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王宮舞踏会 ~入園セレモニー・夜の部~
少女
しおりを挟むいきなり部屋に押し入ってきた理紗に少女はぎょっとしたようだ。
ドアの外へ押し返そうとするのをかわし、なんとかドアを閉めた。
鍵を回すと怯えた様子で部屋の奥に後ずされ、今度は理紗が慌てた。
怖がらせる気はなかったのだ。
「いきなりごめんなさい。ちょっと匿ってほしいだけなの」
「…あなただれなの」
えーと…。
「舞踏会に招待されてきたんだけど、道に迷っちゃって…」
「…なぜ隠れるの?」
「ちょっと会いたくない人がいて…」
「さっきの男の人?」
理紗は頷いてドアに耳を寄せた。だが重厚すぎて向こう側の気配がみじんもわからない。
鍵穴から外をうかがっていると、ふいにひっぱられる感覚に顔をあげた。
となりにやってきた少女がドレスのスカート部分をおそるおそるさわっている。チュールレースが幾層にも重ねられたふわっふわな部分だ。
視線に気づいて手を引っ込める少女に、理紗は微笑んだ。
舞踏会を盗み見ていた様子といい、幼くてもドレスに興味はあるのだろう。
「着てみる?」
少女が眉をひそめた。
「…サイズが合わないわ」
まあそうだけどさ。
「雰囲気だけでも楽しめるわよ。はい」
そう言って背中を向けると、数舜のためらいののち、小さな手が背中のホックをはずした。次いでファスナーを下ろしていく。
理紗は見頃部分を脱ぐとパニエの留め具をはずした。
体を揺らして振り落とすと、ドレスは真っ赤なドーナツのように床に広がっていた。
「はい、どーぞ」
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