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4章
Part 233『別人』
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家に帰ってから俺は、強烈な違和感に襲われた。
俺の部屋の横に天井いっぱいまで積み上げられたダンボールの壁が出来ていた。ダンボールの壁は、通路を完全に封鎖していて奥へと続く通路を完全に塞いでいた。
そして、ダンボールには、大きく赤いマジックで『来たら殺す』という文字がいくつも書かれていて、もはや、なにかの呪いのようだった。
この壁の向こうには、妹の部屋があったはずなのだが・・・・・・
「おーい、春香? いるのかー?」
俺が声をかけるとダンボールの側面の一部分が開いた。どうやら、カッターで覗けるようにしている様である。
覗き穴の 向こうから春香の明らかに冷たい声音で「何?」という声が聞こえてくる。
何故か異様に警戒されている。これは一体どういうことなのだろうか。
「なんで、こんなバリケード作ってるんだ? 秘密基地か?」
「はぁ? ただでさえ、最近、意味わかんないのに、さらに意味わかんなくなったの?」
「なんで、そんなピリピリしてんだ。お前・・・・・・」
俺の反応を見て春香は、バリケードの一部を崩してこちらの様子を伺うように顔を出した。
そして、俺を数秒観察すると不思議そうな表情を浮かべて「・・・・・・あれ? いつものお兄ちゃんに戻ってる。」と呟いた。
「何を言ってるんだ?」
「2日前ぐらいから様子がおかしかったじゃん! ていうか、あれは別人だった。」
そう言われてギクリとする。もしかして、ドッペルゲンガーが悪さをしたのではないだろうか。
「俺、何か変なこと言ったか?」
「なんか、キラキラしてて寒かった。存在が」
「キラキラしてたって・・・・・・」
いまいち、ピンとこないその表現に思わず首を傾げてしまう。
「朝起きて、顔を合わせたらなんか、凄い爽やかな笑顔で『おはよう。春香、今日も可愛いね。』って言ってきたり、キモいって言っても『こーら、可愛いんだからそんな汚い言葉使っちゃダメだよ。』って、私の唇に人差し指を付けてウインクしてきて・・・・・・」
気持ち悪いものを思い出すように春香は身震いする。
「・・・・・・」
俺もその話に呆然とする。誰だ? そいつ・・・・・・? としか言いようがない。
あのドッペルゲンガー全く、ドッペルゲンガーしてないじゃねぇか!
俺は内心で怒りを感じながらもここで自分ではないという訳にはいかない事も分かっている。
「最近、課題のレポートとか色々あってさ。寝不足だったんだ。もう、大丈夫だから、安心してくれ。」
「いや、そういう次元じゃないし、別人だったし」
春香は、俺の言い訳を全く信用していないようである。まあ、普段の俺がそんな事をする訳がないので当然と言えば当然だ。
「いやいや、それこそ、怖いだろ。俺と同じ姿の別人がいるって事なんだぞ? ありえないだろ。そんな事」
「それは・・・・・・そうなんだけど・・・・・・でも、キラキラしてたし・・・・・・」
「その表現はどういう事なんだ・・・・・・いや、普段の俺がキラキラしてないって事なんだろうけど」
「お兄ちゃんがキラキラしてる訳ないじゃん。きのこ生えてそうな淀んだ雰囲気なのに」
「相変わらず、俺の評価が極端に低いよな!?」
ただ、このやり取りも少し久しぶりな感じもする。
「高くなる要素がないでしょ。ボッチで、独り言しょっちゅう言ってて、友達をお金で雇って、あまりにも友達出来ないから、自分よりもかなり年下の子供を友達にしてるような兄を」
「いや、誰だよ。そいつ!」
ツララのイメージも明らかに別人だったが、春香の評価も別人以外の何者でもない。ていうか、春香は、まだ俺が友達を雇っていると思い込んでるのか。どんだけ、こいつは、俺を悲しい生き物にしたいんだ。
「自分で言うのもなんだが、俺は、結構、友達多いからな。」
「へー」
「あからさまに聞く気ないのやめろよ!」
どうでも良さそうに電話をいじり始めた春香は「いや、まあ、別に、お兄ちゃんの事はどうでも良いし、普通に戻ったんなら良いや。私、寝るから。」と欠伸をしながら自分の部屋へと帰っていった。
相変わらず、冷めるのが早い。そういうお年頃という事だろうか。
ポツンと残された俺は、溜息を吐いて自分の部屋へと戻って眠ることにした。
大学・・・・・・大丈夫かな・・・・・・。俺は、ドッペルゲンガーの大学生活に不安を感じながら眠りについた。
俺の部屋の横に天井いっぱいまで積み上げられたダンボールの壁が出来ていた。ダンボールの壁は、通路を完全に封鎖していて奥へと続く通路を完全に塞いでいた。
そして、ダンボールには、大きく赤いマジックで『来たら殺す』という文字がいくつも書かれていて、もはや、なにかの呪いのようだった。
この壁の向こうには、妹の部屋があったはずなのだが・・・・・・
「おーい、春香? いるのかー?」
俺が声をかけるとダンボールの側面の一部分が開いた。どうやら、カッターで覗けるようにしている様である。
覗き穴の 向こうから春香の明らかに冷たい声音で「何?」という声が聞こえてくる。
何故か異様に警戒されている。これは一体どういうことなのだろうか。
「なんで、こんなバリケード作ってるんだ? 秘密基地か?」
「はぁ? ただでさえ、最近、意味わかんないのに、さらに意味わかんなくなったの?」
「なんで、そんなピリピリしてんだ。お前・・・・・・」
俺の反応を見て春香は、バリケードの一部を崩してこちらの様子を伺うように顔を出した。
そして、俺を数秒観察すると不思議そうな表情を浮かべて「・・・・・・あれ? いつものお兄ちゃんに戻ってる。」と呟いた。
「何を言ってるんだ?」
「2日前ぐらいから様子がおかしかったじゃん! ていうか、あれは別人だった。」
そう言われてギクリとする。もしかして、ドッペルゲンガーが悪さをしたのではないだろうか。
「俺、何か変なこと言ったか?」
「なんか、キラキラしてて寒かった。存在が」
「キラキラしてたって・・・・・・」
いまいち、ピンとこないその表現に思わず首を傾げてしまう。
「朝起きて、顔を合わせたらなんか、凄い爽やかな笑顔で『おはよう。春香、今日も可愛いね。』って言ってきたり、キモいって言っても『こーら、可愛いんだからそんな汚い言葉使っちゃダメだよ。』って、私の唇に人差し指を付けてウインクしてきて・・・・・・」
気持ち悪いものを思い出すように春香は身震いする。
「・・・・・・」
俺もその話に呆然とする。誰だ? そいつ・・・・・・? としか言いようがない。
あのドッペルゲンガー全く、ドッペルゲンガーしてないじゃねぇか!
俺は内心で怒りを感じながらもここで自分ではないという訳にはいかない事も分かっている。
「最近、課題のレポートとか色々あってさ。寝不足だったんだ。もう、大丈夫だから、安心してくれ。」
「いや、そういう次元じゃないし、別人だったし」
春香は、俺の言い訳を全く信用していないようである。まあ、普段の俺がそんな事をする訳がないので当然と言えば当然だ。
「いやいや、それこそ、怖いだろ。俺と同じ姿の別人がいるって事なんだぞ? ありえないだろ。そんな事」
「それは・・・・・・そうなんだけど・・・・・・でも、キラキラしてたし・・・・・・」
「その表現はどういう事なんだ・・・・・・いや、普段の俺がキラキラしてないって事なんだろうけど」
「お兄ちゃんがキラキラしてる訳ないじゃん。きのこ生えてそうな淀んだ雰囲気なのに」
「相変わらず、俺の評価が極端に低いよな!?」
ただ、このやり取りも少し久しぶりな感じもする。
「高くなる要素がないでしょ。ボッチで、独り言しょっちゅう言ってて、友達をお金で雇って、あまりにも友達出来ないから、自分よりもかなり年下の子供を友達にしてるような兄を」
「いや、誰だよ。そいつ!」
ツララのイメージも明らかに別人だったが、春香の評価も別人以外の何者でもない。ていうか、春香は、まだ俺が友達を雇っていると思い込んでるのか。どんだけ、こいつは、俺を悲しい生き物にしたいんだ。
「自分で言うのもなんだが、俺は、結構、友達多いからな。」
「へー」
「あからさまに聞く気ないのやめろよ!」
どうでも良さそうに電話をいじり始めた春香は「いや、まあ、別に、お兄ちゃんの事はどうでも良いし、普通に戻ったんなら良いや。私、寝るから。」と欠伸をしながら自分の部屋へと帰っていった。
相変わらず、冷めるのが早い。そういうお年頃という事だろうか。
ポツンと残された俺は、溜息を吐いて自分の部屋へと戻って眠ることにした。
大学・・・・・・大丈夫かな・・・・・・。俺は、ドッペルゲンガーの大学生活に不安を感じながら眠りについた。
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