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「君にはもううんざりだ……」


 私は婚約者のアラモンド様と午後の紅茶を優雅に楽しんでいる最中でした。


 そんなときにふと聞こえてきた、婚約者からの辛辣な言葉。


 あまりにも急だったために、それが自分に向けられているものだと気が付くのにしばらくの時間が必要でした。


「あ、あの……。それは私に向けて言っているのですか?」



 私は半信半疑でアラモンド様に問いかけました。

 
 アラモンド様の顔は真っ赤になっており、おそらくですが私に対して相当お怒りのようです。


 身に覚えがございません。


 さきほどまでは、アラモンド様と優雅に紅茶を嗜んでおりましたのに……


 一体なにがあったというのでしょうか。


「そうだ。そうに決まっているじゃないか。君はまったく……。君の妹君とは大きな違いだ。まったく……」


 どうしたことでしょうか。

 なぜここで私の妹の話が出てくるのでしょうか。

 
 まったく訳がわかりません。


 私はそのこんがらがった頭で何も考えることができません。



「どうして君は、私に体を許してくれようとしないのかね。一向にそういう素振りも見せずに……。その一方で君の妹君は実に従順で魅力的だ」


「………………」



「さぁ、君も私に尽くしておくれよ。ほら、さぁ……」



 アラモンド様は優雅な午後のティータイムをめちゃくちゃにしてくれました。


 アラモンド様のそのいやらしい容姿と、後ろに映る美しい庭園と青空の景色がミスマッチしています。


「ああ……私は選択を誤ってしまったのですね。確かに妹とは昔から仲が悪かったのですが……。まさか、これほどまでとは」


 私はティーカップを手に取り、一口だけ口に含みました。


 そして、それを口のなかでころころと転がして、少しだけ温度を下げます。


「ほらっ、早くっ!!! そうすれば私はもっと君のことも大切にしてあげるさ」


 そんなふざけたことをいう、アラモンド様。


 私はそこへめがけて……


『ぴゅぅぅぅぅぅぅぅっ』


 
 一筋の噴水のような綺麗な曲線を描く紅茶を彼の顔に注いだのでした。



「お、おおおっおおおおおっおおおおおお!!!」



 アラモンド様は私のお口から出た紅茶が顔にかかっているというのに、そんなだらしない声を挙げています。



「そ、それだよっ!!! 君の妹君もそんな感じでしてくれるんだよ!!!」



 アラモンド様はそう言いながら、今のこの惨めな醜態を喜んでいます。


 そうでしたか……


 そうだったのですね……


 あなたはそのような……


 お方だったのですね。



「アラモンド様……惨めですね」


「ああああああっ!!!!!!」


「さようなら、婚約破棄させていただきます」


 私は一言だけ捨ておくように言って、午後のティータイムを終えるのでした。

 そしてそれは同時に、数年間続いてきた彼との婚約生活の終焉を意味するものでした。



「ああああ……あああっ……。えっ……」



 私の後方からは、快感に溺れたあとに、我に返るアラモンド様の惨めな声がかすかに聞こえてくるのでした……


【完】
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みんなの感想(1件)

おゆう
2023.06.14 おゆう

変態だった?(笑)。妹にはざまぁ無し?Σ(゚ロ゚;)。

解除

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