出羽ノ国ノ白タカ

鷹尾(たかお)

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木工品店

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「多分この辺だと思うんだけどなぁ。」

白鷹を腕に乗せたカナエは、城下町をキョロキョロしながら歩いた。

トンテンカンカン!

「あ、あれじゃない?カナエ。」

何やら器具を打ち付ける音が聞こえた2人は、音がする方へと行ってみる。

「ここだね。」

2人はそのまま、広い扉が開け放たれた木の香りがする建物に入った。

「ごめんくださーい。」

「はいっ、いらっしゃい!」

来客に気づいた店主は作業を止める。
店の中は半分が作業スペースで、もう半分は商品の展示スペースとなっていた。
木で作られた大小様々な生活用品は、細部までとても丁寧に作り込まれている。

「あらまっ、かっこかわいいお客さんね。どういう商品をお探しかしら?」

腕の筋肉がすごい男性店主は、服についた木くずをほろいながらオネエ口調でカナエに聞いた。

「あ、あの。えっと…。」

カナエは初めて会うオネエに緊張しながら、帯に差し込んで持っている壊れた髪飾りを取り出した。

「これをかんざしにしたりって出来ますか?」

「あっらぁ~、素敵な物持っているわね。ちょっと借りていいかしら?……。うん、問題無いわね。そこに座ってちょっと待っていてちょうだい。すぐに作ってあげるわ!」

店主は明るく笑うと、カナエから飾りを預かって作業に入った。
仕事中の店主は、とても楽しそうである。

「シロちゃん。あの人なんだか素敵な人ね。(小声)」

「ピー!(そうね。仕事を楽しんでいる感じが、作品からも感じられるわ。)」

こうしてカナエと白鷹は、しばらく店内で待つ事となった。
待っている間、カナエは店主と軽く世間話をし、白鷹は店内の商品を見て回っていた。



十数分後…。

「よし、出来たわ!お待たせカナエちゃん!」

「ありがとうございます。」

カナエはお礼を言うと、店主からかんざしを受け取った。

「出来栄えはどうかしら?」

「はい、すごく良いです。ありがとうございます。」

かんざしを髪にさしたカナエは、持参した鏡でチェックしてみる。

「あら~!とっても素敵よ!これ、もしかして誰かからのプレゼント?もしかして、男の子から?」

店主は少しわくわくした表情でカナエに聞いた。

「はい。これを渡してくれたのは男の子です。」

「まあ!素敵!」

店主は両手を合わせ、さらに笑顔になった。

「ちょっとカナエ。この人勘違いしてるわ。」

「?」

髪飾りが戻って白鷹の声は聞こえるが、カナエはどういう意味で言っているのかが分からない。

「どんな子なの?若い子の恋バナ聞きたいわ~♪」

「え?恋バナ??」

カナエは一瞬キョトンとした。

「ち、違います!これは若様が私にくれようとした物で、そういうんじゃないです!」

手と頭をぶんぶん振るカナエ。
その度に髪飾りがキラキラと揺れる。

「カナエ、そんなに頭振らないで。せっかくの飾りが取れちゃうわ!」

白鷹の忠告を聞いたカナエはぴたっと止まった。

「若様って…。この間2歳になった若様?」

「はい!」

今度は頭を縦に振るカナエ。

「………。この髪飾り丈夫だわ。」

白鷹は感心した。

「なんだ、恋バナじゃないのね。ちょっぴりがっかり。」

店主は自分の思い違いに、クスッと笑った。

「でも何で2歳児からプレゼントを貰う事に?」

「私も謎です。なんか打ち合わせに行ったらそう言う流れに…。殿は“鷹匠見習いになったお祝いだ”とか、“若様の、プレゼントしたい気持ちを育てたい”とか言われてましたけど、意味わかんないです。どういう事でしょうか。私、こんな高そうな物貰っていいんでしょうか。」

“意味わかんない”の所でドキッとした店主と白鷹は、店の前の通行人を見た。
どうやら声は聞こえていないらしい。

「お殿様と若様はやっぱりお優しいのね。カナエちゃんに日頃の感謝を伝えたいのよ。そのお手伝いができて、私も嬉しいわ。愛情を届けるのが私の本業だもの。」

「え?どゆこと?」

白鷹はカナエの顔を見た。
カナエも、いまいちピンと来ていない顔をしている。

「あのー、すみません。本業は木工品屋さんではないんですか?」

カナエは失礼のないように、丁寧に聞いた。

店主いわく、お客さんが“欲しい”と思ってくれるのは商品ではなくて、商品がもたらす効果らしい。

この店の人気No. 1商品は、曲げわっぱのお弁当箱との事だった。
そこで店主は常連の女性に、「なぜうちの曲げわっぱを買ってくれるのか?」と聞いたそうだ。
すると常連の女性はこう返したと言う。

「おたくの曲げわっぱは、杉の殺菌効果だの、良い感じの吸水性だのあるから、お米が痛みにくいだろう?うちの子供が、“美味しい”“いつもありがとう”なんて言ってくれるんだよw嬉しいじゃないかい。私はあの笑顔のために買っているんだよ。」

その時店主は、「自分の仕事は木で作った食器を売るのが仕事では無い。各家庭の奥さんが作った愛情を、家族へ届けるのが仕事だ!」と、思ったとの事であった。

「なるほどです……。」

突然の深い話をさらりと話す店主に、カナエと白鷹は意表をつかれ、あまり良い返しが出来なかった。

「あの人、変わってるけどすごい良い人だったねー!」

帰り道、カナエは白鷹に話しかけた。

「そうね!でも、その良さをこいつらは知らないみたいだわ。」

そう言うと白鷹は、前を歩く集団のひそひそ話に対して腹を立てた。
帰る方向が同じなため後ろを歩いていた2人。
よって必然的に、若干声が大きいこの集団の、町民に対する悪口がこちらまで聞こえる状態となっていた。

「最悪だわ。殿様の悪口まで言い出したわよコイツら。」

「シロちゃんダメだよそんな事言っちゃ。ちゃんとした批判じゃなくて、妄想や憶測でしか悪口言えないまだ未熟なアンチさんなんだから。まだ人間として伸び代があると思うのよ!かわいいじゃない。」

白鷹は、カナエの意見が集団に聞こえていない事を確認した。

「…カナエ。あなたの方がひどくない?」

「え?どうして?」

「…まあ、いいわ。気にしないで。」

そうこう言っているうちに、2人はお城まで戻ってきた。
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みんなの感想(1件)

スパークノークス

おもしろい!
お気に入りに登録しました~

鷹尾(たかお)
2021.08.28 鷹尾(たかお)

ありがとうございます!
ご感想頂けると思っていなかったので戸惑っておりますw嬉しいです!
とても励みになります♪

解除

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