194 / 352
3章
Part 193『空想と現実』
しおりを挟む
「まあ、料理って言ったってそんな難しい事はしないわ。レシピ通りに作れば食べられないものが出来るなんて事は起こらないわよ。だから・・・・・・その、包丁を一旦置きましょう。サクヤさん」
「え、あ、はい。」
包丁を握りしめて準備をしていた私にナギさんは諭すように言いました。
「あの、サクヤさん、今からする事分かってるわよね?」
「え、料理ですよね。」
「そうよね。泥棒猫を料理しに行くとかじゃないわよね。」
脈絡もなくナギさんはそんな突拍子もない事を突然言うので少し面食らいました。
「だったら、包丁を両手で握りしめて構えなくていいのよ。」
「え、でも、刺す時、困りませんか?」
「料理の行程で包丁で刺すなんてないから!」
「でも、この前、映画で見た『超次元料理人 マサル』は、宇宙一硬いパイナップルを斬るために両手で突き刺してましたよ?」
「なんか、凄そうな話が来たわね。」
私が両手で包丁を握りしめる動作をしてそのまま突き刺し上へと振り上げる動作を真似する。
峰さんに出会う前は映画館で映画を観に行っていたりしていたので現代の知識は豊富です。
「これはですね。宇宙一硬いパイナップルを捌く時に使った必殺捌きで、マサルが海で料理修行をしていた時に波の満ち引きから着想を得た技で、波のように一瞬、力を弱め、次の瞬間に全力を出すと言う行程を繰り返す事によってーーー」
「ストップ! ストップ! サクヤさん、それは料理じゃないわ。あってるのは、包丁を使うぐらいよ。」
「え、それは、シーズン2の話ですか?」
「シリーズもの!? 全部よ。いや、その話は見た事ないけど、多分、全部違うわよ。」
「オススメですよ。シーズン1では、マッコウクジラの活け造りを作るために空気に触れた瞬間、傷が開く空間斬を会得して、水中での激闘の末、子供達にマッコウクジラの活け造りを食べさせるシーンが本当に感動で・・・・・・」
「ちょっと気になるけど、違うのよ・・・・・・分かったわ。今から全部教えるから、超次元料理人のことは忘れて」
「・・・・・・わかりました。」
「包丁の持ち方は、こうやって、片手で握るのよ。で食材をまな板の上に置いて、手を丸めるの」
ナギさんは、私の後ろに立って姿勢や手の持ち方などを修正していきます。
「じゃあ、野菜の皮はピーラーで剥くわ。」
「誰ですか。ピーターって」
「外国人の名前じゃないわよ。ピーラーね。・・・・・・先が思いやられるわね・・・・・・」
ナギさんは私にピーラーを見せます。回転する小さな刃のついた道具で、百貨店で見たことがあります。
「刃を野菜に添わして下になぞると、ほら、皮が剥けるの」
そう言って薄く長くなった人参の皮を私に見せてくれます。実際に使ってる所を見る機会はなかったので、使用方法に納得できました。
「凄いですね。包丁いらないですね。」
「サクヤさんは、人参、とジャガイモ、丸ごと入れるの?」
そんなやりとりをしながら、料理を人参やジャガイモなどの皮を剥いていきます。
そして、野菜を先ほど言われた持ち方で切っていきます。
「それで、斬る時は、包丁を前に押すように斬るの。そうそう。いい感じね。」
言われるがままにしていますが、それでも初めての経験は、新鮮で楽しいです。
完全に不安を払う事は出来ませんでしたが、それでも先ほどよりも少し気が楽になったような気がします。
そして、それからも、一つの行程に悪戦苦闘しながらも私は料理を進めました。その度にナギさんに指摘され、改善するという作業です。けれど、今までには体験したことがありませんでした。
自分に出来る事が増えるというのは、やっぱり嬉しい事です。
料理が完成するとなんとも言えない達成感があったのは言うまでもありません。
「で、出来ました?」
私がそう尋ねるとナギさんは、ジャガイモを取り出して、少し冷ましてから口に運びました。
そして、何度か噛むと呑み込みこちらに笑いかけてくれます。
「ちゃんと味がしみていて美味しいわ。ほら、サクヤさんも一口食べてみたら?」
そう言われて私もジャガイモを食べてみます。すると少し熱いジャガイモでしたが、食べて見ると肉じゃがの出汁の甘さが染み込んでいて、とても美味しいです。
手伝ってもらったとはいえ、これを自分で作る事が出来たというのは、驚きです。
「さて、ご飯にしましょうか。って、あれ。サクヤさん、それ」
ナギさんは、私が持ってきていた人形を指さします。よく見るとミイラ男の目が光っています。
「これって・・・・・・」
「相手からの信号よ! 手に取ると相手の位置が分かるから。」
私は、慌ててミイラ男に触れると感覚的に方角と距離が流れ込んできます。そして、その場所は、私が想像するよりも随分と近く走れば行けてしまう距離でした。
「ナギさん、すみません。私、行かないと!」
「ええ、一人で大丈夫?」
「はい! また、来ます。ありがとうございました!」
私は、慌てて店を出て人形の伝える場所へと向かいました。
「え、あ、はい。」
包丁を握りしめて準備をしていた私にナギさんは諭すように言いました。
「あの、サクヤさん、今からする事分かってるわよね?」
「え、料理ですよね。」
「そうよね。泥棒猫を料理しに行くとかじゃないわよね。」
脈絡もなくナギさんはそんな突拍子もない事を突然言うので少し面食らいました。
「だったら、包丁を両手で握りしめて構えなくていいのよ。」
「え、でも、刺す時、困りませんか?」
「料理の行程で包丁で刺すなんてないから!」
「でも、この前、映画で見た『超次元料理人 マサル』は、宇宙一硬いパイナップルを斬るために両手で突き刺してましたよ?」
「なんか、凄そうな話が来たわね。」
私が両手で包丁を握りしめる動作をしてそのまま突き刺し上へと振り上げる動作を真似する。
峰さんに出会う前は映画館で映画を観に行っていたりしていたので現代の知識は豊富です。
「これはですね。宇宙一硬いパイナップルを捌く時に使った必殺捌きで、マサルが海で料理修行をしていた時に波の満ち引きから着想を得た技で、波のように一瞬、力を弱め、次の瞬間に全力を出すと言う行程を繰り返す事によってーーー」
「ストップ! ストップ! サクヤさん、それは料理じゃないわ。あってるのは、包丁を使うぐらいよ。」
「え、それは、シーズン2の話ですか?」
「シリーズもの!? 全部よ。いや、その話は見た事ないけど、多分、全部違うわよ。」
「オススメですよ。シーズン1では、マッコウクジラの活け造りを作るために空気に触れた瞬間、傷が開く空間斬を会得して、水中での激闘の末、子供達にマッコウクジラの活け造りを食べさせるシーンが本当に感動で・・・・・・」
「ちょっと気になるけど、違うのよ・・・・・・分かったわ。今から全部教えるから、超次元料理人のことは忘れて」
「・・・・・・わかりました。」
「包丁の持ち方は、こうやって、片手で握るのよ。で食材をまな板の上に置いて、手を丸めるの」
ナギさんは、私の後ろに立って姿勢や手の持ち方などを修正していきます。
「じゃあ、野菜の皮はピーラーで剥くわ。」
「誰ですか。ピーターって」
「外国人の名前じゃないわよ。ピーラーね。・・・・・・先が思いやられるわね・・・・・・」
ナギさんは私にピーラーを見せます。回転する小さな刃のついた道具で、百貨店で見たことがあります。
「刃を野菜に添わして下になぞると、ほら、皮が剥けるの」
そう言って薄く長くなった人参の皮を私に見せてくれます。実際に使ってる所を見る機会はなかったので、使用方法に納得できました。
「凄いですね。包丁いらないですね。」
「サクヤさんは、人参、とジャガイモ、丸ごと入れるの?」
そんなやりとりをしながら、料理を人参やジャガイモなどの皮を剥いていきます。
そして、野菜を先ほど言われた持ち方で切っていきます。
「それで、斬る時は、包丁を前に押すように斬るの。そうそう。いい感じね。」
言われるがままにしていますが、それでも初めての経験は、新鮮で楽しいです。
完全に不安を払う事は出来ませんでしたが、それでも先ほどよりも少し気が楽になったような気がします。
そして、それからも、一つの行程に悪戦苦闘しながらも私は料理を進めました。その度にナギさんに指摘され、改善するという作業です。けれど、今までには体験したことがありませんでした。
自分に出来る事が増えるというのは、やっぱり嬉しい事です。
料理が完成するとなんとも言えない達成感があったのは言うまでもありません。
「で、出来ました?」
私がそう尋ねるとナギさんは、ジャガイモを取り出して、少し冷ましてから口に運びました。
そして、何度か噛むと呑み込みこちらに笑いかけてくれます。
「ちゃんと味がしみていて美味しいわ。ほら、サクヤさんも一口食べてみたら?」
そう言われて私もジャガイモを食べてみます。すると少し熱いジャガイモでしたが、食べて見ると肉じゃがの出汁の甘さが染み込んでいて、とても美味しいです。
手伝ってもらったとはいえ、これを自分で作る事が出来たというのは、驚きです。
「さて、ご飯にしましょうか。って、あれ。サクヤさん、それ」
ナギさんは、私が持ってきていた人形を指さします。よく見るとミイラ男の目が光っています。
「これって・・・・・・」
「相手からの信号よ! 手に取ると相手の位置が分かるから。」
私は、慌ててミイラ男に触れると感覚的に方角と距離が流れ込んできます。そして、その場所は、私が想像するよりも随分と近く走れば行けてしまう距離でした。
「ナギさん、すみません。私、行かないと!」
「ええ、一人で大丈夫?」
「はい! また、来ます。ありがとうございました!」
私は、慌てて店を出て人形の伝える場所へと向かいました。
0
お気に入りに追加
62
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
思い出を売った女
志波 連
ライト文芸
結婚して三年、あれほど愛していると言っていた夫の浮気を知った裕子。
それでもいつかは戻って来ることを信じて耐えることを決意するも、浮気相手からの執拗な嫌がらせに心が折れてしまい、離婚届を置いて姿を消した。
浮気を後悔した孝志は裕子を探すが、痕跡さえ見つけられない。
浮気相手が妊娠し、子供のために再婚したが上手くいくはずもなかった。
全てに疲弊した孝志は故郷に戻る。
ある日、子供を連れて出掛けた海辺の公園でかつての妻に再会する。
あの頃のように明るい笑顔を浮かべる裕子に、孝志は二度目の一目惚れをした。
R15は保険です
他サイトでも公開しています
表紙は写真ACより引用しました
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる