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第四章『ボタン』

再現の魔法使い

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 ゲーム内翌日。
 私はケート、シロの二人と共に、『イーリアス』の南に広がる荒野へと来ていた。
 もっとも、荒野が広がっているのは南だけじゃないけど。

「よーし、ここらでいいかにゃー」

 街からかなり離れた場所で、ケートが腰の横に手を当ててそう宣言する。
 しかしその場所には……砂と岩以外、特になにもなかった。
 地面の下とかにもいる気配はない、よね?

「えっと、ここでなにをするの?」

「そりゃーもちろん特訓だにゃー。たしかシロちゃんの試練は、薄い霧に覆われながら、ハヤブサに一撃いれるって感じなんだよね?」

「え、ええ、そうですが……」

「だったら、同じ状況を作ればいいんだぜ!」

 同じ状況?
 ……って、もしかして。

「てなわけで、パーティーでの決闘を申し込んで……っと」

「はーい」

 準備をするケートをみつつ、私は「なるほど」と一人頷く。
 それも、昨日見たケートのスキル構成が、とても特訓に合いそうだったから。

「いくぜー! 【霧魔法】『ミストジョーカー』!」

「おー」

「視界の妨げにならない程度ってことだから、霧はあんまり必要ないんだろうけど、同じ条件にするのが一番だからにゃー。【雷魔法】『パラライズボルト』」

 薄く広がった霧に、一瞬紫の光がはしる。
 その直後、「くっ……」と呻くシロの声が響いた。
 HPを見てみれば、弱いながらも継続してダメージを受けてる感じ。

「そんじゃ、これを狙うんだぜー! 【魔法連結】『クリエイトゴーレム』、モデルチェンジ【魔法連結】『ウッディークロウ』!」

「へー。木に覆われた鳥かー」

「速さはこんなもんで……あとは、適当に飛ぶようにセットっと。ほい、どうぞ」

「はい! 参ります!」

 薄霧の中を飛び回る鳥に、シロは薙刀を振るう。
 二、三と放ちながらも、時おり苦悶を顔に浮かべ、その度に動きに乱れが出ていた。
 やっぱりまだまだだねー。

「ふへぇ……あとは放っておいても大丈夫にゃー」

「お疲れさま。アレが新スキルの魔法なんだねー」

「だぜー。まだレベルが低いから使える魔法は少ないけどにゃー。霧に身を隠す『ミストジョーカー』と、触れたものに弱い電撃を与える『パラライズボルト』だぜ」

「ゴーレムに混ぜたのは、【樹魔法】? ……でしょ」

 たしかそんな名前だったはず。
 魔法が多すぎて覚えられないよねー。

「だぜー。【樹魔法】の『ウッドデコイ』を合わせてる感じだにゃー。アレなら、本物と同じ感じに気配が読めると思うし」

「なるほどねー。面白い魔法ばっかりだ」

「うむ。試行錯誤が止まらんくて楽しいぜー。まあ、デコイはちょっと弱すぎて、ゴーレムと合わせないと役に立たないんだけどにゃー」

「……そうなの?」

 デコイっておとりのことだよね?
 まあ、そんなに耐久力があってもアレだけど……すぐ壊れちゃうのも問題だよね?

「……なんだったら、セツナ。一発殴ってみる?」

「え? いいの?」

「いいぜー。【樹魔法】『ウッドデコイ』。ほいどーぞ」

「じゃ、軽く一発……ていっ!」

 近くに出現した木のカカシを、軽く踏み込んで右ストレート。
 すると、その一発で……カカシは爆散した。
 ……手応えが全然無かったんだけど。

「……えっと?」

「ぷ、にゃはははははははは!。セツナ、ぶっ壊しすぎ!」

「え、いや、軽く殴っただけなんだけど……」

「だから弱すぎるって言ったじゃん。あそこまで爆散したのは初めて見た。ひー、お腹痛い」

 あまりの爆散っぷりがケートのツボに入ったのか、ケートはお腹を抱えて笑い続ける。
 そんなケートに「むぅ」と苦い顔を見せれば、それもまた面白そうに笑う。
 もう!

「……あー、笑った。バァンって、爆散して首がポーンって。ダメ、思い出しても面白い……」

「むー」

「ごめんごめん。私が見たのは、壊れてもグシャッってなる程度だったからにゃ。あんなに勢いよく……ぷふふ」

「また笑ってる。もー」

 また笑いだしたケートに頬を膨らましつつ、私はシロへと目を向ける。
 するとちょうどいいタイミングで……シロのHPが全損し、決闘が終了した。
 ダメだったかー。

「ん、終わったかにゃ。シロちゃんお疲れさまだぜー」

「はい。お疲れ、様……です」

 決闘の模擬戦システムだったこともあって、シロのHPは全快しているものの……実際に体を動かしていただけに、疲労はあるんだろう。
 シロは肩を上下させながら、息も絶え絶えという感じに、暢気なケートへと頭を下げていた。

「やってみてどうだったかにゃ? 試練の感じが出てた?」

「はい。それはもう完全に。……もしよろしければ、再度挑戦させていただいてもよろしいですか?」

「いいぜー。そんじゃ二回戦と行こうぜー」

 その言葉と同時に飛んできた決闘申請を許可すれば、またケートは霧を起こし、電撃を纏わせ、樹を纏う石の鳥を飛ばした。
 さて、今度こそ、何かの糸口くらいは見つけてくれればいいんだけどなー。

「……しかし、暇だねー」

「キュル」

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 名前:セツナ
 所持金:102,040リブラ(-3,000リブラ)

 武器:居合刀『紫煙』
 防具:戦装束『無鎧』改

 テイム:ブラックスコーピオン(幼体)『ハクヤ』

 所持スキル:【見切りLv.4】【抜刀術Lv.15】【幻燈蝶Lv.6】【蹴撃Lv.11】【カウンターLv.10】【蝶舞一刀Lv.11】【秘刃Lv.2】【符術Lv.3】【八極拳Lv.5】
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