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昔話1 ロビンの話

断章 Cock-Robin's giving back 1

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ロビンは自分に託されたその言葉の意味を知った時、恩人から奪ったものに気が付いて絶句した。

何の害も受けずに様々なものが見えるようになってすぐに、ロビンは今までほぼ通えていなかった学校に通うようになった。
というか、恩人にあこがれて、沢山のものを学びたかったのだ。
そこに、ロビン自身が学校での孤立を恐れるすきはなかったし、そもそも人とコミュニケーションを取ることを目的としていなかった。
純粋に学ぶ手段の内、一番手っ取り早いもの、として学校に行くことを選択したのである。
最初は教師もクラスメートもれ物のようにあつかってきたが、その内、不気味寄りの変わり者で一匹狼の早熟で知的――あるいは繊細な頭でっかちという認識をしたらしく、干渉は最低限に納まった。休み時間に事典や辞書を読んでたのが功を奏したのかもしれない。

とはいえ、これは後年振り返ってあらためて思った事だ。
両親は引け目があるのか、ロビンのやりたいということを頭ごなしに否定する事はなかったので、もし学校以外の選択肢をロビンが知って選んでいれば、可能な限りその道にいかせてくれただろう。
とはいえ限度というのはあるもので、低学年の頃に無断で図書館に行って日が暮れるまで本を読みあさってた時には流石さすがに苦言をていされた。
それは何も言わずに勝手に出てった自分が悪いのだ。両親から万が一で声をかけられてたシンシアにも、一発もらって怒られたし。

ただ、その熱意は、目的に対して全くの無駄ではなかったと思う。
相当に早い段階で子供向けに書かれた本から、ティーンズや大人向けの本を読むようになって、その内、自然と独学で日本語も学ぶようになった。
それぐらいになった時に、自身の視界に映るものは常ならざるものだけでなく、他人の思考や感情なども含まれている事に気が付いた。
その頃には、おそらくは最初から見えていたが、言語として処理できなかったのだろう、と結論付けられる程度には思考回路はしたたかになっていたし、ちょっと視界がわずらわしいので、眼鏡を使うのはどうか、と自分で考え出すこともできた。
結果は、まあないよりマシというところだが。

だから、思い返すたびに矛盾むじゅんを感じていたのだ。
自分が告げた言葉に一瞬フリーズしたの姿と、その後、忘れてたと告げる言葉と。
覚え間違いか、と母に確認したこともあったが、少なくとも状況そのものは間違いではなかった。
少なくとも、の言う神様なのだから、自分が伝えたのは日本語だったのだろう、と当然考えた。
そうして、独学で日本語を学び出して、少ししてまず、「ずっと/zútɔː/」という言葉を知った。
それから「一緒/íʃɔː/」。最後に「それでも/sɔːledemɔː/」。

全部知る必要はなかった。
それでもHowever」「ずっとforever」「一緒together」。
話者は神様、受け手は
あの時の矛盾むじゅんとその情報を正しく紐解くなら、もしや自分は、とんでもない対価を払わせたのではないか。

どくどくと嫌な予感を感じさせる自分の鼓動の早鐘を押さえながら、最近伸びだした背のせいで痛む脚で、ロビンはシンシアの元に向かった。
きっと、シンシアなら本当を知っていると思ったからだ。
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