27 / 57
1章 王宮編
目覚めたレミリー。そして、本当の姿。
しおりを挟む
「ん……んぅ……」
洗脳魔法を解き、暫くしてレミリーが目を覚ます。
「お、目が覚めたか」
蓮斗はレミリーにそう声をかける。
「!?」
レミリーはその声に驚き、体を起こそうとする。だが、体に力が入らないため、体を起こせなかった。
「……そんなに怯えなくても大丈夫だよ。俺は君の敵じゃないから」
「……そんな言葉が信じられるとでも?」
レミリーは敵意をむき出しにした目でこちらを睨み付ける。
確かにこの状況で信じろ言われても信じられないだろう。それは当然の事だ。レミリーには壮絶なまでに残酷な過去があるのだから。だが、このままなのも良くないのだ。どうにかして、敵ではないことを伝えたいんだけど……。
蓮斗がそんな事を考えていると、川崎が口を開き、優しく諭すように言う。
「あなたは先ほどまで洗脳魔法にかかっていたの。それをここにいる蓮斗くんが解いてくれたの」
「!!」
レミリーは確かに覚えていた。自分が自分じゃなくなっていく様を。自分が自分を見ているような不思議な感覚。いくら止めてと叫んでもまるで聞こえなくて、自分の意思に反して行動する、まるで制御の聞かない自分の精神。いつしか諦め、心を閉ざした事。滅ぼされた自分の村、そして、自分をこんな風にしたーーー。
「……っ。助けられなかった……。誰一人救えなかった……。私が無力だったばかりに……」
レミリーはあの時の自分の無力さを思い出すと悔しくなり、歯を噛み締め、涙を流した。自分にもっと力があれば……。自分がもっと賢ければ……。そんな事を考えれば考えるほど涙が溢れて止まらなくなる。家族も何もかもあの日に全て失った。自分に他人を救える力などありはしないのだと一番痛感した出来事でもあった。
「くうぅぅ……」
涙を抑えようとしても逆に涙がどんどん増していくばかり。今、自分を上から見下ろしている三人は敵かもしれないのに。敵にそんな姿は見せられないのに、涙は止まってくれない。そんな事を思いながら私が悲しみにうちひしがれていると。
「……つらかったね。苦しかったね。あなたの経験してきた過去はあなたにしかわからない。私にはわかるよなんて綺麗事も言えない。……だけど、泣きたい時には泣いていいんだよ。我慢しなくていいんだよ」
女の人がそう言いながら私を優しく包むように胸元に私の顔が来るように抱き上げながら私の頭を撫でた。その瞬間、私のなかで何かが切れたような、そんな感じがした。
「うわあぁぁぁぁぁ……! 助けたかった……! 救いたかった……! 一つでも多くの命を!! それなのに私は……! 私は……!!」
レミリーは川崎の胸元に顔を埋めた状態で今まで心に溜めていたものを吐き出す。今まで洗脳魔法に支配されていたのだ。吐き出したくても吐き出せなかった感情が爆発するのも仕方のないことだと思う。
暫くして、レミリーは泣き止んだが、泣きつかれたのかそのまま寝てしまった。
「……ようやくこの騒動が落ち着いたな……」 蓮斗のこの言葉に二人は力なく頷いた。余程疲れているのだろう。それは、蓮斗も同様だった。そうやって蓮斗達が暫く休んでいると。
「おーい!!無事かー!?」
城門の方から聞き覚えのある声が聞こえてくる。俺達は声のした方に振り向くとそこには勇者高峰を中心としたクラスメイト達がいた。
「おう。こっちは無事だ。そっちは大丈夫か?」
クラスメイト達と対峙したのは、蓮斗達だが、怪我が無かったか一応聞く。もしかしたら、他の人に危害を加えた可能性もあるし。
「……ああ。こっちは特に何もない。……その、悪かったな。迷惑かけて」
高峰が代表して答える。というか覚えてたんだな……。
「いや、気にすんな。特にお前達から攻撃受けてないから」
蓮斗はまるで天を仰ぐようなポーズをとり、自分は無傷である事をアピールする。それを見た高峰はホッと息をつき、苦笑いを浮かべる。
「そ、そうか。それは良かった……。それで今後のことなんだけど……」
高峰がそう説明しようとすると秀治が口を挟む。
「それについてはこちらから説明させてもらうがいいか?」
「え……? ああ、よろしく」
秀治に遮られ、少し驚いたような悔しいようなそんなよくわからない表情になった高峰だったが、ここは確かに秀治に説明してもらった方がいいだろうと判断し、秀治の申し出を承認した。
「ありがとう。では、今から今後の事に説明する」
秀治のその言葉に、皆は真剣な顔つきでその説明に耳を傾けるのだった。
洗脳魔法を解き、暫くしてレミリーが目を覚ます。
「お、目が覚めたか」
蓮斗はレミリーにそう声をかける。
「!?」
レミリーはその声に驚き、体を起こそうとする。だが、体に力が入らないため、体を起こせなかった。
「……そんなに怯えなくても大丈夫だよ。俺は君の敵じゃないから」
「……そんな言葉が信じられるとでも?」
レミリーは敵意をむき出しにした目でこちらを睨み付ける。
確かにこの状況で信じろ言われても信じられないだろう。それは当然の事だ。レミリーには壮絶なまでに残酷な過去があるのだから。だが、このままなのも良くないのだ。どうにかして、敵ではないことを伝えたいんだけど……。
蓮斗がそんな事を考えていると、川崎が口を開き、優しく諭すように言う。
「あなたは先ほどまで洗脳魔法にかかっていたの。それをここにいる蓮斗くんが解いてくれたの」
「!!」
レミリーは確かに覚えていた。自分が自分じゃなくなっていく様を。自分が自分を見ているような不思議な感覚。いくら止めてと叫んでもまるで聞こえなくて、自分の意思に反して行動する、まるで制御の聞かない自分の精神。いつしか諦め、心を閉ざした事。滅ぼされた自分の村、そして、自分をこんな風にしたーーー。
「……っ。助けられなかった……。誰一人救えなかった……。私が無力だったばかりに……」
レミリーはあの時の自分の無力さを思い出すと悔しくなり、歯を噛み締め、涙を流した。自分にもっと力があれば……。自分がもっと賢ければ……。そんな事を考えれば考えるほど涙が溢れて止まらなくなる。家族も何もかもあの日に全て失った。自分に他人を救える力などありはしないのだと一番痛感した出来事でもあった。
「くうぅぅ……」
涙を抑えようとしても逆に涙がどんどん増していくばかり。今、自分を上から見下ろしている三人は敵かもしれないのに。敵にそんな姿は見せられないのに、涙は止まってくれない。そんな事を思いながら私が悲しみにうちひしがれていると。
「……つらかったね。苦しかったね。あなたの経験してきた過去はあなたにしかわからない。私にはわかるよなんて綺麗事も言えない。……だけど、泣きたい時には泣いていいんだよ。我慢しなくていいんだよ」
女の人がそう言いながら私を優しく包むように胸元に私の顔が来るように抱き上げながら私の頭を撫でた。その瞬間、私のなかで何かが切れたような、そんな感じがした。
「うわあぁぁぁぁぁ……! 助けたかった……! 救いたかった……! 一つでも多くの命を!! それなのに私は……! 私は……!!」
レミリーは川崎の胸元に顔を埋めた状態で今まで心に溜めていたものを吐き出す。今まで洗脳魔法に支配されていたのだ。吐き出したくても吐き出せなかった感情が爆発するのも仕方のないことだと思う。
暫くして、レミリーは泣き止んだが、泣きつかれたのかそのまま寝てしまった。
「……ようやくこの騒動が落ち着いたな……」 蓮斗のこの言葉に二人は力なく頷いた。余程疲れているのだろう。それは、蓮斗も同様だった。そうやって蓮斗達が暫く休んでいると。
「おーい!!無事かー!?」
城門の方から聞き覚えのある声が聞こえてくる。俺達は声のした方に振り向くとそこには勇者高峰を中心としたクラスメイト達がいた。
「おう。こっちは無事だ。そっちは大丈夫か?」
クラスメイト達と対峙したのは、蓮斗達だが、怪我が無かったか一応聞く。もしかしたら、他の人に危害を加えた可能性もあるし。
「……ああ。こっちは特に何もない。……その、悪かったな。迷惑かけて」
高峰が代表して答える。というか覚えてたんだな……。
「いや、気にすんな。特にお前達から攻撃受けてないから」
蓮斗はまるで天を仰ぐようなポーズをとり、自分は無傷である事をアピールする。それを見た高峰はホッと息をつき、苦笑いを浮かべる。
「そ、そうか。それは良かった……。それで今後のことなんだけど……」
高峰がそう説明しようとすると秀治が口を挟む。
「それについてはこちらから説明させてもらうがいいか?」
「え……? ああ、よろしく」
秀治に遮られ、少し驚いたような悔しいようなそんなよくわからない表情になった高峰だったが、ここは確かに秀治に説明してもらった方がいいだろうと判断し、秀治の申し出を承認した。
「ありがとう。では、今から今後の事に説明する」
秀治のその言葉に、皆は真剣な顔つきでその説明に耳を傾けるのだった。
0
お気に入りに追加
138
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~
やみのよからす
ファンタジー
病院で病死したはずの月島玲子二十五歳大学研究職。目を覚ますと、そこに広がるは広大な森林原野、後ろに控えるは赤いドラゴン(ニヤニヤ)、そんな自分は十歳の体に(材料が足りませんでした?!)。
時は、自分が死んでからなんと三千万年。舞台は太陽系から離れて二百二十五光年の一惑星。新しく作られた超科学なミラクルボディーに生前の記憶を再生され、地球で言うところの中世後半くらいの王国で生きていくことになりました。
べつに、言ってはいけないこと、やってはいけないことは決まっていません。ドラゴンからは、好きに生きて良いよとお墨付き。実現するのは、はたは理想の社会かデストピアか?。
月島玲子、自重はしません!。…とは思いつつ、小市民な私では、そんな世界でも暮らしていく内に周囲にいろいろ絆されていくわけで。スーパー玲子の明日はどっちだ?
カクヨムにて一週間ほど先行投稿しています。
書き溜めは100話越えてます…
今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
異世界転生漫遊記
しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は
体を壊し亡くなってしまった。
それを哀れんだ神の手によって
主人公は異世界に転生することに
前世の失敗を繰り返さないように
今度は自由に楽しく生きていこうと
決める
主人公が転生した世界は
魔物が闊歩する世界!
それを知った主人公は幼い頃から
努力し続け、剣と魔法を習得する!
初めての作品です!
よろしくお願いします!
感想よろしくお願いします!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる