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第二章『名前をつけるなら』
ケートは奇策士
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ゴンザブローが勝って、ケートの試合がやってきた。
相手は大槌使いのバンドル。
筋肉マッチョの男性だ!
「ケートさん、大丈夫でしょうか?」
「まあ、ケートだし……どうにかこうにかして勝つと思うよー」
「ん」
私とカリンが全く負けると思ってないからか、ミトは「そ、そうですよね」と苦笑した。
まあ、正直ケートが負けるとは思わないかなー。
むしろ、ケートだったら、偽情報なんかをバラ蒔きそうな気がする。
「あ、始まりましたよ!」
「やっぱり、最初は距離を詰めてくる感じだねー。まあ、魔法使い相手に距離を取ってるのは悪手だろうし」
「ん、正攻法」
カリンの言う通り、魔法使いに対しては正攻法なんだけど……正攻法だからこそ、ケートもそんなことはわかってるはず。
ゆえに、ケートは絶対になにかをするはず。
たった数秒程度で、二人の距離が大槌の間合い少し外まで縮まり、後少しで大槌が届きそうというところで、ケートは『アースウォール』を発動させた。
それも、バンドルの目の前に。
「うお!? だが、この程度の土壁、俺にとっては障害物にすらなら……」
「【魔法連結】『クリエイトゴーレム』、モードチェンジ【魔法連結】『ギガントナックル』!」
「んぞおぉっ!? まてまてまてまて、その巨大な腕はなんだ!?」
「んー別名、巨人の拳って感じかな? じゃあ、物理攻撃力で勝負だー!」
生み出したゴーレムを巨大な右腕に変化させたケートは、その拳をもってバンドルへと渾身のストレートを見舞う。
しかしバンドルも予選を突破してきた強者!
その拳に、きっちりと大槌をぶつけ……拳を弾き返した。
「ふ、あーっはっはっは! どうだ、俺のグラビトンは! いい槌だろう!」
「うんうん。いい武器だねー。でも弾いたくらいじゃダメだよー!」
「何度でも来い! すべて跳ね返してやる!」
「なら、お望み通り! ていっ!」
ガキーン、ガキョーン、ゴギーンと音を響かせながら、何度も打ち合う二人。
永遠に続くかと思いきや、次第に打ち合う間隔が短くなっていき、バンドルが少しずつ後ろへと下げられていっていた。
……もしかしてこれ、最初からケートのペースだったんじゃ。
「ケート、回復」
「ですよね。ケートさんは立ち止まったまま、魔法操作で腕を動かしているだけなので」
「けど、バンドルさんは自分の体で対応してるから、次第に反応が遅れてくるって感じかー。ケートらしいけど、卑怯だなー」
「ケート、らしい」
その言葉にミトが苦笑していた。
でも、この戦い方は完全にケートらしい戦い方かも。
相手を調子づかせておいて、ゆっくり真綿で首を絞めていく感じの……。
うへぇ、敵に回したくないなー。
「あ、さすがに相手も気づいた見たいですよ。なんとか掻い潜って近づこうとしてる感じです」
「あー……」
「ケート、卑怯」
「え、え?」
ミトの言葉通り、ケートが操作する巨人の腕を掻い潜ろうと、試行錯誤していたバンドル。
……その足元から、火柱が立ち上がった。
もちろんバンドルは反応が遅れ、火柱に焼かれ……直後、腕に殴られて決闘場の壁まで吹っ飛んでいった。
南無南無。
「ええー……」
「ミトさん。あれがケートなの」
「ん。ケート」
あまりにも酷い戦いに、ミトも納得がいかないみたいに「そうですけどー……」と、口を尖らせる。
まあ分かるけどね?
実際、ミトが見たことのあるケートの戦いは、結構派手に戦ってたり、真っ正面から戦ったりしてるし。
あ、でも、イチカとの戦いはあんな感じに奇策だったかも。
「な、なんにしても、これでお二人とも二回戦進出ですね!」
「ん」
「うん、ありがとう。私もケートも、次以降は厳しくなりそうだし、頑張らないとね」
とくに、ケートは次の相手がグレンのパーティーメンバーで、刀使いのゴンザブローだし。
まあ、大丈夫だと思うけど。
「へーい、みんなー! 勝ってきたどー!」
「あ、ケートおかえり」
「おかえり」
「ケートさん、おかえりなさい」
「あっれ、誰もお祝いしてくれない……なんで」
なんでって、そりゃあんな勝ち方したら……やりにくいでしょ?
ほら、ミトも苦笑してるし、お祝いしてほしかったら、もう少し正々堂々と勝ちなさいって。
「ま、まあいいや。次から二回戦だよね? 初戦から忍者vsグレンさんの試合だし、見逃せないんだよねー」
「うん。私もその対戦カードは気になるかな。あの忍者相手に、グレンさんがどう戦うのかなって」
「忍具」
「カリンさんも忍具が気になるみたいです」
「リンらしいにゃー」
□
『これより、二回戦第一試合、イサリ対グレンの試合を始めます。それでは、両者準備はよろしいですか? 試合開始!』
宣言と共に両者揃って一気に距離を縮め、獲物と獲物をぶつけ合う。
イサリこと忍者の獲物は短刀……違う、あれクナイだ。
でも、一回戦の最後に使ってたクナイ投げの技で使ってたのよりも少し大きい気がする。
たぶん、メイン武器はあのクナイなんだろうなー。
「でも、あのクナイじゃグレンさんの防御突破は難しい気がするにゃー」
「だよね。それこそ完全に虚をついての奇襲とかじゃないと抜けない気がする」
「ん」
私とケート、そしてカリンの三人は、試合を眺めながらも、色んな視点から話を進めていく。
まあ、カリンは「ん」しか言ってないんだけどね。
ちなみに、ミトは戦いを眺めながら「ほあー」と、驚いたりしてたり。
うんうん、ミトはそのままでいいと思う。
「あ、グレンさんが攻め始めましたよ!」
「だにゃー。これはもう勝てると踏んだ感じだぜい!」
「でも忍者だから、予想外になにかするかもよ?」
「忍者だからにゃー」
-----
名前:セツナ
所持金:11,590リブラ
武器:居合刀『紫煙』
防具:戦装束『無鎧』
所持スキル:【見切りLv.4】【抜刀術Lv.14】【幻燈蝶Lv.4】【蹴撃Lv.6】【カウンターLv.9】【蝶舞一刀Lv.8】【秘刃Lv.2】
相手は大槌使いのバンドル。
筋肉マッチョの男性だ!
「ケートさん、大丈夫でしょうか?」
「まあ、ケートだし……どうにかこうにかして勝つと思うよー」
「ん」
私とカリンが全く負けると思ってないからか、ミトは「そ、そうですよね」と苦笑した。
まあ、正直ケートが負けるとは思わないかなー。
むしろ、ケートだったら、偽情報なんかをバラ蒔きそうな気がする。
「あ、始まりましたよ!」
「やっぱり、最初は距離を詰めてくる感じだねー。まあ、魔法使い相手に距離を取ってるのは悪手だろうし」
「ん、正攻法」
カリンの言う通り、魔法使いに対しては正攻法なんだけど……正攻法だからこそ、ケートもそんなことはわかってるはず。
ゆえに、ケートは絶対になにかをするはず。
たった数秒程度で、二人の距離が大槌の間合い少し外まで縮まり、後少しで大槌が届きそうというところで、ケートは『アースウォール』を発動させた。
それも、バンドルの目の前に。
「うお!? だが、この程度の土壁、俺にとっては障害物にすらなら……」
「【魔法連結】『クリエイトゴーレム』、モードチェンジ【魔法連結】『ギガントナックル』!」
「んぞおぉっ!? まてまてまてまて、その巨大な腕はなんだ!?」
「んー別名、巨人の拳って感じかな? じゃあ、物理攻撃力で勝負だー!」
生み出したゴーレムを巨大な右腕に変化させたケートは、その拳をもってバンドルへと渾身のストレートを見舞う。
しかしバンドルも予選を突破してきた強者!
その拳に、きっちりと大槌をぶつけ……拳を弾き返した。
「ふ、あーっはっはっは! どうだ、俺のグラビトンは! いい槌だろう!」
「うんうん。いい武器だねー。でも弾いたくらいじゃダメだよー!」
「何度でも来い! すべて跳ね返してやる!」
「なら、お望み通り! ていっ!」
ガキーン、ガキョーン、ゴギーンと音を響かせながら、何度も打ち合う二人。
永遠に続くかと思いきや、次第に打ち合う間隔が短くなっていき、バンドルが少しずつ後ろへと下げられていっていた。
……もしかしてこれ、最初からケートのペースだったんじゃ。
「ケート、回復」
「ですよね。ケートさんは立ち止まったまま、魔法操作で腕を動かしているだけなので」
「けど、バンドルさんは自分の体で対応してるから、次第に反応が遅れてくるって感じかー。ケートらしいけど、卑怯だなー」
「ケート、らしい」
その言葉にミトが苦笑していた。
でも、この戦い方は完全にケートらしい戦い方かも。
相手を調子づかせておいて、ゆっくり真綿で首を絞めていく感じの……。
うへぇ、敵に回したくないなー。
「あ、さすがに相手も気づいた見たいですよ。なんとか掻い潜って近づこうとしてる感じです」
「あー……」
「ケート、卑怯」
「え、え?」
ミトの言葉通り、ケートが操作する巨人の腕を掻い潜ろうと、試行錯誤していたバンドル。
……その足元から、火柱が立ち上がった。
もちろんバンドルは反応が遅れ、火柱に焼かれ……直後、腕に殴られて決闘場の壁まで吹っ飛んでいった。
南無南無。
「ええー……」
「ミトさん。あれがケートなの」
「ん。ケート」
あまりにも酷い戦いに、ミトも納得がいかないみたいに「そうですけどー……」と、口を尖らせる。
まあ分かるけどね?
実際、ミトが見たことのあるケートの戦いは、結構派手に戦ってたり、真っ正面から戦ったりしてるし。
あ、でも、イチカとの戦いはあんな感じに奇策だったかも。
「な、なんにしても、これでお二人とも二回戦進出ですね!」
「ん」
「うん、ありがとう。私もケートも、次以降は厳しくなりそうだし、頑張らないとね」
とくに、ケートは次の相手がグレンのパーティーメンバーで、刀使いのゴンザブローだし。
まあ、大丈夫だと思うけど。
「へーい、みんなー! 勝ってきたどー!」
「あ、ケートおかえり」
「おかえり」
「ケートさん、おかえりなさい」
「あっれ、誰もお祝いしてくれない……なんで」
なんでって、そりゃあんな勝ち方したら……やりにくいでしょ?
ほら、ミトも苦笑してるし、お祝いしてほしかったら、もう少し正々堂々と勝ちなさいって。
「ま、まあいいや。次から二回戦だよね? 初戦から忍者vsグレンさんの試合だし、見逃せないんだよねー」
「うん。私もその対戦カードは気になるかな。あの忍者相手に、グレンさんがどう戦うのかなって」
「忍具」
「カリンさんも忍具が気になるみたいです」
「リンらしいにゃー」
□
『これより、二回戦第一試合、イサリ対グレンの試合を始めます。それでは、両者準備はよろしいですか? 試合開始!』
宣言と共に両者揃って一気に距離を縮め、獲物と獲物をぶつけ合う。
イサリこと忍者の獲物は短刀……違う、あれクナイだ。
でも、一回戦の最後に使ってたクナイ投げの技で使ってたのよりも少し大きい気がする。
たぶん、メイン武器はあのクナイなんだろうなー。
「でも、あのクナイじゃグレンさんの防御突破は難しい気がするにゃー」
「だよね。それこそ完全に虚をついての奇襲とかじゃないと抜けない気がする」
「ん」
私とケート、そしてカリンの三人は、試合を眺めながらも、色んな視点から話を進めていく。
まあ、カリンは「ん」しか言ってないんだけどね。
ちなみに、ミトは戦いを眺めながら「ほあー」と、驚いたりしてたり。
うんうん、ミトはそのままでいいと思う。
「あ、グレンさんが攻め始めましたよ!」
「だにゃー。これはもう勝てると踏んだ感じだぜい!」
「でも忍者だから、予想外になにかするかもよ?」
「忍者だからにゃー」
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名前:セツナ
所持金:11,590リブラ
武器:居合刀『紫煙』
防具:戦装束『無鎧』
所持スキル:【見切りLv.4】【抜刀術Lv.14】【幻燈蝶Lv.4】【蹴撃Lv.6】【カウンターLv.9】【蝶舞一刀Lv.8】【秘刃Lv.2】
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