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2章
Part 74『妨害工作』
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***
「ちょっと、邪魔しないでくれない? ネコ」
苛立ちを隠そうともしない声音で魔女は、目の前に突然現れたクロを睨む。
「悪いなぁ。この子に手を出させるのを嫌がってる知り合いがおるんでな・・・」
しかし、妖怪を見ることが出来ない柏木は、突然、会話を遮った魔女の姿に不思議そうな表情を浮かべる。
「急にどうしたの? 魔女さん。」
「いや、なんでもないよ。ちょっと邪魔な存在がいるだけで・・・」
先程からクロは、魔女が本題に入ろうとするたびに猫の身軽さを存分に活かしながら言葉を妨害していた。喋ろうとするたびに肉球で頬を叩いたりと遠目から見るぶんにはコントの様な状況であった。
魔女は、次第にイライラし始めクロに向けて腕を振り回したりと攻撃するのだが、猫の身軽さでその攻撃は一切当たらない。
「ああ! もう! 鬱陶しい! いい加減にしないと潰すよ。ネコ」
「なんや。堪え性のない子やなぁ。肉球で話しとる途中に頬つついたりしただけやないか・・・」
「私、結構、寛大なんだけど、やりたい事邪魔されるとイライラするんだよね・・・」
実際のところ、クロは別のクロが生み出した分身である。そのため、この場にいるクロが死亡したとしても本体であるクロが存在し続ける限りは、クロという存在が消滅することはない。
かといって死亡にデメリットがないかというとそういう訳ではない。クロの分身は常にクロと情報が共有されており、五感情報も共有されている。それは痛みに関しても同様である。
死による痛みをクロは、分身からでも受けてしまう。そのため、分身ですら本来であれば、危険を冒して行動する事はしない。
「もういいや。君が悪いんだからね。私を怒らせるとどうなるか教えてあげるよ。」
魔女は、指をパチンと鳴らした。その瞬間、クロは、地面が急になくなった様な浮遊感を感じてすぐに自分が落ちていることに気付いた。すぐに、猫としての本能による着地をしようとするがピタリと落下するが止まって体が宙で止まった。
魔女は、クロを空高くに瞬間移動させて空中で固定し動けなくさせた。ほんの数秒の出来事である。
「後で遊んであげるからそこで見てなよ。ネコ」
呆れた声で魔女はクロに向かって声をかける。
魔女は、魔力を消費すれば、想像できる全ての事象を再現できる。鬼と並ぶ最強の妖怪の一つである。
魔力の消費量さえ考えなければ、魔女を倒せる存在などほとんど存在しないとまで言われるほどにその能力は強大である。
「さて、お待たせ! お姉さん。お姉さんの悲しい思い出を全部消してあげるよ! お姉さんは、どの過去を消したいんだい?」
魔女は、柏木に近づくと上目遣いで覗き込む様に尋ねた。
柏木は、自分の消したい過去について説明しようとしたその時、後ろから走ってくる足音が聞こえた。
「柏木さん!」
柏木の耳に聞き慣れた友人の声が聞こえる。振り返るとそこには、峰の姿があった。
「峰、魔女見つけたんだ。これから、記憶を消してもらーーー」
峰も一緒に探してくれたのだから喜んでくれるとそう信じていたのに峰から出た言葉は、柏木の思っていた言葉とは全く違うものだった。
「ダメだ。記憶は消さない方がいい。」
峰から告げられた予想外の言葉に柏木は、言葉を失った。
***
「ちょっと、邪魔しないでくれない? ネコ」
苛立ちを隠そうともしない声音で魔女は、目の前に突然現れたクロを睨む。
「悪いなぁ。この子に手を出させるのを嫌がってる知り合いがおるんでな・・・」
しかし、妖怪を見ることが出来ない柏木は、突然、会話を遮った魔女の姿に不思議そうな表情を浮かべる。
「急にどうしたの? 魔女さん。」
「いや、なんでもないよ。ちょっと邪魔な存在がいるだけで・・・」
先程からクロは、魔女が本題に入ろうとするたびに猫の身軽さを存分に活かしながら言葉を妨害していた。喋ろうとするたびに肉球で頬を叩いたりと遠目から見るぶんにはコントの様な状況であった。
魔女は、次第にイライラし始めクロに向けて腕を振り回したりと攻撃するのだが、猫の身軽さでその攻撃は一切当たらない。
「ああ! もう! 鬱陶しい! いい加減にしないと潰すよ。ネコ」
「なんや。堪え性のない子やなぁ。肉球で話しとる途中に頬つついたりしただけやないか・・・」
「私、結構、寛大なんだけど、やりたい事邪魔されるとイライラするんだよね・・・」
実際のところ、クロは別のクロが生み出した分身である。そのため、この場にいるクロが死亡したとしても本体であるクロが存在し続ける限りは、クロという存在が消滅することはない。
かといって死亡にデメリットがないかというとそういう訳ではない。クロの分身は常にクロと情報が共有されており、五感情報も共有されている。それは痛みに関しても同様である。
死による痛みをクロは、分身からでも受けてしまう。そのため、分身ですら本来であれば、危険を冒して行動する事はしない。
「もういいや。君が悪いんだからね。私を怒らせるとどうなるか教えてあげるよ。」
魔女は、指をパチンと鳴らした。その瞬間、クロは、地面が急になくなった様な浮遊感を感じてすぐに自分が落ちていることに気付いた。すぐに、猫としての本能による着地をしようとするがピタリと落下するが止まって体が宙で止まった。
魔女は、クロを空高くに瞬間移動させて空中で固定し動けなくさせた。ほんの数秒の出来事である。
「後で遊んであげるからそこで見てなよ。ネコ」
呆れた声で魔女はクロに向かって声をかける。
魔女は、魔力を消費すれば、想像できる全ての事象を再現できる。鬼と並ぶ最強の妖怪の一つである。
魔力の消費量さえ考えなければ、魔女を倒せる存在などほとんど存在しないとまで言われるほどにその能力は強大である。
「さて、お待たせ! お姉さん。お姉さんの悲しい思い出を全部消してあげるよ! お姉さんは、どの過去を消したいんだい?」
魔女は、柏木に近づくと上目遣いで覗き込む様に尋ねた。
柏木は、自分の消したい過去について説明しようとしたその時、後ろから走ってくる足音が聞こえた。
「柏木さん!」
柏木の耳に聞き慣れた友人の声が聞こえる。振り返るとそこには、峰の姿があった。
「峰、魔女見つけたんだ。これから、記憶を消してもらーーー」
峰も一緒に探してくれたのだから喜んでくれるとそう信じていたのに峰から出た言葉は、柏木の思っていた言葉とは全く違うものだった。
「ダメだ。記憶は消さない方がいい。」
峰から告げられた予想外の言葉に柏木は、言葉を失った。
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