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3章
Part 221『首輪』
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事件が終了してから俺とレンジは一度、狐月の方に連れていかれた。その間に色々と夢に見たサツキの話をレンジにした。
レンジは、それを黙って聞いて最後には「最後くらい頼ってくれても良かったのにな。」と少し寂しそうに呟くのだった。
ムゲツは、「バレるわけにはいかなかったんですよ。だから、例え信頼のできる側近でも話せなかったんです。あなたを頼りなく思ってのことではないですよ」と何気ない口調で付け足した。
サツキを封印した人間は冬夜ではなかった。けれど、冬夜は「最期まで当主でした。」と言っていた。
「冬夜は、記憶を次の世代に移す呪いを持っているんです。」
ムゲツは、不思議がる俺の姿を察したのかそう教えてくれた。つまり、過去の別の記憶を引き継いでいるという事でサツキを封印した人間の記憶を持っていてもおかしくない。確かに冷静に考えてみれば、あれだけ卓越した技術を短命な人間が身につけることが出来るとは思えないので、それ自体は納得だった。
狐月の屋敷は、平屋の広い豪邸の鬼島と違いどちらかというと日本の城のような作りであった。瓦が敷かれた屋根には、狐が左右に日本の鯱鉾の様に設置されている。
ムゲツに客間の様な所に通され、少し待っていてください。と放置され、しばらくするとムゲツは、お待たせしました。と着替えて現れた。
相変わらず、際どい扇情的な服装ではある。胸元が大胆に開かれていて、谷間が見えるので目のやり場に困るほどだ。
「さて、観察処分とはいえ、周囲からは、餓狼衆に何の罰もないは、体裁が悪いのでこれをつけてください。」
そう言ってムゲツは、かなり大きめの首輪を取り出してレンジに差し出した。革でできた黒い首輪にいくつもの模様が描かれていて、大柄なレンジが付けてもかなりゆとりのある。経験からそれが呪いの品だということは分かった。
レンジは、それを何も言わずに付けると「これはなんだ?」とムゲツに尋ねる。
「悪さをしたら首を切り落とす魔法具です。」
「はぁ!?」
「正確には私の意思で首を切り落とす魔法具です。」
「いや、もっと悪質になったんだが・・・・・・」
平然と言い放つムゲツにレンジは、恐ろしいものを見るような目を向ける。
「目に見えてわかる罰が周囲にあるのとないのとでは違うでしょう。大丈夫です。悪さをしなければ使うことはありませんよ。」
「・・・・・・わかった。」
レンジは、少しムゲツを睨むが、自分が最大に譲歩されている事に気付いたのか特に反論する事なく頷いた。
「さて、峰さんでしたっけ?」
「え、俺にも首輪が・・・・・・」
「いえ、お望みでしたらありますけど・・・・・・そうではなく、お迎えです。」
その声とほぼ同時だろうか、ムゲツの背後の襖がゆっくりと開いて、真冬さんが現れた。なぜか凄い笑顔だ。
これは、罰の方が心臓に良かったのかもしれない。そう思うのだった。
レンジは、それを黙って聞いて最後には「最後くらい頼ってくれても良かったのにな。」と少し寂しそうに呟くのだった。
ムゲツは、「バレるわけにはいかなかったんですよ。だから、例え信頼のできる側近でも話せなかったんです。あなたを頼りなく思ってのことではないですよ」と何気ない口調で付け足した。
サツキを封印した人間は冬夜ではなかった。けれど、冬夜は「最期まで当主でした。」と言っていた。
「冬夜は、記憶を次の世代に移す呪いを持っているんです。」
ムゲツは、不思議がる俺の姿を察したのかそう教えてくれた。つまり、過去の別の記憶を引き継いでいるという事でサツキを封印した人間の記憶を持っていてもおかしくない。確かに冷静に考えてみれば、あれだけ卓越した技術を短命な人間が身につけることが出来るとは思えないので、それ自体は納得だった。
狐月の屋敷は、平屋の広い豪邸の鬼島と違いどちらかというと日本の城のような作りであった。瓦が敷かれた屋根には、狐が左右に日本の鯱鉾の様に設置されている。
ムゲツに客間の様な所に通され、少し待っていてください。と放置され、しばらくするとムゲツは、お待たせしました。と着替えて現れた。
相変わらず、際どい扇情的な服装ではある。胸元が大胆に開かれていて、谷間が見えるので目のやり場に困るほどだ。
「さて、観察処分とはいえ、周囲からは、餓狼衆に何の罰もないは、体裁が悪いのでこれをつけてください。」
そう言ってムゲツは、かなり大きめの首輪を取り出してレンジに差し出した。革でできた黒い首輪にいくつもの模様が描かれていて、大柄なレンジが付けてもかなりゆとりのある。経験からそれが呪いの品だということは分かった。
レンジは、それを何も言わずに付けると「これはなんだ?」とムゲツに尋ねる。
「悪さをしたら首を切り落とす魔法具です。」
「はぁ!?」
「正確には私の意思で首を切り落とす魔法具です。」
「いや、もっと悪質になったんだが・・・・・・」
平然と言い放つムゲツにレンジは、恐ろしいものを見るような目を向ける。
「目に見えてわかる罰が周囲にあるのとないのとでは違うでしょう。大丈夫です。悪さをしなければ使うことはありませんよ。」
「・・・・・・わかった。」
レンジは、少しムゲツを睨むが、自分が最大に譲歩されている事に気付いたのか特に反論する事なく頷いた。
「さて、峰さんでしたっけ?」
「え、俺にも首輪が・・・・・・」
「いえ、お望みでしたらありますけど・・・・・・そうではなく、お迎えです。」
その声とほぼ同時だろうか、ムゲツの背後の襖がゆっくりと開いて、真冬さんが現れた。なぜか凄い笑顔だ。
これは、罰の方が心臓に良かったのかもしれない。そう思うのだった。
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