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4章
Part 296『ドーピング』
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突き刺した足には痛みはない。切れ味の鈍いこの刀を突き刺したりしたら普通なら、血が出てきそうなものだが、全く出ていない。
足に突き刺さったというのに、一切の手応えはなかった。
ウチガネさんのいう使い方が本当ならこれが正解のはずだ。
刀でありながら斬れない刀、しかも、斬る対象が自分であるという、刀としては、おおよそ、邪道としか言いようがない。
刀の設計コンセプトからそもそも離れてしまっているこの刀は、ウチガネさんとしても隠しておきたい代物だったのかもしれない。
一体どんな変化が起こるのか。俺は、内心で期待しながら自分の体を見直した。
しかし、肉体に何か変化が起こった様な感覚が一切ない。劇的に何かが変わるのかと期待していたのだが、どうやら目に見えて凄まじい効力が出る訳ではないらしい。
「少しがっかりではあるけど・・・・・・ていうか、この刺した妖刀抜いても大丈夫だよな? 勢いで刺したけど、抜いた瞬間血が出るなんて事は・・・・・・」
ゆっくりと刀に力を込めて引き抜く。やはり、痛みはなく刀傷も存在しない。
しかし、刀を抜き切った瞬間、まるで頭をアイスピックで突き刺されているかの様な異様な頭痛が走った。
思わず頭を抑えるが、すぐに痛みは引いていく。
「な、なんで、足に突き刺したのに頭が痛くなるんだよ・・・・・・」
恨み言を呟きながら、刀を置いて暇つぶしに別の作品でも作ろうかと思った。
手遊び程度で何か出来ないか。そう思いながら簡単な作品を作り始める。
そして、気が付いた。自分の思い通りに体が動くことに。
普段なら集中してもやはり体の動かし方には僅かにズレがある。作品も自分のイメージと現実の差がはっきりと現れる。
修練の意義とは、そのイメージと現実の差をどれだけ埋めることができるかという部分が大きい。
今は、そのズレがほとんどない。極限まで集中出来たとしてもこうはならない。自分の手の動きをミリ単位で調節できるような気すらする。
もしかして、これが妖刀の効果なのか? 肉体の感覚を鋭敏にするという。
圧倒いう間にそれこそ、10分ほどで完成した小さなサクヤの人形を見て俺は、自分でも驚いていた。
明らかに俺が今まで作った作品の中で一番に完成度が高い。
少しデフォルメされたデザインではあるそれは、売り物になりそうなほどに精巧に作られていて、プロが作ったような代物だ。
それこそ、もっと集中すれば、篝さんの作品に迫るものが作れるような気すらしてくる。
「いや、流石にそれは言い過ぎか? しかし、この刀を使えば、作品がすぐに量産ーーー」
そう呟いた矢先だった。急激な眠気に瞼が重くなる。抗いようのない本能の欲望に支配され、倒れこむように意識を手放してしまった。
足に突き刺さったというのに、一切の手応えはなかった。
ウチガネさんのいう使い方が本当ならこれが正解のはずだ。
刀でありながら斬れない刀、しかも、斬る対象が自分であるという、刀としては、おおよそ、邪道としか言いようがない。
刀の設計コンセプトからそもそも離れてしまっているこの刀は、ウチガネさんとしても隠しておきたい代物だったのかもしれない。
一体どんな変化が起こるのか。俺は、内心で期待しながら自分の体を見直した。
しかし、肉体に何か変化が起こった様な感覚が一切ない。劇的に何かが変わるのかと期待していたのだが、どうやら目に見えて凄まじい効力が出る訳ではないらしい。
「少しがっかりではあるけど・・・・・・ていうか、この刺した妖刀抜いても大丈夫だよな? 勢いで刺したけど、抜いた瞬間血が出るなんて事は・・・・・・」
ゆっくりと刀に力を込めて引き抜く。やはり、痛みはなく刀傷も存在しない。
しかし、刀を抜き切った瞬間、まるで頭をアイスピックで突き刺されているかの様な異様な頭痛が走った。
思わず頭を抑えるが、すぐに痛みは引いていく。
「な、なんで、足に突き刺したのに頭が痛くなるんだよ・・・・・・」
恨み言を呟きながら、刀を置いて暇つぶしに別の作品でも作ろうかと思った。
手遊び程度で何か出来ないか。そう思いながら簡単な作品を作り始める。
そして、気が付いた。自分の思い通りに体が動くことに。
普段なら集中してもやはり体の動かし方には僅かにズレがある。作品も自分のイメージと現実の差がはっきりと現れる。
修練の意義とは、そのイメージと現実の差をどれだけ埋めることができるかという部分が大きい。
今は、そのズレがほとんどない。極限まで集中出来たとしてもこうはならない。自分の手の動きをミリ単位で調節できるような気すらする。
もしかして、これが妖刀の効果なのか? 肉体の感覚を鋭敏にするという。
圧倒いう間にそれこそ、10分ほどで完成した小さなサクヤの人形を見て俺は、自分でも驚いていた。
明らかに俺が今まで作った作品の中で一番に完成度が高い。
少しデフォルメされたデザインではあるそれは、売り物になりそうなほどに精巧に作られていて、プロが作ったような代物だ。
それこそ、もっと集中すれば、篝さんの作品に迫るものが作れるような気すらしてくる。
「いや、流石にそれは言い過ぎか? しかし、この刀を使えば、作品がすぐに量産ーーー」
そう呟いた矢先だった。急激な眠気に瞼が重くなる。抗いようのない本能の欲望に支配され、倒れこむように意識を手放してしまった。
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