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本当の婚約者
公爵の許可
しおりを挟む「王子からわたし宛に訪問の打診があった。メアリローズ、なにか心当たりは?」
めずらしく一緒になった朝食の席でこの世界の父である公爵から問われた。
シルバーブロンドの髪をオールバックにした、ぴしりと緊張感のある人物だ。鋭い目付きと高くまっすぐな鼻梁で鷲に似ていると理紗は常々感じていた。
「婚姻を早めたいのですって」
「早めたい? なぜだ」
パンケーキを切り分けながら肩をすくめた。
自分の口から説明するには少々気恥ずかしいためだ。
「お前はそれでいいのか?」
「ええ」
「…………」
公爵がいぶかしげな目で理紗の腹を見ている。
ドロレスにも同じことをされたので何を考えているかすぐにわかった。
「腹に子は宿っておりません」
「ならなぜだ。その心配があるのか?」
ずいぶん明け透けに聞くものだと理紗は驚いた。
「婚前交渉はいたしておりませんしそのつもりもありません。婚姻を早めたいのはあちらの希望ですけど私も同意しました。あとはお父様がエドと話して判断してください」
「王子をエド、と呼んでいるのか?」
「そう呼べと言われましたので」
「お前たちが最近仲睦まじくしているのはヒュルケンやドロレスから報告があったが、まさか本当だとはな」
驚き、どこか愉快そうな公爵は「よし」と頷くと「今夜王子を晩餐に招待する」と後ろに控えるヒュルケンに言った。
執事のとなりにいたドロレスが目を剥いているがあいにく公爵は背を向けていてそれを見逃した。
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