義手の探偵

御伽 白

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恋愛願望

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 公園の中を歩いている玲子達と同じように数人が周囲を歩き回っていた。縁結びの少女を探しているのか、キョロキョロと辺りを見渡している。
 稲荷原公園はかなり広大な土地を有する公園である。公園内にマラソンコースがあるぐらいの広さなので、爆然と稲荷原公園と指定されていても会うのに非常に難儀しそうである。
 探すのも難しいだろうな。と判断した玲子は特に目的もなくブラブラと目的もなくぶらつく。
「そういえば、一応、事前に噂について調べたんだけど、結構、信憑性が高い話らしいね。知り合いの知り合いが、縁を結んでもらってずっと好きだった女の子と付き合ったって聞いたよ。近々結婚も考えているらしいよ」
 歩きながら誠はそんな話をする。誠は頼りない風貌をしているが交友関係は、玲子とは比べ物にならないほどに広い。この街ではかなり顔が知られている。
 誠は基本的に付き合いが良く、人見知りをしないタイプである。更に困っている人を放って置けないお人好しで、当の本人が困っていたら助けたくなるような雰囲気がある。交友関係が広くなるのも当然である。
「じゃあ、かなりの信憑性はあるのか」
「うん。ところで玲子は何か縁結びとか考えてるの?」
「いや、別に」
「そうなの? せっかくの不思議な力を持ってる人に会えるのに」
「不思議な力なんて無い方が良い。だいたい、この腕を持ってそんな力に頼りたいと思える訳がない」
「それもそうか」
 玲子の手袋をした腕を見て誠はそう呟いた。
 自分の持つ幻想遺物のことを玲子はよく思っていない。出来ることなら今すぐ捨ててしまいたいほどだ。けれど、義手は体の一部のように玲子の体と融合し取り外すことが出来ないでいた。
 いつかは自分の腕を元に戻す幻想遺物を発見して普通の生活を取り戻す。それが玲子の目的だった。
 だから、誠も巷で噂になっている不可解な現象について情報を手に入れれば、玲子の元へ持って行っていた。
 香穂の依頼がなくても有名になれば、誠から情報は入ってきていただろう。
「誠はないの? 彼女が欲しいとか」
「ま、まあ、欲求がない訳ではないけど、こういうのって自分の意思で決めるのってどうかなってさ」
「そんなことを言ってるから彼女が出来ない」
 恋愛に夢を抱いている人間は、大体上手くいかない。特に運命的な出会いなどを信奉している人間はいつまで経っても相手など出来るはずもない。それこそ、幻想遺物でも使わない限りは・・・・・・・
「香穂は? お調子者だけど、可愛いし、人当たりも良いよ?」
「あー香穂さん。そりゃあ、可愛いし、人気者だしね。ただ、ファンに殺されそうだよね」
 そう言って誠は苦笑いを浮かべる。
「夜とかアイドルみたいなんだよ? 何度か、友達と飲みに行くけど、そりゃあすごい人気で・・・・・・」
(なるほど。人気過ぎるせいで、牽制されているから、変なのしか付き合わないのか)
 小さな疑問が解決し、納得する玲子の前に一人の女の子が現れる。
 薄手の上着にフードを被っているためその顔ははっきりとは見えない。しかし、フードから出した長い髪は、公園の街灯に照らされ、銀色に輝いている。
「この匂い。稲穂堂の特大油揚げですね」
 女の子は声を弾ませながらそう呟いた。
(声も若い。中学生? いや、高校生ぐらい?)
 玲子は女の子の振る舞いを観察しながら年齢を推測する。
「それを持って、ここを歩いているということは縁結びをご希望ですか?」
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