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アリクの世界

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「ですから、殿下をこの罪人の近くにお連れすることは叶いませぬ。
きちんと、罪の通りに裁きますゆえ、お帰りくださいませ」

マリアンヌの近くに行こうとしたが、
当たり前のように牢人に近づくことはできなかった。
何かがおかしい。それを知りたいだけなのだが、命を狙われる可能性もあるのだ。
それは当たり前のように止められてしまった。

それではマリアンヌが動かしたであろう令嬢の元に行けばいいのかと思うが、
そもそも実行犯だった令嬢は既に修道院に送還済みである。
そのような令嬢たちもしきりに、
「わたくしは何もやっておりません。マリアンヌ様も何もやっておりません。冤罪です!」
と言っていた気がする。

ただ、それは当たり前なのだ。
罪を認める罪人などいるはずがない。
それなのに何かがおかしく感じる。

マリアンヌの罪を暴いたあの女は何者なのだろうか?
何故、あの者のいう通りに動いてしまったのだろうか?
考えれば考えるほど頭が痛くて仕方ない。

「マリアンヌは罪を犯した」

そう自然に考えるとすぅーっと頭の痛みが消えるのだ。
それならそう思った方が賢明なのかもしれない。

それでも、今になってあの時、最後にマリアンヌが言おうとしていた言葉が気になって仕方ない。
あんなに大切に思っていた女だ。
正直、罪を犯していると聞いた時、すごく悔しかった。
私の愛がマリアンヌに伝わっていなかったから、彼女は罪を犯したのかもしれないと、


「アリク様……」


またあの女が近くに来た。

「どうして、牢屋の方から貴方がいらっしゃるの?
もしかして、またマリアンヌ様が何かしたのですか?!
私はまたあの方に虐められるのですか…」

今思えばなぜこんなヒステリックに叫ぶ女を信じたのだろうか?

「マリアンヌには会えなかったよ……」


正直に言う。
だから、もう私に構うな。どっか行け…その気持ちで女の方をむく。

すると何か、頭の中でカチッて嵌る音がした。
それと同時になぜ目の前の女を鬱陶しく感じていたのか分からなくなってしまった。
この女のおかげで、私はあの罪人と別れることができたのになぜ……

「ねえ、アリク様……
私の事、どう思いますの?」

いつもより目が紅く、
そして、綺麗に見えた女の姿を見つめることしか出来ない。
この問いにお前なんかどうでもいい。そう答えようと思う気持ちすらもどこかに消えてしまったように思える。

「それを聞いてどうするのかい?」

どこか、いつもより麗しくみえるこの女の返答が知りたくて仕方なくなった

「簡単ですわ。
貴方を…アリク様を見極めるだけですの…」

ニヤリともとれる笑顔で女は私を見てくる。
その笑顔を見ると、なぜ私はここにいたのかすらもあやふやに思えてくる。
目の前の女に会いたくて、私はここに…
女が今居るであろう近くの通路を通っていたのかもしれない。

それなら私の返事はひとつだ。

「好ましく思っているよ」
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