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1章
Part 27 『天才の天才たる実力』
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食事をすませるとすぐに作業の続きが始まった。工程は先ほどとあまり変わらない。積み上げて一つの金属に纏めあげる。積み沸かし、そして、一つの塊の鉄になる。先ほどと違うのは、鉄の量が先ほど作っていた鉄よりも少ないという事だ。
小さく整えられた鉄が一つに纏まるとウチガネがもう一度炉に入れた。そして、鍛錬が始まる。コンが鉄を叩き、ウチガネは、鉄の向きや位置を変えて叩く場所を調節する。そして、折り曲げて重ねて叩いてを10回ほど繰り返すとオールのように伸びていた鉄の棒の部分を小さな金槌で切れ込みを入れ切り落とした。
しばらく、呆然と見守っていたのだが、少し心に余裕が出てきたのか観察する余裕が生まれてきていた。どうやら、金槌にも種類がいくつかあるようでその時々によって使い分けているようだった。コンが使う叩くための金槌は一般的なものだが、折りまげる時に使うウチガネの金槌は、先が細長くなっている。それを上から叩くことで切れ込みを入れていたようだ。
そんなことを分析しているとコンが俺の方まで近寄ってくる。ウチガネが鉄を炉にくべた間に水を飲見にきたのだろう。
ウチガネさんに水を持って行こうかと思い声をかけたが「大丈夫だ」と言われたのでそのまま観察を続けることにした。
「日向さん、すごいものが見れるっすよ。」
コンが唐突にそんなことを言った。
「え?」
何のことだ? 最初から俺には未知の体験だからどれも凄いのだが、何が起こるのだろうと尋ねようと思ったが、コンもそれ以上話す気がないのか、ウチガネさんの一挙手一投足を見逃さないように集中して見ていた。それを邪魔するのも申し訳なく、俺も口をつぐんだ。
炉に入れた鉄が赤くなるとウチガネさんが金槌を持って鉄を打った。その瞬間、光が弾け空気が変わった。
先ほどまでのピリピリとした緊張感だけではない。一度振り下ろすたびに、まるで突風でも起こったのような圧力を感じる。勿論、風などは吹いていない。しかし、踏ん張らなければ立っているのすら苦労するような・・・
ウチガネさんの動作に迷いはない。一回一回の工程が何十年、何百年という月日をかけても辿り着けるのかと疑問に思うほど精錬されていて、その迫力は、ただ、鉄を叩いているだけの動作とは思えない。
コンが打っていた時も無駄はないと思ったが、これは、それ以前の問題だった。
次元が違う。そう思った。目を離すことすら俺には既にできなくなっていた。有無を言わさない実力がそこには見える。
しかし、それだけではないように思う。確かにウチガネさんの動作には無駄がなく力強い。しかし、打つたびに輝くあれは何だろうか? 火花ではない白く眩い光は・・・
そう思っているとリューの言葉を思い出す。ウチガネさんは妖刀を作れるという言葉を
もしかすると、あの白い光は、普通の人間には見えない何かなのかもしれない。その知識のない俺にはそれが何なのか具体的な説明が出来ない。
あっという間に長方形に形の整えられた鉄は、先ほど作っていたU字型の鉄にまるで最初から一緒に作ったようにぴったりとハマった。
それを確認するとコンが近寄っていって金槌で短く整えられた鉄を更に4分の3ほどの大きさに切断する。
その間に炉で熱されていたU字型の鉄に嵌め込み叩く。皮鉄と言っていたのはこうやって挟むからなのかと今更ながら理解した。
ある程度叩くと再び炉に入れてしまう。まだまだ、日本刀というには全く形が違う。いったいどれだけの工程を重なれば、出来るのだろうか。
少し、俺自身もその作業に興味を持ち始めていたのだった。
小さく整えられた鉄が一つに纏まるとウチガネがもう一度炉に入れた。そして、鍛錬が始まる。コンが鉄を叩き、ウチガネは、鉄の向きや位置を変えて叩く場所を調節する。そして、折り曲げて重ねて叩いてを10回ほど繰り返すとオールのように伸びていた鉄の棒の部分を小さな金槌で切れ込みを入れ切り落とした。
しばらく、呆然と見守っていたのだが、少し心に余裕が出てきたのか観察する余裕が生まれてきていた。どうやら、金槌にも種類がいくつかあるようでその時々によって使い分けているようだった。コンが使う叩くための金槌は一般的なものだが、折りまげる時に使うウチガネの金槌は、先が細長くなっている。それを上から叩くことで切れ込みを入れていたようだ。
そんなことを分析しているとコンが俺の方まで近寄ってくる。ウチガネが鉄を炉にくべた間に水を飲見にきたのだろう。
ウチガネさんに水を持って行こうかと思い声をかけたが「大丈夫だ」と言われたのでそのまま観察を続けることにした。
「日向さん、すごいものが見れるっすよ。」
コンが唐突にそんなことを言った。
「え?」
何のことだ? 最初から俺には未知の体験だからどれも凄いのだが、何が起こるのだろうと尋ねようと思ったが、コンもそれ以上話す気がないのか、ウチガネさんの一挙手一投足を見逃さないように集中して見ていた。それを邪魔するのも申し訳なく、俺も口をつぐんだ。
炉に入れた鉄が赤くなるとウチガネさんが金槌を持って鉄を打った。その瞬間、光が弾け空気が変わった。
先ほどまでのピリピリとした緊張感だけではない。一度振り下ろすたびに、まるで突風でも起こったのような圧力を感じる。勿論、風などは吹いていない。しかし、踏ん張らなければ立っているのすら苦労するような・・・
ウチガネさんの動作に迷いはない。一回一回の工程が何十年、何百年という月日をかけても辿り着けるのかと疑問に思うほど精錬されていて、その迫力は、ただ、鉄を叩いているだけの動作とは思えない。
コンが打っていた時も無駄はないと思ったが、これは、それ以前の問題だった。
次元が違う。そう思った。目を離すことすら俺には既にできなくなっていた。有無を言わさない実力がそこには見える。
しかし、それだけではないように思う。確かにウチガネさんの動作には無駄がなく力強い。しかし、打つたびに輝くあれは何だろうか? 火花ではない白く眩い光は・・・
そう思っているとリューの言葉を思い出す。ウチガネさんは妖刀を作れるという言葉を
もしかすると、あの白い光は、普通の人間には見えない何かなのかもしれない。その知識のない俺にはそれが何なのか具体的な説明が出来ない。
あっという間に長方形に形の整えられた鉄は、先ほど作っていたU字型の鉄にまるで最初から一緒に作ったようにぴったりとハマった。
それを確認するとコンが近寄っていって金槌で短く整えられた鉄を更に4分の3ほどの大きさに切断する。
その間に炉で熱されていたU字型の鉄に嵌め込み叩く。皮鉄と言っていたのはこうやって挟むからなのかと今更ながら理解した。
ある程度叩くと再び炉に入れてしまう。まだまだ、日本刀というには全く形が違う。いったいどれだけの工程を重なれば、出来るのだろうか。
少し、俺自身もその作業に興味を持ち始めていたのだった。
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