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第二章

4話

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 その日の晩は宣言通りにフテ寝してやった。ガレルが帰ってきても相手してやらねえからな!

 ……と思っていたのに、寝てる間に手を出されて起きた時にはグズグズになってた。どうしてこうなった。

「ぁ、ぅん……やん……っな、なにして」
「ああ、起きたか。寝ているユールもうっとりとしていて愛らしかったが、やはり起きている方が反応があっていいな」

 俺の胸元は既にはだけられ、大事なところも丸出しにされていた。両方の膝下に寝衣が絡んでいるせいでろくに抵抗ができない。

「ちょ……やめろってば……っあ!!」

 そのままなし崩しに抱かれて、俺のフテ寝計画は頓挫した。
 起きたばかりでくったりして力が入らない上に、絡まった衣服が拘束の役割を果たし、やりたい放題されてしまった。

 気持ちよかったけどさ……気持ちよかったけれども! あんなまんぐり返しみたいな格好で腰を上げさせられて、上から種づけされたら頭おかしくなるから! ちょっとは手加減してほしい、まったく。

 というか、最近気がついたら毎晩ヤられている気がする……毎回気持ちいいから流されてしまう俺だけど、そろそろいい加減回数を減らすかなんかしてほしい。じゃないと体がもたない。

 朝起きた瞬間、スッキリした顔のガレルと目があう。俺は開口一番にこう告げた。

「なあ、今日はエッチ禁止な」
「何故だ? ユールも気持ちよさそうにしていたと思ったが?」

 さりげなく裸の尻を撫でられる。ゾワッとするからやめろって。

「いや、気持ちはいいんだけども……そういう問題じゃなくて、俺の体力がもたないって意味だから。明日はザスとレオを連れて一緒に町に行きたいんだよ」
「そうか……」

 何か言いたそうな顔つきのガレル。本当は俺が出かけるのを止めたいけど我慢してくれてるんだろうなってのが伝わってきて、気まずくて視線を逸らした。

 もぞもぞと厚い胸板に頬を寄せる。ピタリとくっつくとガレルも背中を抱き返してきた。

「……明日は予定があるけど、今度のガレルの休みは空けとくから。また遠乗りに行くとか、なんでもいいからガレルのやりたいことを一緒にしよう」
「それはいいな。一日中ユールと共にベッドの中にいたいと言っても叶えてくれるのか?」
「それは俺の体力がもたないから却下」
「そうか、残念だ」

 本当に残念そうな口調だ。そんな悲しそうな顔してみせたって無理なものは無理だからな!?

「ふむ、では何をしたいか考えておこう。ユールと一緒ならなんでも楽しめそうだがな」
「俺も、ガレルとデートすんの楽しみにしてる」

 俺の言葉を聞くなり破顔したガレルは、白金の髪をサラリとよけて額にキスをした。

「ああ、楽しみにしていてくれ」

 なんかいい感じのデートプランを考えてくれそうなガレルを、毎朝恒例のキスと共に見送った。





 昨日は久しぶりに安眠することができた俺は、ササっと結界に魔力を注いだ後、用意させたお出かけ用の服に鼻歌を歌いながら袖を通していた。
 夜会じゃないから金の刺繍はされていないが、これもガレルから贈られた服だ。

 ガレルは無駄に俺をフリルやら装飾やらで着飾らせようとしないから、この服も上質な生地ながら動きやすくて街歩きにピッタリだ。

 ユールのような美少年顔だと、下手に平民の格好をしても高貴な家の出身ですオーラを醸し出してしまうものらしい。よってお忍び少人数での外出は許可してもらえない。

 匡の感覚が抜けない俺としては、町くらい自由に歩かせろよって感じなんだが。
 下手に拐われそうになったりしたらまた窮屈な生活に逆戻りしそうなので、仕方なく護衛をぞろぞろ引き連れて町へ繰りだしている。

 それに比べると今日の外出はずいぶんと気楽だ。ザスとリオが側にいるのなら、他の護衛は少々離れたところで俺達を見守るスタンスでもいいとガレルからも許可が出た。

 つまり今日は、友達同士でお出かけみたいなノリで出かけられるってわけ。一人は幼馴染だし一人はこの前会ったばっかだけど、二人とも年も近いし友達扱いでも間違っちゃいないだろ、うん。

「ユール、迎えにきたぞ! 用意はいいか!?」

 今日も暑苦しいくらいに元気なザスが部屋に顔を出した。俺も笑顔で返事をする。

「もちろん、いつでも行けるよ」
「そうか、では行くぞ! レオは城門のところで合流予定だ」

 ザスに連れられて部屋を出る。ザスは帯剣しているがラフな格好だ。俺の護衛みたいに見える感じだろうな。

 城門のそばで待っていたリオも腰に剣を刺していた。簡素で動きやすそうな格好をしていた。

「今日もよろしくお願いしまっすユール様!」
「レオ、よろしく頼むよ」

 元気よく挨拶してくれたレオは俺とザスを先導し、城下町へと向かう馬車に乗りこむ。
 ゴトゴトと揺れる馬車は意外と腰に響くんだ、昨日ヤられてなくて助かった。

 貴族の生活区域を抜けて、オレンジ屋根の区画へと進む。ここいらは貴族向けの商店が並んでいる。

「なあ、今日はどこに案内してくれるんだ?」

 レオに尋ねると彼はビシッと姿勢を正した。

「まずは町で食べ歩きをした後、俺の友達を尋ねる予定にしてるっス……食べ歩きで大丈夫っスか? ザガリアス先輩からは問題ないって話だったんで、予定に入れてみたっスけど」
「ああ、もちろん大丈夫だ」

 ホッと胸を撫で下ろすレオ。もっと気楽に接してくれていいんだけどな、別に不敬だとか言わないし。

「ユール様は町の人と話をしてみたいってことだったので、俺の友達相手なら色々突っこんで聞いてもらっていいっスよ」
「そうか、楽しみだ」

 なんかわざわざその友達にまで予定あけてもらっちゃって悪いなー、王宮から土産でも持ってくるべきだったか。

 ユールがこんなにも美少年顔じゃなかったらな、町のやつらにフツーに話しかけてフツーに友達になれたんだろうけど。所作も服も顔も、ついでに地位も親しみ辛いとなるとさすがに難しいか。

 なんて考えてるうちに町についたらしい。市場が立ち並ぶ通りに馬車をつけ、レオとザスがまずは馬車から降りた。
 次に俺も降りる。おいザス、俺は小さい子どもじゃねえんだから手は差しださなくていいってば。

 美味しそうな肉串の店を見つけて、アレが食べてみたいから三本買おうと告げるとレオが買ってきてくれた。

「ありがとう、いくらだった?」

 俺はレオが告げた金額を聞き、財布から小銭を取りだす。

 そう、俺はもう小銭も数えられない箱入り王子ではないのだ! 今日だって買い物するかもしれないと思って現金を用意しておいたんだ。

 マシェリーは最初、王子が現金を持ち歩くなんて……と渋っていたが、社会勉強だと押し通したら用意してくれた。さすができるメイドだな!

 あれから半月の間に金銭についてしっかり勉強したから、金額はあっているはずだ。しかしレオは突然の施しにあたふたしている。
 いやいや、案内してもらって金までせびるわけにはいかないだろ、素直に受け取れって。

 慌てふためくレオの手に無理矢理小銭を乗せて、ついでとばかりに串も一本差しだす。

「レオも食べよう」
「え? お、俺はいいっスよ」
「ユールがお前にやると言っているんだ、遠慮せずに食べるといい!」
「こっちはザスの分だ」
「おう、ありがたくもらうぞ!」

 いやー、王家が俺の結界維持の働きの分、俺用の予算を組んでいてくれて助かったな。
 俺は市場での飲み食い程度ならいくら使っても気にしなくていいくらい、潤沢な資金を持っていたらしい。
 その資金は今回のお出かけでも存分に活躍する予定だ。

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