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31.Domとswitchの話

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sub寄りのswitchであるプライドの高い男は、周囲にはswitchであることを悟らせず、domのフリをして生きてきた。
自分より強いdom相手でなければ、問題なくdomでいられる。幸い力は強い方だったから、誰にもswitchだとバレていなかった。
subとして振る舞うのは自分が弱くなったように感じて嫌なので、頑なにdomのフリをし続けた。
そんなある日、行きつけのバーで人の良さそうな男と話が盛り上がった。試しにプレイをしてみようという話になる。
線の細い繊細な美形で、てっきりsubだと思い込んでいたが相手はdomだった。
すまない、俺もdomだからと断ろうとした瞬間、強いグレアを浴びせられる。
それが心地よくて自然と服従したくなり、気がついた時には跪いていた。美形は包みこむように笑う。
「いい子ですね、good boy」
言葉だけで身体中が痺れて、とんでもなく幸福な気持ちになった。
彼に従いたい、もっと命令してほしいと熱い視線を送ると、望む通りにプレイしてくれる。
今まではdomとして適当なsubとプレイしても、こんなものかという感想しか抱かなかったのに、彼とのプレイはよすぎてsubスペースに入ってしまう。
自分のプライドよりも心地よさを優先し、何度も会うようになり、専属になりたいという思いが強くなる。
けれど美形な彼は、一緒に店に出向きどんなカラーがいいか聞いたりする割には、実際に贈ってはくれない。
自分からねだるのは癪な気がして言い出せずにいたが、彼が長期の出張に出かけると聞き、やはり勇気を出してカラーが欲しいと告げることを決める。
「なあ、俺にカラーを贈ってはくれないのか?」
「ごめん、今はまだ無理なんだ」
断られて愕然とし、怒って部屋を飛び出してしまう。
連絡が来ても意地を張って電話に出ず、美形な彼はそのまま出張に行ってしまった。
愛想を尽かされたかも、なんて思うけどプライドが邪魔をしてどうしても縋れなくて。
出張の最中に誕生日が来た。寂しくて人恋しくて、しかもしばらくプレイをしていないから体の調子も悪い。
domとして昔世話になったsubにプレイを申し込もうと、迷いながらも電話をかけてみた。
しかし彼にはすでに決まったパートナーができていて、断られてしまった。
「お前、辛そうだけど大丈夫なのか? 誰か紹介しようか」
「いや、いい」
弱っているとは言いたくない。それにやっぱりアイツ以外とプレイをするのは気が乗らない。
いよいよ独りぼっちだと暗闇の中膝を抱えていると、息を切らした美形が家を尋ねてきた。
「遅くなったね、大丈夫かい? 気高い君に相応しい首輪を用意したんだ。受け取ってくれる? ああ、こんなに弱って……」
subドロップ寸前だったswitchは美形に優しくケアをしてもらい、オーダーメイドだというカラーを首に飾った。
「……用意、してくれてたんだな。話を聞かずに意地を張ってすまない」
「意地っ張りなのは君の可愛いところだけれど、今度はちゃんと電話に出てね? 約束だ。ほら、言って?」
「約束する。アンタは俺のdomだから」
素直になったswitchは存分に愛されて、subとしての幸せにどっぷり浸りながら、美形に可愛がられて生きていく。そんなお話。
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