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ふたりの約束
ふたりの約束 1
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「え、家庭教師?」
新学期。
由緒正しい伝統の食堂に、女子生徒の声が響く。
とはいえ、ランチタイムは賑わっており、その透き通った声は喧噪にかき消える。
「杏奈、ぜったい家庭教師いらないわよね。ほぼ推薦決まったようなもんだし」
声の主はふわりと巻かれた長いブロンドヘアをかき上げながら、向かいに座る大人しそうな友人にそう続ける。
「うーん、でもやっぱり、数学はちょっと苦手で。何か知見を得られればとおもって」
言われた方――杏奈は唐揚げをもごもごと食べながら、明るい栗色の肩にぎりぎりかかった髪を揺らし、首をかしげる。
それに、はあ、と深いため息で返す。
「あんたの苦手は充分、常人の得意にあたるわよ……」
そのぼやきに、杏奈はふくれ面で返答する。
「マリアは理数系得意だから、そういうこと言えるんだよお」
「理数系は! ね。で、どんな人なの? うちの大学生?」
「うーん、それがね、違うみたいで。お兄ちゃんの、か……お友達? の知り合いの男性だって」
ブロンドヘアの少女――マリアは腕を組み、眉をしかめる。
「え? 大丈夫なの、それ。いろんな意味で」
杏奈は唐揚げを食べ終わり、ジュースを吸いながら淡々と答える。
「事故で記憶がないとかで、なんか訳ありっぽいけど……、お兄ちゃんが良いっていうことそうそうないから、大丈夫なのかもって」
「へぇ、あのお兄さんがねえ」
少し考えて、マリアははた、と思いついたように指を立てる。
「わかった、その人もしかしてお兄さんの彼氏とか」
「ふぇっ!」
突然の発想に、杏奈は思わず咳き込む。
「どう? 違わない? なんちゃって……」
「ごほ、ごほ……違うよお、絶対、だってお兄ちゃんの彼氏は公務員……」
そう口走る杏奈に、マリアはぎょっとする。
「え? ほんとに彼氏いたの?」
それで、杏奈は慌てて口を塞ぐ。
「き……聞かなかったことにして、お兄ちゃんのプライバシーだから」
新学期。
由緒正しい伝統の食堂に、女子生徒の声が響く。
とはいえ、ランチタイムは賑わっており、その透き通った声は喧噪にかき消える。
「杏奈、ぜったい家庭教師いらないわよね。ほぼ推薦決まったようなもんだし」
声の主はふわりと巻かれた長いブロンドヘアをかき上げながら、向かいに座る大人しそうな友人にそう続ける。
「うーん、でもやっぱり、数学はちょっと苦手で。何か知見を得られればとおもって」
言われた方――杏奈は唐揚げをもごもごと食べながら、明るい栗色の肩にぎりぎりかかった髪を揺らし、首をかしげる。
それに、はあ、と深いため息で返す。
「あんたの苦手は充分、常人の得意にあたるわよ……」
そのぼやきに、杏奈はふくれ面で返答する。
「マリアは理数系得意だから、そういうこと言えるんだよお」
「理数系は! ね。で、どんな人なの? うちの大学生?」
「うーん、それがね、違うみたいで。お兄ちゃんの、か……お友達? の知り合いの男性だって」
ブロンドヘアの少女――マリアは腕を組み、眉をしかめる。
「え? 大丈夫なの、それ。いろんな意味で」
杏奈は唐揚げを食べ終わり、ジュースを吸いながら淡々と答える。
「事故で記憶がないとかで、なんか訳ありっぽいけど……、お兄ちゃんが良いっていうことそうそうないから、大丈夫なのかもって」
「へぇ、あのお兄さんがねえ」
少し考えて、マリアははた、と思いついたように指を立てる。
「わかった、その人もしかしてお兄さんの彼氏とか」
「ふぇっ!」
突然の発想に、杏奈は思わず咳き込む。
「どう? 違わない? なんちゃって……」
「ごほ、ごほ……違うよお、絶対、だってお兄ちゃんの彼氏は公務員……」
そう口走る杏奈に、マリアはぎょっとする。
「え? ほんとに彼氏いたの?」
それで、杏奈は慌てて口を塞ぐ。
「き……聞かなかったことにして、お兄ちゃんのプライバシーだから」
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