなかった。
もう駄目だーーーー。
「ーーーー『堅牢な防御陣』………!!」
その時、10本の尾を持った妖狐ーーーージュウビが、『黒竜の息吹』を防いだ。その顔には見覚えがありーーーー。
「ーーーーエレナ!?」
レクスは、ジュウビーーーーエレナを見て、驚いたような表情になったのだった。
「……………………!?」
ミーシャの声にハッとするエレナ。周りを見ると、皆心配そうにこちらを見ていた。
「エレナ、大丈夫?」
ミーシャが心配そうに声をかけた。エレナは、う、うん……………と小さく頷き返した。
「…………『封印魔法』が解ければ…………」
エレナは確かに自分の中に、鎖みたいなものがあることを感じた。それを解けば、レクスを助けに行ける。ーーーーしかし、同時に皆にその姿を見られてしまうということだ。
…………迷ってる暇は………ない………!
エレナは静かに目を閉じると、『封印魔法』を解き始めた。『封印魔法』の術式と反対の術式をぶつけてやれば、解けるはず。しかし、術式が複雑で、何度も組み直しながら試行錯誤していく。そしてーーーー。
カッ!!
紫色のまばゆい光が周囲を包む。思わず目をつむってしまうみんな。暫くして、光が収まり目を開くと、そこにはーーーー。
「妖………狐?」
「しかも、尾が9………いや、10本…………?」
「さっきとはまるでオーラが違うな…………」
カレン、ミーシャ、リューが口々にそう言った。他のみんなも同様に、驚きを隠せない様子。
「で、でも、妖狐は数百年前に滅んだ筈じゃーーーー」
ニンファがそんなことを口にする。確か、妖狐は数百年前の魔物による大災害で滅びたのだ。書物にはそう載っている。
「…………私と、母さんだけ生き残ったの………」
エレナはそう言った。それからエレナはポツリポツリと昔の事を語りだした。母に尻尾を封印されたこと、魔物の大災害の後、暫くして母が死んだこと、母の墓を作って、お参りしていたこと。そして、数ヶ月経っていつも通りお墓参りしていたところを盗賊に捕まって売り飛ばされたことなど。
「そうなの…………。そんなことが……………」
「………………うん………」
エレナは小さく頷いた。
「ーーーーでも、そのお陰でレクスに会えた…………。……もう、何も失いたくない…………!」
それから、力強くそう言い切った。その瞳には、確かな決意が込められていた。レクスの力になりたい、レクスの助けになりたい。そしてーーーーレクスともっとずっと一緒にいたい。
「………………止めても無駄なんでしょ?」
「………………うん………」
「ーーーー行って来なさい、レクスを助けに。今の貴女なら、絶対にいける」
ミーシャの言葉に、エレナは力強く頷くとそのまま黒竜の方へと向かっていった。
◇◆◇◆◇
「『取る』!」
相手が魔物なら、魔石を取り除けば…………!
しかしーーーー。
「ーーーー!?」
いつまで経ってもレクスの手元に魔石は現れなかった。
「魔物じゃ、ない…………?」
「我を魔物ごときと一緒にするな。我は黒魔龍人、れっきとした種族だ」
黒竜は、忌々しそうにそう言いながらレクスに『竜爪』を飛ばす。レクスは『跳躍』を駆使して、何とかかわす。
「黒魔龍人…………確か聞いたことがある。数千年前に時の狭間に封印された種族…………」
「そうだ。あの低能な魔族のお陰で、我はこうして封印から解かれたのだ。クククッ…………感謝せねばなぁ!」
黒竜はそう言うと、口から無数の魔力弾を吐き出した。とんでもない速度と威力である。レクスは攻撃を避けながら、打開策を考える。
攻撃力を最大まで上げての『絶腕』。これしか手はない。問題は…………一発で削れるかどうか。削りきれなければ、激痛に身体が動かなくなるだろう。恐らく、一発で削りきれない。現状、切り札がないのだ。
レクスは、『走砲』を発動。同時に『攻撃力上昇』、『王の威厳』、『超重斬撃』を発動。黒竜の懐に潜り込み、腹を斬る。
ガッ!!
しかし、ほんの少し傷をつけられた程度。HPを見ても、3万くらいしか減っていない。これではこっちが先に尽きてしまう。
「戦闘中に、何をぼさっとしている?」
ふと見れば、すでに竜の爪が迫っていた。
「ぐっ…………! ぐああぁぁぁぁぁーーーー!!」
咄嗟に『守る』を発動するも、耐えきれずに割れてしまい、吹っ飛ばされるレクス。
「ーーーーこれで、終わりだ」
スキル『黒竜の息吹』が、既に目の前に迫っていた。回復する暇もなかった。
もう駄目だーーーー。
「ーーーー『堅牢な防御陣』………!!」
その時、10本の尾を持った妖狐ーーーージュウビが、『黒竜の息吹』を防いだ。その顔には見覚えがありーーーー。
「ーーーーエレナ!?」
レクスは、ジュウビーーーーエレナを見て、驚いたような表情になったのだった。
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