咲かない桜

御伽 白

文字の大きさ
上 下
132 / 352
3章

Part 132『初デート』

しおりを挟む
 「なんか、こうして二人で行動するのって久しぶりだな。」

 適当に町をぶらつきながら、俺達は歩いていく。すれ違うのは、人間ではなく妖怪な以外は、少し田舎の町のようだ。

 「そうですね。遊園地には行きましたけど、あの時は、他の方がいましたからね。」

 「まあ、せっかくの時間なんだしさ。楽しくやろうぜ。今は、時間制限もないし、どこにだって行けるんだから」

 今までなら、一日以上は、桜の木から離れられないという事もあって、行動に少し制限があったので、こうして気にせず行動出来る遠出というのは今回が初めてだった。

 「でも、初デートが精霊とだなんて、予想もしてなかったな。」

 「これってデートなんですか?」

  そうやって、本気で尋ねてこられると、勝手に思い込んでるだけの人みたいで少し不安になる。

 「デートだろ。両想いでこうして、観光してるんだから」

 俺はそう言って自分の正当性を確認する。間違いなくデートだ。手も繋いでいて、お互いの距離がかなり近い。

 「そうですよね。デート・・・・・・本来なら桜の木から離れることが出来なかったはずの私が、こうして、峰さんとデートすることになるなんて、私も驚きです。」

 「まあ、人生何が起こるかわかんないって事だな・・・・・・」

 彼女は人ではなく精霊なので精霊生とでもいうべきなのかもしれないが、語呂が悪いな・・・・・・妖生の方が語感はいいかもしれない。さして、そこに関しては重要ではないのだが。

 「そうですね。ところで、デートって他に何をすればいいんですか?」

 「そりゃあ、デートってのは、一緒に散歩したり、一緒にご飯食べたり、後、熱々なカップルは、食べさせあいをしたりとか・・・・・・」

 そんな話をしながら俺はふと衝撃の事実に気づいてしまう。

 あれ? 前からちょくちょくやってないか・・・・・・?

 考えてみれば、一緒に散歩も、ご飯も食べさせあいも、サクヤが箸を使えな買ったという理由はあるけれど、やっている。

 サクヤもその事実に気づいたようで「それ、普段の私達と何か違いますか?」と質問をしてくる。

 そう、実はすでにデートっぽい事はしていたのだ。今、気づいた。

 「つまり、俺達、前々から付き合ってたんだよ!」

  「え、そうなんですか!?」

 「そんな訳はないんだけどな。」

 結局、付き合ったと言ってもする事というのは、仲のいい友人とする事と大して変わらないような気がする。

 肉体関係はやはり恋人同士持つ事はあるだろうけれど、それが全てではないはずだ。

 四六時中恋人同士だからと言って行為をしている訳ではないのだから、それだけではない。

 デートにしたって友人とだって買い物に行くし、ご飯も食べる。だからこそ、特別な行為を探すんじゃないのかもしれない。もちろん、手を繋いだりするのは、俺としても恋人っぽくて良いけれど、無理にするものでもないのだと思う。

 「多分さ。気持ちが違うんだよ。」

 「気持ちですか?」

 「好きな子と一緒に色んなことをしたいって思うからデートは特別なんだと思う。こうして、手を握って歩くだけでも俺は、嬉しいしやっぱり、好きなんだなって思う。」と言って何を恥ずかしい事を真正面から言っているんだと言った後に気づく。

 「ま、まあ、折角なんだ。色々、見て回ろうぜ! 面白いものも色々あるだろうしさ!」

 見渡せば、甘味処や服屋、雑貨屋など、退屈しなさそうなラインナップだ。

 俺は、話題を変えるようにサクヤの手を引いて店へと入っていった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

思い出を売った女

志波 連
ライト文芸
結婚して三年、あれほど愛していると言っていた夫の浮気を知った裕子。 それでもいつかは戻って来ることを信じて耐えることを決意するも、浮気相手からの執拗な嫌がらせに心が折れてしまい、離婚届を置いて姿を消した。 浮気を後悔した孝志は裕子を探すが、痕跡さえ見つけられない。 浮気相手が妊娠し、子供のために再婚したが上手くいくはずもなかった。 全てに疲弊した孝志は故郷に戻る。 ある日、子供を連れて出掛けた海辺の公園でかつての妻に再会する。 あの頃のように明るい笑顔を浮かべる裕子に、孝志は二度目の一目惚れをした。 R15は保険です 他サイトでも公開しています 表紙は写真ACより引用しました

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました

宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。 ーーそれではお幸せに。 以前書いていたお話です。 投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと… 十話完結で既に書き終えてます。

処理中です...