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アジサイの花は、

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裏切られた。

知ってたの、あなたがあの女の人の所にいることは。
知ってたの、あなたが私よりも親密な関係の女の人がいるって。
それでも私はあなたを求めてしまう。

あなたの温もりを求めてしまう。


***


今日も雨が降っていて、
ジメジメしていていて鬱々としてしまう。
今日もベッドでひとりぼっち。
目の前には鉢植えのアジサイが咲いている。

あなたがまだ優しい頃、
このアジサイの花を持ってきた。

「アジサイって鉢植えでも育つんだよ、
ハルカはアジサイの花好き?」

そう言って持ってきた。




彼は花屋の店員さんだったの、
私が通勤路にしている花屋の店員さん。
最初は毎日、挨拶するだけの関係。
それでも、ドキドキした。
はにかんだ時に片方だけえくぼができる彼の笑顔は可愛くて、でもかっこよくて、たぶん、一目惚れ。
彼も私のことが気になってくれていたみたいで、気づいた時には世間話をするような仲になっていて、
ベタに1本の赤い薔薇を勤務後にプレゼントしてくれた。

「ハルカ知ってる?1本の、赤い薔薇はね、」


一目惚れってことなんだよ、


そう言ってくれた彼に私は堕ちた。


それから半分くらいは一緒に生活しているような形で、
彼と抱き合って寝るのも寝かせて貰えないような日々も
愛おしかった。
これが愛っていうの?
私に渡すには大きすぎる愛がそこにはあった。

それでも、彼を愛していた。

そんな時に持ってきた、ピンク色の紫陽花。

「少し珍しいかなと思って、
ハルカ、ピンク色好きでしょ?」

そう言って笑った彼が眩しくて、
このアジサイを大切にしようと思った。

大切に大切に強く愛情を注いで。


それなのに、
そのアジサイをくれてから、1年。
最近、彼は私の家に来ない。

ピンク色だったアジサイは
丁寧に愛情を持って育てていたのに
土とかもより栄養があるっていう土を知って、
入れ替えたりして大事にしてたのに。

青いアジサイに変わった。
青は嫌い。
雨を思い出すでしょう?

雨が苦手って言ったらくれた、
珍しいピンク色のアジサイは、どこかにいってしまった。
青いアジサイは無情にも私に淋しさと冷たさを与えてくる。

彼に会いたいのに彼は来てくれない。
それで気づいたの、
私、彼の連絡先と、職場と、名前しか知らない。
そんな職場もね、辞めたんだって。
彼はもう居ないんだって。


彼は私のところに戻ってきてくれないの?
冷たい冷たいアジサイだけ残して。

そんな時見てしまった大人ぽい女の人と歩く彼を。
ああ、そういうことなのね、
1人で納得した。

なんだ、やっぱり、無情だ。
人生は無常なんだ。
彼と私の関係も変わってしまうんだ。


そんなんだったら、
サヨナラした方がいい。
引っ越してしまおう。
彼と私の唯一の接点も無くしてしまおう。


そう思ってたのに、


「ハルカ、ごめん。
連絡取れなくて、ごめん。
でもね、仕事決めてからじゃないとケジメつけれないと思って、わがままかもしれないけど、ハルカの前に現れなかったんだ」


そんな時に現れたのは変わらない彼で、
ピンク色の紫陽花の花束とスーツ姿の彼。
ピンクダイヤモンドの指輪と共に。

彼は私の前に現れた。

そこで私は初めて、彼がまだ大学院生で、学生だったことを知った。
花屋の店員さんはアルバイトだったって。
それでもカッコつけたくて、学生のことを隠してたって。

でも、私と結婚したいから、
自分のお姉さんにアクセサリーショップを教えて貰って、
今までのアルバイト代とかで買った指輪と

私の名前・・と同じ漢字の紫陽花の花を持って、
会いに来てくれた。

陽花ハルカじゃないとダメなんだって、
寂しそうに笑う彼を見て、
そんな姿すらもかっこいい彼を見て、
今までの文句なんて全部消えていった。

「ねえ、陽花。
僕と結婚してくれませんか?」


そう言って、彼は私に微笑んでくれた。
ムカつくくらいにその笑顔が好きで、
私は彼に笑顔で頷いた。




そんな私たちの結婚式には白い紫陽花の花を飾りましょう。
これからもずっと一緒でいられますように。

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