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1章
Part 41 『魔女・・・爆睡』
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袋に入れた日本刀を背中に背負って電車に乗るのは、なんだか、非常にドキドキした。冷静に考えてみれば、銃刀法違反だ。
バレたら捕まってしまうのではないかと考えてしまう。これって正式な手続きを踏んで作られているものなのだろうか・・・
そんなことを考えながらも特に何も起こることはなく、俺は、地元へと帰って来ることができた。
「なんか、凄い久しぶりに来た感じだ・・・」
「4日いませんでしたからね。」
「なんか、今になって疲れが出て来た気がする。」
ずっと電車でも気を張っていたせいだろうが、自分の街に着くと落ち着いてどっと疲労感が押し寄せて来る。
リドに連絡を入れると「了解。リューは適当に起こしておく」と言っていたのでそのまま店の方へ直行する。駅に近いので一旦家に帰るよりもそっちの方が早い。
リューの店に行くと店のテーブルで突っ伏して倒れているリューがいた。相変わらずである。この人リドが居なかったら死ぬんじゃないだろうか・・・
他には客はいないようで俺とサクヤとリューしかいない。リドは、どこかに出かけているのだろうか・・・
「起きてくれ。リュー」
揺さぶってみても小さく呻き声をあげるだけで一向に起きる気配がない。完全に熟睡している。
リド・・・全然起きてないよ・・・この人
身だしなみをしっかりしていれば、間違いなくトップクラスに美人なのだが見た目に気を使っているとは思えないその姿が全てを台無しにしている。
なんだろうか。名画が泥がかかってほとんど価値がなくなっているようなもったいなさだ。
「起きませんね。リューさん」
「まあ、この時間に起きてる方が珍しいのかもしれないけどな。」
しかし、リドが来るまで待つ訳にもいかないので何とかして彼女を起こさなければならない。
「リュー・・・ご飯だぞー」
試しに食べ物で釣ってみることにした。
「・・・・・・」
無反応
「あ、こんな所に500円玉が・・・」
金銭的誘惑
「・・・・・・」
無反応である。ピクリとも動かない。誘惑がきいていないのだろうか、それとも・・・
「・・・・・・死んでんじゃないの?」
「生きてますよ!? 」
サクヤが慌てて否定する。まあ、当然だ。普通に寝息も聞こえるし、動いているし・・・
「やーいダメ魔女ー。へっぽこ魔法使いー・・・社会不適ごっ!?」
耳元でそう囁いた瞬間、顔面にものすごい勢いで裏拳が顔面に飛んできて直撃する。尋常じゃない激痛で悶える。
こいつ本気で裏拳してきた・・・本当は起きてるんじゃないのか・・・?
おそるおそる様子を伺ってみるが相変わらず、裏拳を当てると何事もなかったかのように突っ伏している。
「悪口に関しては自動攻撃って・・・」
都合のいい睡眠である。言葉で起こすのは無理そうだなぁと思っているとふと、リューの脇腹が無防備になっていることに気がついた。
俺は特に深く考えずに指で軽く突いてみた。その瞬間、「ふゃん」という意外にも可愛い声をあげてリューの体が跳ねた。
おお、起きた。そうか、脇をつついてやれば良かったのか・・・そんな呑気なことを考えていた。その瞬間、鳩尾に鋭い拳が飛んでくる。内臓が抉られるような気持ち悪さに立っていられなくなる。
「君はいっぺん死ね! 女性の脇腹をつつくとか信じられない。いくら寛大な僕でも今のは許せない!」
今までの出来事に寛大な要素はあっただろうか・・・
「全く、僕じゃなかったら即逮捕からの死刑だよ。」
日本の刑法はそんなに重くねぇよ・・・と言おうとしたがかなりいい一撃をもらってしまったようで言葉を発するのすら苦痛だった。
「なんとか言ったらどうなんだい・・・。まったく・・・」
「・・・あ・・・あんたが・・・起きないせい・・・でしょ・・・」
なんとか声を振り絞って反論する。脇腹をつついた代償がこの一撃なのだとしたら重すぎる代償だ・・・正直、割に合わない。
「僕は基本夜型だって言ってるだろ? なのにこんな夕方に来て、寝てるに決まってるじゃないか! 何しに来たんだ!」
「あんたが依頼したもんを届けに来たんだろうが!」
そう言って刀を見せるとリューは、先ほどまでとは打って変わって落ち着いた様子で「・・・・・・これが、最期の一振りか・・・」と俺から刀を受け取る。
袋から刀を取り出して刀を抜いてしばらく調べるように色々と確認して刀をしまった。
「うん。確かに生涯最高の一振り受け取った。」
そういうと刀を服のダボついた長袖のTシャツに入れ始める。何をしているんだと思っていたのだが、すぐに刀がなくなってしまった。
魔法・・・?
「まあ、簡単な魔法さ。ものを収納する魔法だ。しまう時と出す時に少しは魔力を消費するけど、一昨日の晩御飯が思い出せなくなる程度の記憶消費で済むからコスパもいい。」
魔女は、理論上、考えつくことは全て可能であるが、それに見合った魔力を消費する。その魔力は、記憶に直結しており、魔力を使うと記憶が欠落するらしい。
前に話していたことを思い出しながら、流暢に説明するリューの話を聞いた。
物体を収納できる魔法は便利そうだなと思う。
「彼の最期はどうだった?」
「とても幸せそうにしていました。」
「そっか。峰に行ってもらって良かったよ。」
少し笑っていうリューの表情はどこか寂しそうに思えた。やはり、ウチガネさんの事は気にしていたようだ。
「でも、ウチガネさんは、リューさんにお礼を言いたがってました。ていうか、最期だって知ってたならなんで会いに行かなかったんですか?」
ずっと疑問だったのだ。何故、最期の仕事を自分ではなく俺に行かせたのだろうかと。
そう言うとリューは少し遠くを見ながら俺にこう言った。
「だって、仕事、朝からやるんだもん」
その答えは、納得だったけれど、台無しだった。
俺達の一つ目のお願いはこうして終わったのだった。
バレたら捕まってしまうのではないかと考えてしまう。これって正式な手続きを踏んで作られているものなのだろうか・・・
そんなことを考えながらも特に何も起こることはなく、俺は、地元へと帰って来ることができた。
「なんか、凄い久しぶりに来た感じだ・・・」
「4日いませんでしたからね。」
「なんか、今になって疲れが出て来た気がする。」
ずっと電車でも気を張っていたせいだろうが、自分の街に着くと落ち着いてどっと疲労感が押し寄せて来る。
リドに連絡を入れると「了解。リューは適当に起こしておく」と言っていたのでそのまま店の方へ直行する。駅に近いので一旦家に帰るよりもそっちの方が早い。
リューの店に行くと店のテーブルで突っ伏して倒れているリューがいた。相変わらずである。この人リドが居なかったら死ぬんじゃないだろうか・・・
他には客はいないようで俺とサクヤとリューしかいない。リドは、どこかに出かけているのだろうか・・・
「起きてくれ。リュー」
揺さぶってみても小さく呻き声をあげるだけで一向に起きる気配がない。完全に熟睡している。
リド・・・全然起きてないよ・・・この人
身だしなみをしっかりしていれば、間違いなくトップクラスに美人なのだが見た目に気を使っているとは思えないその姿が全てを台無しにしている。
なんだろうか。名画が泥がかかってほとんど価値がなくなっているようなもったいなさだ。
「起きませんね。リューさん」
「まあ、この時間に起きてる方が珍しいのかもしれないけどな。」
しかし、リドが来るまで待つ訳にもいかないので何とかして彼女を起こさなければならない。
「リュー・・・ご飯だぞー」
試しに食べ物で釣ってみることにした。
「・・・・・・」
無反応
「あ、こんな所に500円玉が・・・」
金銭的誘惑
「・・・・・・」
無反応である。ピクリとも動かない。誘惑がきいていないのだろうか、それとも・・・
「・・・・・・死んでんじゃないの?」
「生きてますよ!? 」
サクヤが慌てて否定する。まあ、当然だ。普通に寝息も聞こえるし、動いているし・・・
「やーいダメ魔女ー。へっぽこ魔法使いー・・・社会不適ごっ!?」
耳元でそう囁いた瞬間、顔面にものすごい勢いで裏拳が顔面に飛んできて直撃する。尋常じゃない激痛で悶える。
こいつ本気で裏拳してきた・・・本当は起きてるんじゃないのか・・・?
おそるおそる様子を伺ってみるが相変わらず、裏拳を当てると何事もなかったかのように突っ伏している。
「悪口に関しては自動攻撃って・・・」
都合のいい睡眠である。言葉で起こすのは無理そうだなぁと思っているとふと、リューの脇腹が無防備になっていることに気がついた。
俺は特に深く考えずに指で軽く突いてみた。その瞬間、「ふゃん」という意外にも可愛い声をあげてリューの体が跳ねた。
おお、起きた。そうか、脇をつついてやれば良かったのか・・・そんな呑気なことを考えていた。その瞬間、鳩尾に鋭い拳が飛んでくる。内臓が抉られるような気持ち悪さに立っていられなくなる。
「君はいっぺん死ね! 女性の脇腹をつつくとか信じられない。いくら寛大な僕でも今のは許せない!」
今までの出来事に寛大な要素はあっただろうか・・・
「全く、僕じゃなかったら即逮捕からの死刑だよ。」
日本の刑法はそんなに重くねぇよ・・・と言おうとしたがかなりいい一撃をもらってしまったようで言葉を発するのすら苦痛だった。
「なんとか言ったらどうなんだい・・・。まったく・・・」
「・・・あ・・・あんたが・・・起きないせい・・・でしょ・・・」
なんとか声を振り絞って反論する。脇腹をつついた代償がこの一撃なのだとしたら重すぎる代償だ・・・正直、割に合わない。
「僕は基本夜型だって言ってるだろ? なのにこんな夕方に来て、寝てるに決まってるじゃないか! 何しに来たんだ!」
「あんたが依頼したもんを届けに来たんだろうが!」
そう言って刀を見せるとリューは、先ほどまでとは打って変わって落ち着いた様子で「・・・・・・これが、最期の一振りか・・・」と俺から刀を受け取る。
袋から刀を取り出して刀を抜いてしばらく調べるように色々と確認して刀をしまった。
「うん。確かに生涯最高の一振り受け取った。」
そういうと刀を服のダボついた長袖のTシャツに入れ始める。何をしているんだと思っていたのだが、すぐに刀がなくなってしまった。
魔法・・・?
「まあ、簡単な魔法さ。ものを収納する魔法だ。しまう時と出す時に少しは魔力を消費するけど、一昨日の晩御飯が思い出せなくなる程度の記憶消費で済むからコスパもいい。」
魔女は、理論上、考えつくことは全て可能であるが、それに見合った魔力を消費する。その魔力は、記憶に直結しており、魔力を使うと記憶が欠落するらしい。
前に話していたことを思い出しながら、流暢に説明するリューの話を聞いた。
物体を収納できる魔法は便利そうだなと思う。
「彼の最期はどうだった?」
「とても幸せそうにしていました。」
「そっか。峰に行ってもらって良かったよ。」
少し笑っていうリューの表情はどこか寂しそうに思えた。やはり、ウチガネさんの事は気にしていたようだ。
「でも、ウチガネさんは、リューさんにお礼を言いたがってました。ていうか、最期だって知ってたならなんで会いに行かなかったんですか?」
ずっと疑問だったのだ。何故、最期の仕事を自分ではなく俺に行かせたのだろうかと。
そう言うとリューは少し遠くを見ながら俺にこう言った。
「だって、仕事、朝からやるんだもん」
その答えは、納得だったけれど、台無しだった。
俺達の一つ目のお願いはこうして終わったのだった。
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