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学園三日目
悪魔のささやき
しおりを挟むそれはつまり叶えば婚約解消ではなく婚約破棄ということだろう。
エドアルドが素直に応じるとは思えないし、もめることは必至だ。
けれども理紗が何より恐れるのは王子の殺害という不穏な未来だった。それに比べたら婚約破棄も学園追放もとるに足らない些末なことに思える。
「どうやったら王様に会えるのでしょうか」
おや、とつぶやく相手に理紗は続けた。
「あくまでも一つの選択肢としてですけど。まだどうするかは決めていませんから」
「王は近々この学園に査察に来られるようですよ。日程は王子に聞けばわかるでしょう。それとは別に謁見を賜りたいのなら、父君を通して申請すればよいかと」
「けれどその場合は父の説得が必須ですね」
そうですね、と応じる相手が格子の向こうで立ち上がった。
カタンパタンとくぐもった開閉音につづき、理紗のいる告解室の扉が開かれた。
「どうしても手立てが無くなったら私が力になりましょう」
「…先生が?」
「ええ」
後ろ手に扉を閉めたシュバルツが椅子に座る理紗に視線を合わせるように床に膝をついた。
「王とは古い友人なので。私が謁見を申し入れ、貴女を彼と引き合わせることもできます」
肘置きに置かれた理紗の手を取り、シュバルツがささやく。
「どうにも苦しくなったら私のところへいらっしゃい。悪いようにはしませんから」
手の甲に唇が押し当てられた。
穏やかな声とは真逆の鋭い目に見つめられ、理紗は鼓動が早まるのを感じていた──
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