咲かない桜

御伽 白

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2章

Part 78『自覚する恋』

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 家に帰ろうと思いながらも俺は、結局モヤモヤした気持ちを抱いていた。自分が避けられている。嫌われたとは正直、考えたくない。

 というか、サクヤの性格上、そこまで誰かを嫌うと言うタイプではないと思っていた。なにせ、呪いをかけられた相手にも寛容だ。

 だから、避けられると言うのは嫌われたという可能性は低い・・・・・・と思いたい。

 「だから、やっぱり一度会って話して見ないと進まないよな・・・」

 一人呟きながら俺は山に向かう事を決めた。もう、あれから、なんだかんだ言って随分と日がたったと思う。

 桜並木は、葉桜に変わって、地面に散っていた桜も今ではほとんどなくなっていた。

 サクヤの事が好きなのだろうか。好きか嫌いかで言えば、勿論、好きだ。 間違いなくそう断言できる。けれど、それが恋愛対象に対する好意なのかそれとも友情的なものなのかの判断がつかない。

 「こんな回りくどいこと考えてるからそう言う経験が疎いんだろうなぁ・・・」

 そう呟きながらも進む足を止めることはない。山頂へと続く山道をゆっくりと歩いていく。

 夜の山は、所々ある街灯だけが灯っているだけなので酷く薄暗く、随分と不気味にも感じる。

 だからか、自然と歩く速度も速くなる。けれど、ここ数日の散歩の成果は出ているようで、あまり疲れは感じない。

 昔なら15分以上はかかっていたはずなのに10分ほどでサクヤのいる桜の木まで着いた。

 何が自分のためになるか分からないものだな。そんな事を思いながら桜の木に近づく。

 そこには、サクヤの姿があった。後ろ姿しか見えないが見間違えるはずもない。

 「サクヤ」と俺が声をかけるとビクリと肩を震わせてゆっくりとサクヤは振り返った。彼女のその瞳からは、涙が流れていた。

 その姿を見て気がつけば体が動いていた。意識するよりもずっと速く俺はサクヤに駆け寄っていた。

 「サクヤ・・・大丈夫か?」

 「峰さん・・・どうしてここに・・・?」

 「サクヤに会いたくなってさ。いるかなと思って来たら、お前泣いてるからびっくりした。」

 「・・・・・・そうなんですか。」

 「どうしたんだ? もしかして、俺が何かしたか?」

 「いえ、本当にたいしたことじゃないんです。」

 「泣いててたいしたことじゃない訳ないだろ。」

 そう言いながら、俺はなんとなくわかった。俺は彼女の事が好きなのだと。

 涙を流す彼女の姿にこんなにも胸が締め付けられるのが恋ではなくてなんなのだ。

 「俺が悪いなら謝るし、何か悩みがあるなら聴く。だから、俺と話をしないか?」

 なんだか、少し前に進めている気がした。
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