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第4話 2日目〜夜〜

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 俺はいつも通りの時間にお風呂から上がると、はやる気持ちを落ち着けて浜辺さんから貸してもらった文庫本をもって自分の机に向かった。

 なにせ初めて女の子から本を貸してもらったのだ。

 喜ばない男子がどこにいるというのだろうか。

 それにしても、浜辺さんは一体どういった本を読むのだろうか。

 俺は性格からなのか分からないが、この人はあんな本が好きそうとか、こんな本は嫌いそうとか、色々と想像することが結構好きだった。

 でもいつもそれは想像だけで終わってしまって、答え合わせはできないままだった。

 一人で始まり一人で終わる寂しい想像。

 でも今日でそれも終わりだ。

 やっと俺にも読書友達なるものができたんだ!!

 俺はウキウキした気持ちで彼女から借りた本に着けてあるブックカバーを取り外した。

 さあ……いったいどんな本を読んで……


「え………」


 俺は驚愕した。

 どうしてこんなものが本になっている??

 どういうことだ!!??


「これは……俺が書いていた小説……」


 なんと浜辺さんが俺に貸してくれた本は、かつての自分が執筆していたWeb小説だったのだ。


 浜辺さんのことだから結構エロい小説でも貸してくれたんだろうと思っていたんだけど、予想をはるかに上回ってきた。


 まさか、自分が書いていたWeb小説だったとは……


 きっと浜辺さんは俺の読者だったのだろう。それもおそらくヘビーユーザーだったと思われる。

 というのも、俺の書いていた小説は書籍化されるほどに知名度は高くなかった。

 それなのにこうしていま、本の形になっているということは、きっとこれは浜辺さんが自分で作成した本なのだろう。

 ホッチキスで留めるだけの簡単な作りではなくて、一般的に出版されている本と遜色ないほどの出来になっている。

 しかし、これは一体どういうことなのだろう。

 浜辺さんは俺がこの小説の作者ということを知っていて、俺にこの本を渡してきたのか。

 それとも全く知らずに、偶然俺の元にこの本が渡ってきたのか……


 謎は深まるばかりだ。


 浜辺麻衣さんは一体何者なんだ……


 そう思っていた時だった。


 不意にスマートフォンの通知がなった。

 
 誰だ?

 
 陰キャでコミュ障の俺に連絡をくれる優しいやつは??

 
 そう思いながら俺はゆっくりとスマホを取り上げ、通知を確認する。


 そこには……


「まじかよ……」


 浜辺さんを語るアイコンからメッセージが届いていた。

 きっとクラスのグループラ〇ンから俺の連絡先を辿ってきたのだろう。

 連絡先を直接交換した覚えはないし、きっとそうだろう……。

 そう思いたい……

 そして俺は思い切って彼女のメッセージを開くことにした。


 そこには……


「どう? 自分の書いた小説の感想は??」


 どうやら浜辺さんはこの小説が俺の書いたものだということを知っていたらしい。


「こわいこわい……どういうこと……。どうして俺が書いていたのがバレてるの……。浜辺さん……めっちゃこわいよ」


 浜辺さんはどうやらエロすぎるだけではないらしかった……


 俺はとてもじゃないけど、浜辺さんに返信する言葉を思いつくことが出来ず、既読をつけたままスマートフォンをベットの上に投げやった。


「どうしたらいいんだ……」


 俺は突然の出来事に戸惑うことしかできないのだった。
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