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4章
Part 274『試行錯誤』
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妖刀もどきという代物である以上は、なんらかの効力があるのかと思っているとコンは、刀を少し離れた大きな岩に向ける。その距離は、三メートルほどで普通に考えれば、当たるはずがない。
そして、素振りでもするように片手で刀を振るった。そして、次の瞬間、パキンと刀の刃が砕けた。
ひとりでに壊れ地面に落ちた刀の破片を見ながらコンは「やっぱ脆いっすね・・・・・・」と呟いた。
何が起こったのかよく分からなかった。しかし、素振りで壊れる刀なんて素人でも粗悪品だと分かる。
「失敗作なのか?」
思わず俺が尋ねると「いや、一応、狙い通りに作れてるっすよ。」とコンが岩の方に指をさす。
岩を見てみるとそこには、はっきりと刀傷が岩を縦になぞるように入っていた。
「距離をある程度無視して刀を当てれる妖刀っす。試作品っすから、改良の余地はあるっすけど」
つまり、素振りに思えたあの動作で岩に刀が当たっていた。
「魔石を刀に練り込んだんっすけど、柔らかすぎて少し硬いものを斬ろうとすると砕けるんっすよね。」
魔力を秘めた石、それ自体に回路を書き込むことによって魔法を発動させる魔道具に近いシステムのようだ。
「一振りで砕けるような武器は、売り物にならないっすね。」
「でも、凄いじゃないか! 妖刀の代わりにこんな代案を考えるなんて・・・・・・」
「そうっすか? まあ、魔石自体がこの世界じゃ、中々、手に入らないっすからね。一度、手に入れる機会があれば使ってみたいとは思ってたんっすけど・・・・・・」
「魔道具みたいに回路を組んでるのか?」
「試作品っすからとりあえずは、鋼に練り込んだだけっす。ただ、回路を組むってなると余計に脆くなる気がするんっすよね。鍛錬が出来ないっすから」
不純物が混ざっているせいで通常の刀よりも明らかに脆くなっているということだろうか、つまり、強度さえ上げることが出来れば武器として使える代物になるという事だ。
「呪術で補強してやれば、武器として使えるな。」
俺の思いつきにコンは、「それは良いっすね! 強度を上げる呪いとかを使えば、出来るかもしれないっす!」と興奮したように俺の手を両手で掴む。
「峰さんが呪いを覚えたら俺の作った妖刀もどきに呪いをかけて欲しいっすよ。」
「まあ、それぐらいなら、やるけど・・・・・・」
「それまでは、俺ももうちょっと試行錯誤してみるっすよ! いくら呪いで補強してもここまで脆いと話にならないっすからね。」
コンは光明が見えたようでやる気に満ちた表情を浮かべている。実際、何気ないことだったが、刀鍛冶として生活してきたコンには呪いをかけて作品を補強するというアイデアは生まれなかったのかもしれない。
それに二人で何かを作る作業というのもそれはそれで面白そうではある。
しかし、それ以上に、ウチガネさんに近づこうと努力して確かな成果を出しているコンと呪術の一つも使えない俺をついつい比べてしまう。
何かをしなければという焦りは、どんどん大きくなっていく。
そして、素振りでもするように片手で刀を振るった。そして、次の瞬間、パキンと刀の刃が砕けた。
ひとりでに壊れ地面に落ちた刀の破片を見ながらコンは「やっぱ脆いっすね・・・・・・」と呟いた。
何が起こったのかよく分からなかった。しかし、素振りで壊れる刀なんて素人でも粗悪品だと分かる。
「失敗作なのか?」
思わず俺が尋ねると「いや、一応、狙い通りに作れてるっすよ。」とコンが岩の方に指をさす。
岩を見てみるとそこには、はっきりと刀傷が岩を縦になぞるように入っていた。
「距離をある程度無視して刀を当てれる妖刀っす。試作品っすから、改良の余地はあるっすけど」
つまり、素振りに思えたあの動作で岩に刀が当たっていた。
「魔石を刀に練り込んだんっすけど、柔らかすぎて少し硬いものを斬ろうとすると砕けるんっすよね。」
魔力を秘めた石、それ自体に回路を書き込むことによって魔法を発動させる魔道具に近いシステムのようだ。
「一振りで砕けるような武器は、売り物にならないっすね。」
「でも、凄いじゃないか! 妖刀の代わりにこんな代案を考えるなんて・・・・・・」
「そうっすか? まあ、魔石自体がこの世界じゃ、中々、手に入らないっすからね。一度、手に入れる機会があれば使ってみたいとは思ってたんっすけど・・・・・・」
「魔道具みたいに回路を組んでるのか?」
「試作品っすからとりあえずは、鋼に練り込んだだけっす。ただ、回路を組むってなると余計に脆くなる気がするんっすよね。鍛錬が出来ないっすから」
不純物が混ざっているせいで通常の刀よりも明らかに脆くなっているということだろうか、つまり、強度さえ上げることが出来れば武器として使える代物になるという事だ。
「呪術で補強してやれば、武器として使えるな。」
俺の思いつきにコンは、「それは良いっすね! 強度を上げる呪いとかを使えば、出来るかもしれないっす!」と興奮したように俺の手を両手で掴む。
「峰さんが呪いを覚えたら俺の作った妖刀もどきに呪いをかけて欲しいっすよ。」
「まあ、それぐらいなら、やるけど・・・・・・」
「それまでは、俺ももうちょっと試行錯誤してみるっすよ! いくら呪いで補強してもここまで脆いと話にならないっすからね。」
コンは光明が見えたようでやる気に満ちた表情を浮かべている。実際、何気ないことだったが、刀鍛冶として生活してきたコンには呪いをかけて作品を補強するというアイデアは生まれなかったのかもしれない。
それに二人で何かを作る作業というのもそれはそれで面白そうではある。
しかし、それ以上に、ウチガネさんに近づこうと努力して確かな成果を出しているコンと呪術の一つも使えない俺をついつい比べてしまう。
何かをしなければという焦りは、どんどん大きくなっていく。
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