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3章
Part 207 『戦わずして勝つ』
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奇襲、それは確かに勝負においては有効な手ではあるが、目的が戦闘であればという話である。
今回における最大の選択肢はいかに戦わないかという一点である。
人間である自分とレンジの二人では、おそらく勝てない。奇襲も失敗するだろうとレンジは言っていた。それぐらいの実力差がある相手であれば、勝負を挑んだ時点で敗北である。
レンジに抱えられながら森を駆け抜ける。凄まじい速度で動く視界に軽い不安を感じるが仕方がない事である。
30分という時間でどれだけ目的地に近づき相手から距離を取れるかというのが今回の勝負の鍵であった。
今回の作戦は、鏡の存在が鬼島側から伝えられていれば、そもそも成立しない作戦ではあったが、追っ手が来ない事を見るとどうやら成功だったらしい。
俺は、地図を見ながら二人の位置を観察する。レンジのコピーの消滅に驚き、周囲を捜索している様である。
位置しかこの地図は教えてくれないのでどういう状況かは分からないがこちらの位置はバレてはいないはずだ。
ある程度、距離を取ると突然、レンジは、立ち止まる。小脇に抱えられている俺には、よく見えないが何かの木の実を取っている様だった。
「どうかした?」
「ああ、この木の実は、臭い消しの効果がある。」
そう言ってレンジは、俺を地面に立たせると木の実を差し出す。赤い皮に黄色の水玉の模様の入った奇抜な色の木の実でお世辞にも美味しそうには見えなかった。握りこぶし程のサイズのどうするのかと思案していると横でレンジが木の実を握りつぶして、吹き出した汁を身体中に浴びていた。
俺も試してみるがどうやっても硬くて握り潰すことが出来ず、見かねたレンジが俺の木の実を潰して振りかける。
「乱戦の頃は、獣の妖怪の追っ手を誤魔化すのによく使った。効果は、保証する。」
「体がベタつくけど背に腹は変えられないか・・・・・・」
俺がそう言っていると再びレンジに抱えられた。干された布団の様に伸びているのも、実はお腹に負担がかかって辛い。けれど、辛さよりも今は目的地に着くことが優先だ。
速度も勢いを増す。足場の悪い森なのにそんな事を気にした様子もないスピードである。
「もうすぐ着くぞ。」
もうすぐ、サツキという妖狐が封印されている場所に着くのか。一体、どんな妖怪なのだろうか。
しかし、レンジは、再び動きを止める。その視線の向こうにはムゲツと冬夜が立っていたのだ。
今回における最大の選択肢はいかに戦わないかという一点である。
人間である自分とレンジの二人では、おそらく勝てない。奇襲も失敗するだろうとレンジは言っていた。それぐらいの実力差がある相手であれば、勝負を挑んだ時点で敗北である。
レンジに抱えられながら森を駆け抜ける。凄まじい速度で動く視界に軽い不安を感じるが仕方がない事である。
30分という時間でどれだけ目的地に近づき相手から距離を取れるかというのが今回の勝負の鍵であった。
今回の作戦は、鏡の存在が鬼島側から伝えられていれば、そもそも成立しない作戦ではあったが、追っ手が来ない事を見るとどうやら成功だったらしい。
俺は、地図を見ながら二人の位置を観察する。レンジのコピーの消滅に驚き、周囲を捜索している様である。
位置しかこの地図は教えてくれないのでどういう状況かは分からないがこちらの位置はバレてはいないはずだ。
ある程度、距離を取ると突然、レンジは、立ち止まる。小脇に抱えられている俺には、よく見えないが何かの木の実を取っている様だった。
「どうかした?」
「ああ、この木の実は、臭い消しの効果がある。」
そう言ってレンジは、俺を地面に立たせると木の実を差し出す。赤い皮に黄色の水玉の模様の入った奇抜な色の木の実でお世辞にも美味しそうには見えなかった。握りこぶし程のサイズのどうするのかと思案していると横でレンジが木の実を握りつぶして、吹き出した汁を身体中に浴びていた。
俺も試してみるがどうやっても硬くて握り潰すことが出来ず、見かねたレンジが俺の木の実を潰して振りかける。
「乱戦の頃は、獣の妖怪の追っ手を誤魔化すのによく使った。効果は、保証する。」
「体がベタつくけど背に腹は変えられないか・・・・・・」
俺がそう言っていると再びレンジに抱えられた。干された布団の様に伸びているのも、実はお腹に負担がかかって辛い。けれど、辛さよりも今は目的地に着くことが優先だ。
速度も勢いを増す。足場の悪い森なのにそんな事を気にした様子もないスピードである。
「もうすぐ着くぞ。」
もうすぐ、サツキという妖狐が封印されている場所に着くのか。一体、どんな妖怪なのだろうか。
しかし、レンジは、再び動きを止める。その視線の向こうにはムゲツと冬夜が立っていたのだ。
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