義手の探偵

御伽 白

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つくも屋

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 玲子は古びた店に足を運んでいた。いくつもの年季の入った品々が所狭しと店内に置かれており、古書や家具、木彫りの像など置いているものに統一感はない。一様に手書きの値札シールが付いていることと古い物であることぐらいしか、共通点を感じられない物たちであった。その様な店ではあるが、その統一感のなさが好奇心を刺激し、店内の様子が気になってしまう不思議な魅力のある店であった。
 古物商『つくも屋』
 誠が店長を務める古物商であり、誠の祖父の代から続く自宅兼店である。とはいえ、客入りがそこまである訳でもない。そこにいるのは、玲子と誠の家でアルバイトとして働く、男性店員の加賀かが 幹哉みきやだけである。加賀は長身の男性でガタイも良く表情に乏しいため怖がられやすい。玲子は付き合いが長いので、加賀が他人に対して危害を加える人種ではないのは理解していた。
「誠、帰ってないの?」
「はい。出ていく時は世の終わりみたいな顔してましたけど」
「ああ、それは大丈夫」
「大丈夫なんですか」
 女装すると言われて気が重かったために表情が曇っていただけだろう。と玲子は考えながら、今現在まで、家に帰ってない理由を考えていた。女装した状態で買い物に出掛けるとは考えにくい。女装した状態を人に見られたくない誠が未だ家に帰らない理由。
(もしかして、意外と気に入っていたのか? いや、都合が良すぎるか)
 そんなことを考えて、思考を切り替える。
「ナンパされてるかもれないな」
「誰がですか?」
「誠が」
「誠さんってモテるんですか? 人と一緒にいるのはよく見ますけど」
「いや、モテない。けど、今の誠はモテる。主に男に」
 玲子の説明に加賀は首を傾げる。説明不足な玲子の話は理解することが難しい。基本的にコミュニケーションを撮り慣れていない玲子は説明下手であった。
「なんかしてたんですか?」
「いや、そんな大したことは、女装させて、本気で化粧をしただけ」
 かなり大したことをしているな。と思いながら、誠が死んだ目をしていた理由に思い至った。何気に男らしい振る舞いを意識している誠を思い出しながら加賀は同情を禁じ得なかった。
 加賀に対しても「加賀くんぐらい、筋肉と身長があれば、もっと頼り甲斐が見せれるんだけどね」などと話すところからも、男らしさに憧れがある誠が女装などすれば、瞳も死んでしまうだろう。
「・・・・・・・でも、似合いそうですね」
 加賀は、女装した誠を想像してそう呟いた。玲子もその言葉に強く頷いた。
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